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「スラローム」について語りたい【ペンシルパズル・ニコリ】

齋藤スバルです。
急に冷え込んできたこともありシンプルに風邪をひきました。

ニコリストにとっての11月といえば、毎年恒例「ザ・ペンシルパズル20XX」シリーズ。
数字系のペンパオンリーでごっそり250問以上解ける、やや気の早い忘年会のような本です。
もちろん新年会は「パズル・ザ・ジャイアント」シリーズ。

今回は珍しく「スラローム」がトップバッターとしてラインナップ入りしております。
珍しく、というより、巻頭言いわくシリーズ初らしいです。
本当かなと思い本棚を調べてみると「ニコリのペンパ2011」に載ってたりするのですが、リニューアル前ですし、まあとにかく10年+ぶりの復活、めでたいです。
ここ数年本誌への登場ペースが上がったとは思っていましたが、ペンパ2023のアンケート企画では作るのが好きなパズルランキングで一位タイという結果と聞いて驚き。
自分もスラロームに一票入れて「作る側になるとまた別の奥深さがある」などと書いて送った記憶があります。カットされていました。

今回はスラロームのジャイアント枠があると目次で見て、ずいぶん前に投稿したアレ(27番)が載っているかもしれないと変なテンションに。
しかし郵便配達の仕事勧誘のハガキがしきりに来るほど人手不足な静岡の東端ではなかなか届かない。
そこで電子版でスラロームの単行本を買って気を落ち着けていたわけですが、良質なスラロームを100問以上まとめ解きし、さらに念願叶いジャイアント枠も載せていただけたことなので、このテンションのままスラロームについて語りたいと筆を執った次第。

前置きが長い。

好きなタイプのスラローム

公式媒体のスラロームは編集部の精査を通ってきているというのもあって基本的に全て面白いのですが、その中でも「これ好き」や「これはちょっと合わないな」といった分類ができそうだということに気づきました。
(※ここからは自分個人の感性の話で、特定の問題を批評したりするものではないことを最初に書いておきます)

まず自分は「旗門少なめ and/or 数字付き旗門の比率多め」の問題が好きみたいです。つまり、通る順番や数え上げを特に意識しないと進めないタイプの問題。
逆に、順序をほとんど気にせずに小ループ禁だけであっさり解けてしまうとちょっと「うーん」となってしまう。小さい10x10サイズだと仕方がないのですが。そういう意味でもスラロームが面白さを発揮するのは17x17以上のサイズなんだなと改めて思います。
レギュラーのループ系にはスリリン、ましゅ、ヤジリンがあるわけですが「通る順番」という盤面全体レベルに影響を与えらえる制約を課してくるのがスラローム。
そう考えると、この特性をいかに活かせるかがスラロームを作る上で大事になりそうです。ここを考えるだけでいろいろなテーマで趣向を凝らした作品ができそう。実際にできるかどうかはともかく。

あそんでみる

あと好きなのが「黒マス密度が高めで線が一気に進むタイプ」の問題。考えずに線が引ける部分は箸休めとして大事ですし、動きを制限することで難しめの推理要素を入れやすくなるメリットがあります。
自分が「迷路系」と呼んでいる作風(毎年恒例のジャイアントでのあるかり工場長さんやアスピリンさんの作風)がまさしくそうです。
何より見た目がしゅっと締まっていて、解きたくなる意欲を刺激されるのです。パズルでも見た目での第一印象は大事だなと最近つくづく思う次第。

あそんでみる

もう一つ最後に、広い真っ白な空間を線が密集して駆け抜けていくタイプも好みです。
これは解き味云々というより「テンションが上がる」からというきわめて単純な理由。
フィルオミノや天体ショー、ダブルチョコなどで、やたら大きい無数字ブロックが湧き出してくるとテンション上がりますよね。同じループ系のスリリンだと、4x4以上の広い空白や、ケーエスさんの極薄ヒント密度の盤面が一意に決まっていく感覚に近い。
スラロームに話を戻しますと、単行本の後半パートのぽっつさんの作品、ペンパ2023だとぬーんの民さん作の19番、いわき石川さん作の22番、25番みたいな感じが好みなのです。

あそんでみる

まとめてみると「数字あり旗門メインで順序が大事」「黒マスの密集と白マスの密集のメリハリ」が、最近自分が目指している方向性の一つとして定まってきたように思います。
拙作27番は粗が多いながらもそれに近づけないかと試したものです。ただ改めて解きなおすとは数字構成の緻密さよりはノリと勢いとテンション重視で作っていますね。まだまだ修行の旅は長い。

気になってしまうタイプのスラローム

解き味というよりは、見た目・ビジュアルの細かい点での感覚的な問題。
まず、旗門の端が黒マスでふさがれていて、実質的に長さが1~2短い旗門になっているパターン。黒マスを対象配置縛りで作るときは仕方ないとは思いますが、そうでないなら旗門の端を普通に黒マスで埋めてしまった方が自分は落ち着くのです。
逆に、旗門の中央部分が黒マスでふさがれている構造は、難しい推理要素を仕込む際の基本機構となるのでバンバン使っていいと思っています。

上と似たような話だと、最初から線が通らないのが自明な幅1マスの袋小路も気になってしまいますね。こういうのは全部黒でふさいでしまわないと気が済まないです。一種の強迫観念でしょうか。

あと、1つの黒マスに3,4方向から旗門がつながっている構造も見た目的になんとなく苦手で最近は使うのをなるべく避けるようにしています。特にこの黒マスに数字が降られている場合どこの旗門を指してるかが直感的にわかりづらいのです。旗門に矢印がない過去の時代だとなおさら。


整理してみると「黒マスに対して旗門マスの占有率が上回っている」という状況がなんとなく気になるのかもしれない。
黒マスという「重さ」を感じる要素に対し、旗門という「軽い」要素がメインとなって支えているアンバランス感、その不安さを本能的に感じ取っているのだと思います。
やや話が逸れてオモパ関連になりますが、昔の「クロット」も「○に表出ヒントがあって黒マスをおいていく」のではなく「黒マスに表出ヒントがあって○を配置していく」にしたら、論理的には全く同じパズルでも感覚的にだいぶ違うような気がするのです。
以上、最初から固定されている要素は黒マスや黒塗りでずっしり重さをもって構えてほしいな、という話でした。

あと作る上で気を遣うのは「ユニークネス」絡みの抜け道つぶし。
これは前述の「広い空間」とは相性が最悪なので、今自分がもっともシビアな課題だと感じているものです。
広い空間があろうものなら、ここには線の束が通るんだろうなと一瞬で分かってしまう。稀に裏をかいて隅っこだけちょっと侵入してほとんど空白のまま残す展開もありますが。
理詰めしなくともなんとなく引き方が見えてしまう問題が大半なのですが、直感が一筋縄では通用しない問題もたまにあって、それはすごいなと思います。
対ユニークネスはまだ研究のしがいがある話題ですね。

結論:スラロームは作る側になるとまた別の奥深さがある

おまけ という名の本編

ただ語るだけでも何なので、昔作ってネットに流した&時効になったスラロームの大きい作品を公開します。
過去作品はまだ拙い部分が散見されたので、今回の記事用にいろいろ修正をかけてあります。
少しでも楽しんでいただければ、これ以上の喜びはありません。

スラローム・ザ・ジャイアント(45x31)
・昔Twitterに放流した作品をリメイク。ペンパ2023の27番の前身となった作品ですが、今回の記事を顧みつつ結構な修正を掛けております。

スラローム・ザ・スーパージャイアント (64x50)
・SG初制作品の思い出の品で、総旗門数240という大作。黒マス対称形にこだわりすぎるあまり、SGの割に解き筋が細くなってしまい、解くのに1時間はかかるという代物。
SGには多少の大胆さも必要だなということで、この失敗は同じくペンパ2023に掲載をいただけた巻末のヤジリンSGに活きているのでした。

スラローム、ひいては遍くペンシルパズルの繁栄を願って。
それでは。

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