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「過去未来報知社」第1話・第6回

<<第5回
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「住民の悩み事を聞いて解決する、やることは一緒。
 あちらさんがすべて町内のもめ事を解決しちゃったりすると、
 この課の存在意義そのものがなくなっちゃうんだよね」
「えっ?! それは困ります!」
「もっとも、あっちは有料、こっちは無料だから、まだまだ勝ち目はあるんだけどね」
「無料じゃありません。町民の血税でやってるんです!
 そんなだから、全然ここに人員まわしてもらえなくて、自分で契約社員捜す羽目になるんですよ」
「実は、その相談も過去未来報知社にしてたりして」
「え? マジですか?!」
「え? なに考えてるんですか!」
「さて、問題です。
 俺は過去未来報知社に依頼をしたのでしょうか、しなかったのでしょうか?」
 ニヤニヤと二人を眺める東谷。真美は肩をすくめる。
「そんなの、本人に聞いたら一発じゃないですか」
「聞ければ、ね」
 意味深な東谷の顔に、笑美と真美は身を乗り出した。
「肝心の所長が、部屋から出てこないの」
「……入江君が引きこもっているのは、いつもの事じゃないですか」
「前は依頼人との接触ぐらいはしてたでしょ。
 ここ一週間、完全面会謝絶状態なのよ」
「なんでそんな事を課長が知ってるんですか?」
「だって、依頼がきたんだもの」
「は? 依頼?」
「過去未来報知社が仕事を受けてくれないから、調べて欲しいって」
「え? そんな個人的な依頼もくるんですか?」
 目を丸くする笑美に、真美はいぶかしげな視線を東谷に送る。
 東谷はほほえみ返すばかりで答えない。
「ま、民生委員みたいな仕事だと思ってもらえばいいよ。
 一人暮らしのお年寄りの様子を見に行く、みたいなつもりで見てきてよ、右輪瓜さん」
「え? 私、ですか?」
「うん。実はね、そういう雑用……いや、実務をこなしてくれていた子が、寿退社でいなくなってしまってね。それで今回募集記事を出したって、わけ」
「まぁ、あんまり町役場の中に下請け企業がいるのって外聞がよくないから、おおっぴらには出せなかったけどね」
「ああ、それで……」
「つまり君、右輪瓜君の最初の任務は、音信が途絶えた過去未来報知社の社長の様子を見てくるって重大事項になるわけ」
「今、さらっと『雑用』とかって言われたような……」
「これも我が『六合町・地域対策課』の大事なお仕事。がんばってね」
 ポン、と分厚いファイルを渡される笑美。
 ファイルの中身は、六合町の資料だった。
 そのあまりの重さによろめく笑美。
「い、今時データじゃなくて紙、ですか」」
「本当は、それをパソコンに打ち込むのがあなたの仕事」
 真美はちらっと東谷を見る。デスクに戻った東谷は大げさに肩をすくめてみせる。
「東谷課長、機械関係がまるでダメなの」
「そんなお年には見えませんが……」
 ひょろひょろの体躯と人を食った様子に老獪なものを感じるが、東谷の見た目は五十そこそこではないか、と笑美は当たりをつける。
「なんていうかねぇ、相性が悪い?」
「相性?」
「そのうち、わかるわ。でもまぁ、あの人怠け者だから、他の仕事もあなたに回ってくるでしょうね。後悔してる?」
「いえ!」
 ファイルを抱きしめると、笑美は顔を上げる。
「私、この仕事が決まってから、生まれかわっったつもりで頑張ろうと思ってここにきたんです! なんでもお仕事いただけるのなら、頑張ります!」
「そう?」
 内線電話がなり、東谷が受ける。
「西畑さん、上から電話。
 さぼってないで帰ってこいって。うちに来るのがさぼり、ってどうなのかね」
 語尾は笑っている。
 真美は「さあ? どうしてでしょ?」と肩をすくめるがその様子は「わかってるでしょ」という声が聞こえてくるようだった。
 笑美は真美に渡された書類に目を通す。
 氏名や履歴を書く欄が。
 名前の欄に「右輪瓜笑美」と癖のある字で書くと、笑美は「ふん」と小さく気合いを入れた。
「よし、やるぞ!」

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「過去未来報知社」第1話・第6回

涼廣

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