旅行

SNSを眺めていると、旅行の楽しみ方は本当に千差万別だと思い知らされる。

ある友人は「先週毛ガニ漁が解禁されたんだ」と言って北海道に行く。またある友人はいろいろな景色と自慢の車を組み合わせた写真を撮り続けている。インスタグラムを見ると、ほとんど毎日、誰かしらが旅行に出かけている。

僕も旅行は好きである。でも、景勝地に行こうとか車を自由自在に操ろうとか友人と一緒にいようとか、そういう気持ちはあまり無い。
僕が旅行で好きなのは「移動」である。

飛行機でも電車でも車でも自転車でも良いが、自身の現在地を移し続けているあの状態が好きだ。やったことは無いが、多分ラクダで砂漠を歩くのも好きだろう。ロケットで宇宙を飛ぶのも好きだと思う。

移動中の、出発地にも目的地にも居ない不安定感が良い。自宅に残してきた仕事に少し罪悪感を覚える。目的地の気温が気になる。持ってきた服で事足りるだろうか。だいぶ遠くまで来たかな、とスマートフォンを見る。まだ三分の一も来てないじゃないか。やっぱり残した仕事が心配になる。まぁ忘れようと自分に言い聞かせる。せっかくの旅行なんだし。いやでも〆切はいつだっけ。思考の落ち着きの無さこそが移動の醍醐味である。

こういう趣味なので、友人に旅行を報告しても話が合わない。「金沢に行ったんだ」「良いね、兼六園?茶屋街?」「いや、行って帰ったんだ」「どこに行ったの?」「金沢」というような会話が繰り広げられる。最近は自分の旅行を話題にするのを控えている。

移動の次に好きなのは宿泊である。不安定な移動と対比して、寝床の圧倒的な安定感には痺れるものがある。

いま、旅先の大阪のホテルでこれを書いている。もちろん、寝床の安定感にビシビシ痺れながら。

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