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海にまつわる三つのはなし。


1.

空に海を見た最初の人は一体誰だったんだろう。ゆっくりと動く彗星を波に見立てて、輝く恒星は水面の煌めきに、いったい、誰が空に星の海を見つけてくれたんだろうか、と、考えて、わたしはデスクトップの検索欄に文字を打ち込もうとして、やめた。空に海を見つけたのはきっと他に誰か居ただろうけれど、その最初の人に思いを馳せて感謝するのはわたしの世界ではわたしだけでいいと感じたからだった。この町からは星の海は見えないけれど、浪漫は確かにここにある。仕事終わり、くたびれたワイシャツのままベランダへと出る。星の海ではないけれどこの夜景を星に例える人も、いたはず。なんて言葉だっけか、今度はiPhoneの検索欄に文字を、やっぱりやめて、電話のアイコンを押す。寝てた?よかった。ううん、あのね、星の海って言葉最初に考えた人って誰だと思う?


2.

 (あ、また刺された。)文字通りの痛みは赤く蚯蚓腫れを引き起こしてしまう。心に。ゆらゆらゆれているあの子は、おとなしそうに見えて突然ぶすり、とこちらに向けて毒を刺す。身を守るために。気付かれないように。ぼくはその毒にやられてしまっている一人だ。「飽きないの」「関係ないです」「もうやめようよ、そんなこと」「関係ないです近づかないで」「いたいな」「はあ」「あ、心がね?」そんな刺すような視線を浴びたら、君の毒がまた回る。体中に貯めて致死量を越えたらきっとぼくはしんでしまう。可愛さの致死量って、どこだろう。

 ゆらゆらゆれて、流されて、握りつぶせそうな豊満な体を引き摺って、どこへ行くの?「誰にも相手にされないでしょう」「だから、」「僕がいるから」

 月なんて、醜い君に美しい名前を付けたきみの両親に感謝してる。海なんて、心の狭い僕に名付けた僕の両親にも感謝している。

 二人で海の月になろうよ。



3.

と、ここまで書いて力尽きたので、あなたの海にまつわるおはなしをお書きください。海にまつわる曲をBGMに、海を掬う、(teenage)Disaster、海へ行かないか、クラゲ、えとせとら、、、そういえば渚にまつわるエトセトラも海の曲。そんなわたしには海に関する思い出がない。