誰もが透きとおっている


誰もが透きとおっている
あまりにも傾いた床の上に
散らかされた花びらの匂い
約束を刻んだものを探しても
めざとい彼女がしゃくりと食べる
頬を染める色が血でなくても
悪い夢のようだった

手紙を差しこまれた胸が痛むのです
なにも見えなくているのに
香りばかりが軽やかで
ずいぶんと昔に
失った翼の跡のようでした
もたげた首筋には
誰かの歌を宿しておきたかった

夢のにおいを探していた
真夜中に飲むココア
からめた指は折れていた
針に糸を通すような
綱渡りの先
まばたきの隙間から
眠れない蝶が飛びたつ

うずくまる君の背中を
ころころと撫でているのは
ずいぶん昔に落ちた星の残骸
赤い果実が燃える匂いがして
遠くでは水音が響く
ポケットにしまいこんだ切符に
書きつけられた名前は読めなかった

今日は何曜日だったろうと
名を呼びながら
点々とカレンダーを刺して
もう少し上手く踊るために
偽りのない五線譜を引っ張りだす
夜が深まるのを待つうちに
あなたを恋人と呼んでしまう


ここまでお読みくださり、ありがとうございました