【創作小説】剣と盾の怪奇録「帰り際」
叔父さんの滞在中、僕は結構その耳元を目で追っていた。大きな金魚のピアスが、涼しげに揺れているから。ガラスなのか、透明な朱色は大きさの割に圧を感じない。耳の周りだけ水があって、泳いでいるように見えた。
「んな気になる?これ」
相変わらず、深夜のぼやけた縁側で、叔父さんはビール片手に庭を見るとも無しに見ている。今日は、紺色地に紅い大きな彼岸花が咲き乱れている柄シャツ姿。良いな、とは思うがセンスも神経も真似出来る気がしない。叔父さんの手が、金魚を揺らす。声だけは背後の僕に向いていて