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緊張型頭痛のうつ、不安、QOLに対する鍼灸治療とMedical Trainingの効果: ランダム化比較試験


背景

 緊張型頭痛(Tension-type headache; TTH)は最も一般的な神経原性疾患であり、慢性疾患や障害の原因として二番目に多い。ICHDの診断基準では、Episodic TTH(ETTH、12日以下/年)、frequent ETTH(12日以上、180日以下/年)、chronic TTH(CTTH、180日以上/年)となっている。

(そうなの!?知らなかった〜。Episodic とChronicは知っているけど、その間があるのか。)

 TTHの約60%が社会活動や労働を制限されており、特にCTTHでは顕著で、QOLスコアが片頭痛と同等に低い。TTHは、頭痛の頻度により、末梢および中枢性感作を介して、侵害性疼痛を引き起こす。従って、頭痛頻度が高いと、侵害受容性変化による機能障害のリスクが高まる。

 さらに、TTHでは不安やうつとの関連や、睡眠、感情的な幸福感も損なわれるとの報告もある。さらに、特にCTTHでは、破局的思考や回避行動なども頻繁に見られる。従って高頻度ETTHやCTTHに対して、心理療法的アプローチやアミトリプチリンなどの抗うつ薬が推奨されるのは当然である。しかし先行研究では、副作用や治療早期終了などがあり、その場合、非薬物療法の併用が重要となる。

 本研究では、高頻度ETTHまたはCTTH患者を対象に、QoL、うつ、不安感に対する鍼灸治療とMTTの併用または単独効果と通常ケアの効果について比較検討を行った。


対象と方法

デザイン:4群、前向きランダム化非ブラインド試験
Sample sizeの計算は、Effect size f=0.15, α=0.05, beta=80%とし、各群20名となった。

18歳から65歳で、1年以上の高頻度ETTH(1~14日/月)またはCTTH(14日/月以上)を有する参加者212名を対象とした。すべての参加者は、研究期間中、必要に応じて内服薬(例:イブプロフェン)および/または予防薬(例:アミトリプチリン)、非薬物療法(例:リラックス術)を含む現在の治療を継続し記録を求めた。
 除外基準は、低頻度ETTH(頭痛が1日/月未満)、ドイツ語能力が不十分、過去6ヶ月以内にAPまたはMTTによるTTHの治療を受けた、重度の身体的または精神的疾患、頭痛薬の使用が10日/月以上、1回/年以上の片頭痛、妊娠または授乳中の女性、50歳以降の頭痛の初発、とした。
 介入期間3ヶ月前から観察期間までに急性期薬・予防薬または非薬物治療の変更があった被験者も除外した。


実験デザイン
T0:介入前1ヶ月(pre)
T1:介入開始時(1.5ヶ月、6週間)
T2:介入終了時
T3:介入開始から3ヶ月後(介入終了から1.5ヶ月)
T4:介入開始から6ヶ月後


介入方法
 6週間の介入期間中、12回の治療セッションは、治療頻度が低い順に(3→2→1回/週)実施された。観察期間終了後、UC群は、追加費用なしでAPまたはMTTのいずれかを受けることができた。

 APはTCMに基づいた治療が行われた。7ヶ所の標準的経穴に加えて、追加でいくつかの経穴に置鍼30分を行なった(長さ:25~40mm, 直径:0.25~0.3mm)。刺入時・抜鍼時には得気感覚を出した。鍼治療は5年以上の臨床経験を持つ鍼灸師が行った。

標準的経穴:GV20(百会), EX-HN5(太陽), GB20(風池), LI4(合谷)
前頭部頭痛:ST44(内庭), GV29(Yintang:どこ!?なんとなく調べると印堂なんだけど、奇穴だよねえ、、)
側頭部頭痛:GB41(足臨泣), SJ5(外関)
後頭部頭痛:BL60(崑崙), SI3(後渓)
頭頂部頭痛: PC6(内関), EX-HN1(四神総)


 MTTは筋力、持久力、柔軟性などから構成された。このトレーニングはリハビリテーション室にて理学療法士の指導のもの4名程度の少人数で行われ、エクササイズの種類、量、頻度、負荷は個別に設定した。
 またMTTと鍼の併用群は、最初にMTT(60分)を受け、5~10分の休憩の後AP(40分)を受けた。


 全対象者は通常ケアに加えて実施され、通常のケアは開始の3ヶ月前から研究終了まで、そして観察期間中も変更なかった。


Outcome

 全ての評価表は自己記入式にて行われた。評価ポイントはT0~T4の5ヶ所で評価した。
<使用した評価表>
・Patient Healths Questionnaire-9(PHQ-9):合計27点で高い方が抑うつ感が強い
・Genetalized Anxiety Disorder-7(GAD-7)
・SF-12



結果

 96名のうち16名が研究辞退し、対象は70名である。

 ベースライン(T0)の抑うつ度スコアは、0~23の範囲であった。T0からのPHQ-9の有意な低下は、その後の各時点(T2、T3、T4)において、AP群(27~37%)と併用群(20~26%)のみで認められた
 ベースラインの不安スコアは、0~20の範囲であった。T0からのGAD-7スコアの有意な減少は、T2、T3、T4時点ではAP群(25~36%)、T3、T4時点では併用群(11~23%)のみで認められた。

 SF-12による健康関連QoLについては、ベースラインは25.1〜55.9点(身体的)、22.0~60.9点(心理的総得点)の範囲であった。健康関連QoL合計スコアには、いずれも前後比較にて有意差が認められた。
 6ヵ月後のFollow-up調査(T4)において、身体的スコアの平均相対変化は、AP療法で30%、併用療法で20%であった。心理的総得点の有意な変化は、MTT群でのみ観察されたが、これは他群と比較して、脱落者が多く、その結果、結果の均質性が高くなったためと考えられる。

 次に、抑うつ・不安の重症度を細分化して検討した。うつ病の程度については、AP群と併用群に有意な差が認められた。これらの群では、抑うつ度なし(カテゴリー0)、抑うつ度低(カテゴリー1)の割合が増加し、抑うつ度中(カテゴリー2)、中程度(カテゴリー3)、重度(カテゴリー4)の割合が減少した。

(結果のまとめとして、MTTだけではなく、鍼治療を介入することが重要)

考察

 本研究は2つの異なる非薬物療法を個別に標準的治療と組み合わせて検討した最初の研究である。
 
本研究は、TTHにおける気分とQOLの観点から鍼治療の重要性を強調する結果である。

 先行研究では、90名のCTTHに対し、鍼治療/リラクゼーション/フィジカルトレーニングに分類し、主観的well-beingについて質問紙を用いて検討している。全群介入後評価項目については改善したが、3ヶ月後の追跡調査では鍼群と比較してフィジカルトレーニング群で有意な改善が維持されていた。しかし、この研究の統計学的検出力は64%だったため結果には慎重な解釈が必要である。

(この評価表では、メンタル面の評価はできない。鍼治療はメンタル面へのアプローチを得意とする、との位置づけで書かれている)

 メタアナリシスにおける鍼治療の解釈は異なる。それは、多くの場合、研究では適切な対照/比較条件を作成することができないことが原因の一つである。プラセボ効果は、施術者の感情、共感、関心、および患者の個々の期待に応じて、さまざまな治療効果をもたらす。緻密な計画され、技術的に複雑ないわゆる偽鍼やプラセボ鍼は、上記の影響変数のために比較が困難か不可能である。この研究の大きな強みは、他の多くの研究デザインとは異なり、3つの異なる類似した介入を比較したことである。

 要約すると、本研究は、高頻度ETTHおよびCTTHに対する治療法としてAPは、患者の受容性が高く、副作用率が低い有意義な追加治療として支持する。


結語

 APおよびAPとMTTの併用による標準治療への追加治療は、抑うつ感、不安、QOL改善に寄与した。また、うつ症状の重症度が高い被験者の割合が減少した。抑うつ感、不安感、健康関連QoLの観点から、APは治療効果を媒介する上で中心的な役割を果たすようであると推測される。このことは、APがTTHの治療における臨床的妥当性を強調するものである。



***自分メモ***

・TTHは運動だけでも、抑うつの軽減がありそうだけど、精神的症状には”鍼”の追加が重要なのね。→これについては機序がめちゃくちゃ気になる。
・個人的にはトレーニング60分→鍼40分なんていいなあ〜と思っちゃうし、よくなりそうだけど、過負荷ってこともあるのかしら。
・久しぶりにTTHの論文読んだけど、背景から知らない情報だらけ。
・全然勉強しても追いつかない〜どれも中途半端〜と久しぶりに凹んだけど、良い論文だし、これからの発表に使おう。
・最終的に思うのは、いつか絶対にこの雑誌に筆頭で載りたい。



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