【#104】善く生きるとは?アダム・スミスのもう一つの顔『スミス先生の道徳の授業』
今回は
・人生について考えている
・善い行い、善い生き方とは何かに興味がある
という人にオススメの本をご紹介します!
アダム・スミスという名前は誰しもが聞いたことがあると思います。
経済学の父と呼ばれ、その著書『国富論』は現在まで読み継がれるあのアダム・スミスです。
経済学っていうと需要と共有とか言ってるアレで、ちょっと小難しい印象を持つ人も多いでしょう。
そしてその経済学の父って言うんだから、なにやら難しいことを語っている人なんだろうなって感じますよね?
確かに経済学は割と人間を機械的に捉えていて、人格とか倫理とか道徳とかはあんまり関与しません。
そんなアダム・スミスが、実は道徳についての本を書いていたと知ると、ちょっとビックリしませんか?
しかもそれは『国富論』より前。
初めての著書でです。
その著書が『道徳感情論』
この本では
・なぜ人は自分の利益に反するようなときでも正しい行いやよい行いをするのか
といったことが論じられているそうです。
なぜ伝聞調で書いているかというと、僕も『道徳感情論』を読んだことがないから(笑)
だって何か難しそうじゃないですか。
タイトルからして寄ってくんなオーラを感じますよね?
だから今回紹介するのは『道徳感情論』ではありません。
『道徳感情論』を噛み砕いて、そのエッセンスを現代風にわかりやすく、時にユーモアを交えながら解説してくれる本。『スミス先生の道徳の授業』です。
抜群の親しみやすさ
この本は
などなど現代的なテーマに「スミス先生なら、こんなふうに解釈するんじゃない?」というのを提示してくれるわけです。
筆者はラス・ロバーツさん。
スタンフォード大学の研究所で働いている方らしいです。
本の中ではこのラス・ロバーツさんが何ならアダム・スミス先生よりもキャラが立っています。
自身の失敗談なども面白おかしく交えながら解説しているため本の主役がアダム・スミスなのかラス・ロバーツさんなのかわからなくなってくるぐらいです。
さらに、ちょっとマニアックですが、翻訳も秀逸。
翻訳本特有の読みにくさがほとんどないのもポイントが高いです。
目的の手段化?
筆者のユニークな体験談も交えながらも、やっぱり『道徳感情論』を下敷きにしているわけですから「善く生きるとは?」というテーマについてもしっかり深く考察されています。
中でも一番印象に残ったのは下記のところ
よく
「手段と目的を取り違えるな」
という指摘があります。
これは主に
「本当は何らかの目的を達成するための手段だったはずのことが、いつの間にかそれ自体が目的みたいになってるよ」
という手段の目的化に対する指摘として言われることが多いと思います。
でも、この本を読んで
「逆もあるよな」
と感じました。
「愛されるに値する人間になることは、それ自体が目的」
であるはずなのに
「こんなことをすると、愛されますよ。」
は
「愛されると、あなたにこんないいことがありますよ」
とセットで語られることが多い気がします。
この言い方をしてしまうと、まるで「愛されるに値する人間になること」が「利益を手にするための手段」であるかのような気がしてきます。つまり、目的の手段化。
これは資本主義経済においてあらゆることがサービス化されてきた弊害なのかもしれません。
買ってもらうためには効用を説明する必要があるワケですから。
「こんな応答をすると、愛されますよ」
「痩せると、愛されますよ」
「肌がきれいになると、愛されますよ」
「この技能を身につけると、愛されますよ」
↓
「愛されると、こんな得があるでしょ?」
↓
「だからこのサービスを買ってね」
何かのために何かをする。
一見合理的に見える行為ですが、果たして本当に?
喧しい広告・宣伝にすっかり慣れてしまった現代だからこそ
何が手段で、何が目的なのか?
を改めて問い直すことも大事ではないでしょうか?
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