ワンコイン

最近、500円ちょうどの文庫本を脈絡無く買う遊びにハマっている。
少し早く待ち合わせの駅に着いてしまったときやショッピングモールに買い物に行ったとき、ふらっと目に付く本屋に入り、しょっちゅうこの遊びをしている。どれほど小さな本屋でも文庫本コーナーはあるので、本屋さえあればすぐに遊びを始められる。

何が楽しいのだと言われるかもしれないが、500円ちょうどの文庫本を探し出すのは宝探しのようでかなり楽しい。500円というと文庫本としてはかなり薄い部類に入るが、薄すぎると500円を切ってしまう。現役の作家の本であれば厚さにしておおよそ1cmの本が500円だ。古い作家の本は比較的安い場合が多いため、厚めのものを選ぶ必要がある。このあたりの調整も腕の見せどころである。背表紙の厚さだけを勘案して本を抜き、ぴったり500円の本を見つけると嬉しくなる。

一度手にした「当たり」の本は手放さないのがルールだ。改めてタイトルを眺めたら全く興味が持てない本だったということはざらにあるが、涼しい顔で購入するのがこの遊びのスリルな点である。

もちろん、買った500円本を読むのも楽しい。厚さが1cmしかない文庫本なので、2時間もあれば読めてしまう。飽き性な僕でも一気読みできるのは嬉しい。この程度のページ数なら途中で読み止める心配もほとんど無いので、中途半端な積ん読を増やすこともなく、本を買う罪悪感も薄い。

半ば機械的に選んで買った本なので、普段買わない作家の本を読めるのも楽しい。今日は江國香織のエッセイがなかなか面白いことを発見した。

注意すべきは周りの目である。背表紙を虚ろに眺めていたと思ったらいきなり本を抜いて値段を確認し、なぜか一喜一憂する男性を見かけたら、不審に思うのも無理はない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?