【子どもの高額課金】返金を受けるための法律について弁護士が解説


子どもが高額な課金をしてしまった方へ

子どもがスマホのゲームで高額課金をしてしまい、お困りの方には是非とも今回の記事をご覧いただきたいと思います。

法律上、保護者が同意をしていない場合であれば、未成年の法律行為は取り消すことにより返金を受けることが可能です。
その場合、返金をゲーム会社やプラットフォーム(App StoreやGoogle Play)に申請(または請求)することになります。

しかし、法律上、未成年取り消しができない場合もあります。
なので、法律上のポイントを理解した上で返金申請をしないと本当は返金を受けられたはずなのに受けられないこともあります。

そこで、この記事では未成年取り消しの基本的な知識から、少し突っ込んだところまで、弁護士が分かりやすく解説します。

取消し(未成年取消し)の基本

未成年のした課金は取り消すことにより返金を受けることができます。その法律上の根拠は民法5条に定められています。その条文を見てみましょう。

・第5条第1項
「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」
 
法律行為とは、ここでは課金(お金を払ってウェブ上のサービスを受けるという契約)です。未成年は、法定代理人(保護者)の同意がなければ、1人で勝手に課金をすることができない、ということが定められています。今回は「ただし、」以降は関係ないので無視しましょう。

・第5条第2項
「前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。」
 
そして、第2項では、保護者が同意していない課金を取り消すことができると定められています。この第1項と第2項により、未成年が勝手にやってしまった課金を取り消すことにより、返金を受けることができるのです。

しかし、取消しをできない場合もあります。そのことが第3項に定められています。
・5条第3項
「第一項の規定にかかわらず、①法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。②目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。」(①と②は便宜上、私が付記しました)
 
 
その①では、「法定代理人が目的を定めて処分を許した財産」とあります。例えば、200円を子どもに渡して、「これで牛乳を買ってきて」と言った場合です。子どもがきちんと牛乳を買ってくれば、その牛乳の購入を取り消すことはできません(店側が任意でキャンセルに応じることはあるかもしれませんが法律上強制はできません)。しかし、子どもが牛乳ではなくお菓子を買ってしまった場合、は取り消すことができます。

その②では、「目的を定めないで処分を許した財産を処分するとき」とあります。これの典型例はお小遣いです。子どもがお小遣いでお菓子を買っても取り消すことはできないということです。

詐術を用いた場合

少し応用ですが、課金の取消しで問題になりがちな条文が民法21条です。

第21条
「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。」

ここでいう「制限行為能力者」とは、未成年も含まれます。「行為能力者」とは成人であることをさします。つまり、子どもが大人のふりをして「詐術用いた」場合を指しています。
では、「詐術」とはいったい何でしょうか。この点は、法律的な解釈に委ねられています。ここの解説も踏まえて、以下では具体的なケースを見ていきましょう。

取り消しができる場合の解説

では、どういった場合に取り消しができて、どういう場合に取り消しができないのか。課金の返金を受けられる際によくポイントになるのは、
①     未成年がやったということを立証できること、
②     第21条の「詐術」にあたらないことです。

子どものアカウントで課金してしまった場合

子ども(未成年)が行った場合ですので、法律上は未成年取消しの対象になります。
問題が生じる典型的なケースは、課金の際に年齢の確認画面があった場合、つまり法律的に言うと「詐術」にあたるか問題になる場合です。
「成人ですか?」という問いに「はい」というのをタップして課金してしまった場合でも、実は簡単に諦める必要はありません。「詐術」にあたらない場合もあるからです。
 
「詐術」にあたるかは、様々なことを総合的に考えます。
経済産業省の法解釈の指針(令和4年4月 電子商取引及び情報財取引等に関する準則)では、「少なくとも、単に年齢確認画面や生年月日記入画面に虚偽の年齢や生年月日を入力したという事実のみをもって『詐術を用いた』とは断定できず、事業者の設定した年齢確認や親の同意確認の障壁を容易にかいくぐることができるものであったかなど他の考慮要素も踏まえた総合判断が求められると解される。」としています。

保護者のアカウントや端末で課金してしまった場合

保護者のアカウントで課金をしてしまった場合には、相手からするとあなたが購入したということになってしまいます。その場合には、あなたではなく未成年が購入したということを説明することになります。

未成年が購入したということを立証できるかは、ケースバイケースとなります。アカウントの管理状況、購入商品、購入金額、購入した回数や頻度などから、あなたではなく子どもだと分かるようなことを説明することになるでしょう。

例えば、子ども向けのアプリを1日で50万円分も購入した場合は、あなたが購入したのではなく子どもが購入したのが明らかだと言えそうです。このように他人が状況をみても、「子どもが端末を利用して勝手に契約してしまった」と分かれば、取消し(または無効)が可能になるケースもあるでしょう。

最後に

法律の基本的なところから、踏み込んだ解釈まで説明しましたが、いかがだったでしょうか。未成年取消と一口に言っても、法律的に取消が認められるかはケースバイケースです。 

子どもの課金は未成年取消という制度を利用することにより返金ができることがあります。無事に全額返金に至ったケースもございます。
未成年取消の相談のための専門ページもありますので、お困りの方は是非ともご相談ください。
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