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ありがとう、名演小劇場。

3月23日、名古屋市は栄の市街地にある名演小劇場が幕を閉じると聞き。そのちいさな劇場の名残を残す場所で、映画「モンパルナスの灯」を観てきました。

ジェラール・フィリップ生誕100年映画祭として、名演小劇場では今、彼が演じた数々の白黒映画を上映していまして。

映画「モンパルナスの灯」は画家モディリアーニ氏の苦悩と葛藤、画家という仕事の商業的な成功への困難さと無情さ、そのなかでも画家を支える女性たちやモディリアーニ氏を支持する友人たちを描いた物語でした。

初めて映画館で観た、白黒の映画になりました。

脆くて危険で、それでいて品のある俳優さん、ジェラール・フィリップ氏。そして脇役一人、舞台となるフランスの情景の描き方のひとつひとつにすこしも手を抜かない丁寧な作りの映画と感じました。

名演小劇場は50年ほど昔にお芝居や落語などの公演場所として始まり、映画館としては20年ほどの歴史を持つそうです。

新しい映画館の完全な席指定、というスタイルに慣れていると、映画の前の音声のみのアナウンスや、上映前の宣伝が今回は一切無くて、すぐに映画が始まったこと、自由席で好きなところをその場で選んで鑑賞など、昔のスタイルそのままに観られたことへノスタルジー、郷愁を覚えました。

帰る前にジェラール・フィリップ氏のパンフレットを買うため、目を通していたら、年配のおじさまが「ジェラール・フィリップはお好きですか?」と話しかけてくださりまして。

なんとその方は映画に詳しくない私でもお名前を聞いたことのあるアラン・ドロン氏の作品公開に合わせた来日のイベントへ参加されたことがあったそうです。

その方から「映画を捨てないでね」と別れ際にお言葉をいただき、忘れられない名演小劇場の私にとってのラスト上映となりました。

出来れば何らかの形で名演小劇場の佇まいと、厳選された昔の良作やインディーズ映画を観られる良さは残していただきたい。

3月23日のあとのこの場所がどうなるのかは、現段階では分からないのですが。子どものころからお世話になっていた名演小劇場に、幕を閉じる寂しさと感謝の想いでいっぱいです。

これまで本当にありがとうございました。

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