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ボイス+パレルモ展

先日、4月3日から豊田市美術館にて封切となった「ボイス+パレルモ」の美術企画展を見に行ってきました。

ヨーゼフ・ボイス氏は第二次世界大戦で傷を受けて生死をさまよい、そのときにタタール人の看護を受けて一命をとりとめました。その後芸術に目覚め、そのときタタール人が彼の命を救うために使った素材を美術品として使い、その後も身近な素材をもって芸術をするということを広めようとしたひとでした。

パレルモ氏はボイス氏の弟子で、若くしてボイス氏よりも先に亡くなりましたが、それまでにボイス氏の影響を強く受けながらも、自分の個性をさりげなく表した作品を出しました。

……おふたりの作品群を見た私の最初の感想は「何コレ、自分でもできそう(笑)」という印象でした。が、それこそがボイス氏の目指したことなんだなー、と、さまざまな、ソリとか、壁に立てかけられた木材の代わりにフェルトが使われたオブジェとか、三角や四角といったいわゆる抽象画系のカタチを絵にしたりといった作品を見ていくうちに考えるようになりました。

すべてを見終わって感じたのは、芸術はもっと敷居が低くていい、というボイス氏の優しさです。録画映像の作品もあって、そこには高い芸術的センスがありましたから、ボイス氏に関してはおそらく「わけのわからない高尚すぎる作品」をやろうと思えばいくらでも出来たひとだったに違いないと感じます。

新聞紙で作った兜ひとつや、棒切れひとつでも、芸術と感じていいんだよ、という懐の深さがそこにはありました。

ああ、あれを芸術と言っていいんだと。デジタルアールブリュットと称して、私がやっている、ペイントツールによる丸や三角や四角などの図形を用いたパソコンの絵でも。

アールブリュット自体が、美術学校出身のひとびとによる「分かりにくい、分かる人には分かる高尚な絵」になっちゃった状況のなかで、美術を専門的に学んだことのない人間が創作活動をやることを言うので、パソコンで誰もがペイントツールを使えるような現代とは違う、戦後まもなくの時代において、誰でもできそうな芸術をやるボイス氏、パレルモ氏の先見性は素晴らしいと思います。

……ただ、ぶっちゃけ抽象系なので、自身の美意識が具象画(風景だったり人物だったり、見て分かるものが描いてある絵)に重きを置いている方にはまったく合わない可能性が高いかもしれないとは、申しあげておきます。

ああ、これを芸術と言ってもいい! 先ほどもすこしお話しました、新聞紙の兜、丸めた棒切れ、それすら芸術だとすれば、生活の場において世界はどれほど美しいものに満ち溢れているのだろう? そう思えるひとにはどんどんと美の世界が広がっていく、そんな想像と懐の深さを試される作品群でもあるのでした。

豊田市美術館での「ボイス+パレルモ」展は6月20日(日)までで、その後は下記の美術館で開催されます。

埼玉県立近代美術館 2021年7月10日(土)ー9月5日(日)

国立国際美術館   2021年10月12日(火)ー2022年1月16日(日)

※ 見出しの画像は、デジタルアールブリュットと称し、ペイントツールで私が描いている抽象系画像のひとつです。みんなのフォトギャラリーでは「ボイス」で検索しても作品の絵が見つからず、最近実装された世界の美術館の絵を利用できる機能のほうでは絵が多すぎて見つからず、恥ずかしながら自作絵でごまかしました(笑)

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