「過去未来報知社」第1話・第4回
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「私は西畑真美。この課の経理を担当しています。
と言っても、たった三人の部署だからね~。
二階の戸籍課と兼業なの。だからここにはあんまりいないかな」
「今日は新人君の書類の手配があるから来てもらってたんだ」
手鏡を下ろすと、東田には笑美の顔をのぞきこんだ。
「で、君は?」
毛布を蹴って立ち上がる笑美。
「右輪瓜笑美です。24歳、独身。雑誌の求人広告を見て応募させていただきました!」
「うん、よく見つけたね。あんな小さな記事」
「広告費があれぐらいしか出せなかったんですよね」
「本当に、偶然で……」
「しかも、こんな田舎に」
「田舎って、本郷まで電車で一本じゃないですか」
「隣の駅で急行に乗り換えれば、ね」
「来てもらってなんだけど、うち、役場の中に居を構えているけど、実は役所の下請け企業なんだってことは、わかってる?」
「はい、応募のお電話をさせていただいた時に、伺いました」
「あ、その電話にでたの、私ね」
身を乗り出す真美に笑美はギクリ、と体をすくませる。
「あ、あの、私、失礼とか、なかったですか?
電話って緊張しちゃって、変な声でちゃうし」
「そうね。ちょっと電話してきたときと感じが違うかな~、と思ったけど、別に失礼なことなんて、ないわよ。むしろ、この変人東谷に任せていいものか、って悩むわね」
「失礼だな。僕みたいな常識人は、そうはいないよ」
「よく言うわ。私がここにいなかったら、蓑虫のままこの子をここに転がしてるでしょ?」
「あったかそうでいいじゃないか」
「こんな風に常識のたがが一本はずれちゃってる人だからね。
困ったことがあったら、私に言ってちょうだい」
「今、まさに困ってるんですが……」
「それは、まぁ、おいおいね」
「そうそう、今、うちいはそれどころじゃなくてね」
曖昧に笑うと、東谷と真美はおばちゃんのように手をばたばたと振った。
「それどころ……」
衝撃を受ける笑美を完全に無視すると、東谷はやけに分厚いファイルを取り出した。
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