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【須田亜香里さんの軌跡】◆M26 エトワール


 1位になるという目標を掲げて2018年のAKB48世界選抜総選挙に挑んだ須田さんですが,5月31日,投票開始翌日の速報(投票数の中間発表)では,5位という,微妙な順位となりました。
 そのため,速報後のマスコミ各社の予想では,須田さんの最終順位は,1位どころか,ベスト3以内にも入っていませんでした。

 しかし,6月16日,ナゴヤドームで行われた開票イベント本番では,須田さんの名前は,5位でも,4位でも呼ばれることなく,ついに3位でも呼ばれませんでした。 

 そして2位。徳光アナウンサーのコールする,「最終獲得票数,15万4011票,SKE48,チーム」の後に,わずかな間を置いて呼ばれたのは,「E,須田亜香里」でした。

 須田さんは,自席で泣き崩れる松井珠理奈さんを抱き起こして抱擁します。そして,木佐彩子アナウンサーの,「名古屋のダークホースが,優勝候補を飛び越えて第2位を獲得です!」,「SKE3期生で9年目,名古屋の雑草出身アイドルが第2位に輝きました!」という声に導かれて笑顔でマイクに向かって歩き出します。

 ナゴヤドームの客席で振られるSKEファンのサイリウムは,推しメンの違いを超えて一斉に,須田さんの色・赤一色に変わって力強く振られます。そして,「あかり」コールが大音量でナゴヤドームの隅々に鳴り響きます。

 一方で,中継番組のゲストは口々に須田さんを讃え,ミッツ・マングローブさんは, 「こんな日が来るとは思わなかったな」と,感慨深げに呟きます。

 笑顔で,須田さんは,スピーチを始めます。

 「2位を頂くことができました。SKE48チームEリーダー,須田亜香里です。
 ありがとうございます。本当に私が一番びっくりしています。

 今回1位に予想されていたメンバーは,みんなグループのセンターを任されているメンバーたちで,きっと私にはかり知れないプレッシャーとたくさん戦ってきたメンバーばかりだったと思います。

 その点,私は,まったく最初から期待されず,デビューのスタートから3年以上劇場公演の一番後ろの端っこがポジションだったりだとか,ストレスフリー・プレッシャー無しでここまでやってきました。
 だからこそここまで来られたんだと思いますが,こうしてステージの一番端っこからスタートした私でも,”よじ登ってくればこんなに高いところまで来られるんだ”ってことを,これから頑張ろうと思っているメンバーたちに証明することが出来たらいいなと思って,今回私は1位を目指すと言わせてもらいました。

 1位には届かなかったけど,ずっと追いかけてきた背中である1期生の珠理奈さんにライバルだって言ってもらえるようになったりだとか,メンバーからちょっとずつ頼りにしてもえるようになったりだとか,本当に嬉しいです。

 だから,ステージのはじっこに今いるメンバーも,握手会は今は列が短いっていう子も,ブスだっていわれても,運営から推されなくたって,こうやって上がることだってできるんだ,覚悟さえ決めれば,ちゃんとファンの方はその覚悟に気づいて,ついてきて応援してくれるんだっていうことを,ちょっとはメンバーに感じてもらえてたら嬉しいです。」

 ここで,会場から,大きな拍手がわき起こります。
 ところが,一転して,須田さんは,48グループのメンバー全員に向けて,辛口の檄を飛ばします。

 「この1年で私はみなさんに頂いた順位を活かしながら,なぜこのルックスでここまで上がってきたんだという世間のみなさんの疑問を糧に,たくさんのメディアに出演させてもらいました。テレビだったり雑誌だったり。本当にラッキーな奴だなと,私は思います。

 でも,そのメディアに出演させて頂く中で,感じたことが,気づいたことがあります。それは,世間のみなさんは私たちが思っている以上に48グループに興味がないということです。
 ”こんなにも皆さんが熱く応援してくれるのに,こんな私でも見てくれる心の清い人たちがいるのに,なんでこんなにも伝わらないんだろう”って,もどかしくて。
 いい順位だといって番組の方に興味をもってもらっても,あなたは何ができますか?何を伝えられますか?ということを常に問いかけられ,求められます。
 その連続で,しかも私の8年以上のこのグループでのストーリーは10秒のダイジェストにまとめられ,本当にまだまだだなって思います。

 でも今こそメンバーひとりひとりがが自分の武器,自分自身をもっと武器にして,個性を出していって48グループの旗を掲げて戦っていく時だと思います。

 メンバーひとりひとり,自分の個性を出していくことを恐れずに,弱いところを恐れずに,頑張っていけたらいいなと思います。本当にありがとうございます。」

 須田さんは,最後に徳光アナウンサーから, 「何歳までアイドル?」と聞かれ,「えー,できたら30まで」と笑顔で答え,徳光アナから「行きましょう!」と励まされました。

 スピーチを聞き終えたミッツさんは,「これからの48グループのありようとしても,すごく意義がある順位」とコメントしてくれました。

 須田さんの最終獲得票数は,前年比で244%,約9万票の増加という記録的な数字を残しました。

 ところで,バレエ団では,主役を踊るダンサーを「プリンシパル」と呼び,その中でも特に最高位の花形ダンサーだけを「エトワール」(フランス語で「星」の意味)と呼びます。
 須田さんは,バレエの世界で「エトワール」になる代わりに,アイドルの世界で,劇場公演のステージの一番隅のポジションから,何度打ちのめされてもそのたびに這い上がり,とうとう,48グループの「エトワール」にまで登りつめたのです。

 須田さんを応援して下さった全ての皆様,投票して下さった全ての皆様に,心から感謝申し上げます。

(「M27 人生で一番一人で泣いた夏」に続く)

<ソースノート>

フジテレビ 選抜総選挙開票イベント中継番組


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