今夜の時空アドベンチャーEXは、
2021年6月11日(金)23時から新しく「時空アドベンチャーEX」をお送りすることになりました。第二回目は6月18日(金)23時「滝沢馬琴」の大江戸超常現象雑誌倶楽部「兎園会」会員の曲亭馬琴が収集し、編集した奇談集『兎園小説拾遺』から「虚船」「空狐」を紹介する。
「虚船」現代語訳、英文Wikiからの和訳
【時は西暦1803年2月22日、常陸国のはらやどり海岸(茨城県鉾田市の大竹海岸か)の地元の漁師らが波間を漂う不穏な「舟」を発見。彼らは好奇心からその舟を陸に引き揚げてみた。船の高さは一丈一尺(3.3m) x 幅三間(5.45m)とそこそこ大きい物だ(現在の中型の漁船並)で見た目は香炉を思い起こさせる。上部は赤く塗られた紫檀の様に見え、下部は真鍮色の板で覆われていて、明らかに鋭利な海岸の岩礁から船を守る目的だと思われる。上部には窓がいくつもあり、ガラスもしくは水晶がはめられていた。そして樹脂のような物が詰まった棒に覆われていた。この窓は完全に透明で当惑する漁師たちは中を見る事ができた。
虚船の内部は、見た事も無い言語の文字で飾られていた。漁師たちは船内に布団のようなものが二つ、二升(3.6リットル)ほどの水で充たされた瓶、洋菓子、こねた肉類を見つけた。漁師たちはまた、18〜20歳前後の若く美しい女性を見た。身長1m50cm程度で、女性の髪の毛と眉毛は赤く、人工的な白い付け髪(ウィッグ)を長く伸ばしていた。付け髪は白い毛皮か、薄く白粉を塗った縞編みと思われた。この髪型は過去の文献にも見当たらない。女性の肌はとても薄い桃色だった。着ていた服は見た事の無い高価で滑らかな絹のようだった。
この女性が話し始めたが、誰も理解できなかった。漁師の言葉も伝わっていないようだった。誰もその女性の身元を尋ねられなかったが、この女性はたいそう友好的で、丁寧だったが、薄い色の素材でできたおよそ2尺(0.6m)の大きさの正方形の箱をしっかりと掴んでいたのは奇妙だった。この女性はこの箱に触れることを誰にも許さず、漁師たちがどれほど懇願しても叶わなかった。
ただこの村の老人が言うには、「この女性は異国で結婚した姫君だろうが、結婚後に民との情事や醜聞があり、旦那は死刑に処され、姫君は祖国から破門されたが、多くの憐れみを呼び、死刑を免れ、その代わりに島流しの刑に処されたのだろう、だから虚船に乗せられている。もしそれが正しければ、四角い箱には恐らく死んだ旦那の首が入っているのだろう。昔、同じような理由で流された船が、近くの浜に打ち上げられた事がある。その時は鋲で首を打ち付けた小さな板を携えていた。その箱の中身も同じ事だろう。この女性がこんなにまで箱を守るのもこれで察しが付く。」「この女性と船を調べるにはお金も時間もかかる。そしてこのような船で海へ流す事がしきたりと見えるので、この女性は虚船に戻し、再び、海に戻すのがよい。人道上、酷いように思えるが、これがその女性の宿命であろう」と説き、漁師たちは虚船を組み立て直し、中にその女性を乗せて、沖へ流し戻した。】
Wikipedia「空狐」から一部抜粋
曲亭馬琴らによる奇談集『兎園小説拾遺』に転載された五狐神について記した理論書には、天狐・空狐・白狐・地狐・阿紫霊の順で名が挙げられており、空狐は1000年以上生きた狐のことであり、3000年を経ると稲成空狐(いなりくうこ)にもなると説かれ、天狐以上の通力自在の神狐であるとされている。空狐や気狐など階級が高い狐は、野狐たち(一般的なキツネたち)とは異なって肉体をともなわない存在であるとも説かれてもおり、精霊のようなものであると考えられていた。
いわゆる「山の神」の眷属であるキツネ(精霊、古い魂)である。これらが人について異言を語らせたり、過去の歴史を語って驚かせたりする、人懐っこい存在かもしれない。
【江戸時代末期の安政年間に記された随筆『宮川舎漫筆』には、自らを空狐であると称する善狐が人間に憑いたという話がある。それによれば、犬に噛み殺されて魂のみとなっていた空狐が、久しく住んでいた上方から江戸へ向かう途中に一休みのため、長崎源次郎という者の家に仕える小侍に憑き、しばらく体を借りていた。それから数日間、空狐が源次郎に語ったところによれば、自らが属している善狐の種族にあたる狐たち(善狐の種族名の中に空狐というものは存在していない)はさまざまな術を使いこなすものの、人間に害を与える野狐と異なり、あくまで正直者や、愚鈍で生活に窮している者を助けるために術を使うのだといい、実際にその空狐は自分の憑いている小侍の疳の病を治療した。さらに源平、壇ノ浦、関ヶ原などの合戦の物語を語り、周囲の人々を楽しませて評判を呼んだ後、5日後に小侍から離れて行った。この空狐は去り際に源次郎への礼として書き物をしたためており、空狐の説明によればこれは「白川唯一神道之極意、唯授一人之伝」というもので、書中の「人一行」は社(やしろ)の形を指し、左下に書かれた「天日」がその空狐の名だという。】
「一人一行、天地を合わせて神の恵み哉」棒長 天日拝
山の精霊が、400年前の歴史物語を語って、偉人伝を語り継いだ所から、妖怪や精霊と言うよりも神霊に近しいものだったように感じられる。ただ、大阪から東京へ上って来るところがいかにも「お上りさん」を彷彿とさせる。
第三回目からも毎回テーマに沿った不思議な話を持って来たいと思います。乞うご期待あれ!
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