勿忘人

祈るためのかたち
かさついたてのひらに
いくつかの棘が立つのを
かなしく眺めた

つくられた水色の飴玉の
ざりざりとした甘さ
酸素の足りない頭で味わいながら
繰り返すまばたき

映しだした子と
同じ風景を望んで
やわらかく髪を撫でる
う、
あ、

漏れる小さな声
ねむりの淵があがってくるまで
歌い続けた

今日、あなたから便りがなければ
語るべき物語は失われる

取り出した日記帳に
てんてんと打っていく文字は
ゆるしてもらえずに
勿忘草になり
忘れられたことも
忘れられた約束が
泣いている

埃をかぶった箱の中の
色褪せた手紙に寄せられた
ひとひらの翅だけは
かそけく光ったように見えた


ここまでお読みくださり、ありがとうございました