2023年夏、子連れ大阪旅。記憶に残らない旅は無駄なのか
7月4日の夜。タクシーの窓から大阪駅の景色をぼーっと眺めながら、今日の楽しかった1日を思い出していた。
3歳と2歳は疲れてしまって、私と母の腕の中でそれぞれ眠っている。
そりゃそうだ。広いUSJで走り回って、色々なものを見て、食べて、楽しいアトラクションに乗ったのだから。
5分ほど走ったころ、運転手さんが口を開く。
「大変でしょ。こんなに小さい子たちを連れて。結局、忘れちゃうんだからもっと大きくなってからでもよかったんじゃないですか」
そう言った。
本当にそうだろうか。記憶に残らない旅は意味がないんだろうか。
私は0歳の時、沖縄に行ったらしい
母や祖母は時々、思い出したように語る。
私が1歳になる前の夏に沖縄に行ったことを。そして、写真を引っ張り出してきて楽しそうに話す。
海がきれいでね、とか、じっちゃんうれしそうな顔してるね、あれおいしかったなとか、周りの人にかわいい娘さんですねってたくさん言われたんだよとか。
照れくさいような、うらやましいような、色々な感情が沸き上がる。
私も家族もにこにこしていたり、時に驚いた顔や泣きそうな顔があったりして、写真を見るだけで、タイムスリップしたような気分になる。
そして、今は亡き祖父が私を抱っこしている。なぜか写真から温もりが感じられるようで目頭が熱くなる。
当然ながら、生まれたばかりの頃なんて覚えてはいない。
できることなら、この愛おしい日々たちを一瞬たりとも忘れたくないと思う。でも残念ながら、だんだん高校生、大学生などの新しく思える記憶すらおぼろげになってくる歳になってしまった。
でも、確かにそこにいた自分。家族の記憶の中にしっかり刻まれている時間。それは絶対に無駄なんかじゃない。
家族が語ってくれる大切な時間は、私の心を温かくし、いつかそこに再訪したいと思わせてくれる。
楽しい時間はあっという間だけれど
私は母子家庭だ。父の記憶は小学生のままで止まっている。
でも、家族で出かけた色々な場所の思い出は写真が教えてくれる。母は父と離れた後も、一生懸命私と妹を養うために働いて、ほぼ毎年のようにディズニーランドへ連れて行ってくれた。
そして、祖父母とも毎年海へ行くのが定番だった。十分なお金があったとは決して言えないけれど、私たち姉妹が楽しくいられるようにがんばってくれていた。
親になった今、余計に感じる。「旅は人生を豊かにする」ものだと。
今回の大阪の旅では、外国人の方と話す機会がいくつかあった。子供を連れているから、話すきっかけもスムーズだったかもしれない。
海遊館への道中、台湾人の家族と出会った。初めての場所で、泣いてしまった娘のために席を譲ってくれた。
娘をあやしてくれたり、息子と身振りでコミュニケーションを取ってくれたり。言葉がなくても、楽しい時間がそこにあった。
帰りの新幹線で寝てしまった娘を横目に、母と息子と話をする。
「楽しかったね。でーっかいおさかな、いたね!いっぱい電車も乗ったね!」
きらきらとした目で話してくれる息子。ああこの瞬間が続いてほしいと思いつつ、静かにうなずく。
楽しいひとときは一瞬で過ぎていくけれど、生きている限り、思い出してはみんなで笑い合えるものなのだ。私は、いつかこの旅を思い出して泣いてしまうかもしれない。
子供たちに伝えたい旅のよさ
私は旅が大好きだ。
知らない土地に足を踏み入れる高揚感。いつもと違う食べ物、行き交う人々や景色に心が躍る。一期一会の旅先の出会いも楽しくて忘れられない人がたくさんいる。
国内はもちろん、まったく文化も価値観も違う海外にも行ってほしいと思う。多様な価値観を知ることは、色々な人が生きる現代でコミュニケーションをとっていく上で大切なことだ。
他者への理解
生きる喜び
旅とは、そんな人生で大事なことを学ぶ機会に違いない。子供たちが旅の思い出とともに大きくたくましく成長していけますように。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?