中根すあまの脳みその223


午後4時。
空が赤い。
暗くなりはじめた空の一部分だけが、まるでトマトジュースでもこぼしたかのように赤くなっている。
少し奇妙に思えたが、夕焼けの名残だということにしておいて、空から目線を外す。
そういえば私は、トマトジュースの美味しさがわからない。

午後9時。
ふと思い立って空を仰ぐ。
まだ、赤かった。
もう、夕焼けである可能性は考えられない。
一体これはなんの色なのだろう。
暗闇にぶちまけられたトマトジュースは、みていてあまり心地がよいものではなく、心がざわざわする。
なんとなく世界の終わりを予感させる不気味な空から、私は目を逸らした。

思えば空なんて、本当は同じ顔をしていないのかもしれない。
1日に数秒、気まぐれに眺めるだけなのに、人は空を理解しているかのように得意気だ。
気づいていないだけで、空はときどき、私たちに牙をむいているのかもしれない。

大きすぎる月。
手に取るように分かる星座。
異様な形をした雲。
最近、空を見て首を傾げる機会が多いように感じる。
しかし、それらが空の本来の姿である可能性だって十分にあるのだ。

がしゃん。
突風で自転車が倒れた音がした。
窓を開けると春の空気が流れ込んでくる。
音が聞こえるほどの風の強さは、さながら春の嵐だ。とても冬ではない。
季節だって、私たち人間の勝手な思い込みなのだ。
少しの怯えと共に窓を閉めた。

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