お花たちの創世神話
これは、花の精霊たちが決めた、それぞれの季節のこころのお話。
この星、この世界の始まり。宇宙の果てからやって来た月を得て、ほどよく熱の冷め始めた地球には、海、大地、空、そしてだんだんとさまざまな生きものたちが出来ていきました。
そこにはまだ、植物がありませんでした。
大地を司っていた女神は、植物を大地に生み出すことにして、この世界のかたちになりたい精霊たちを宇宙に求めました。
「この荒涼とした地球の大地を潤し、笑顔を生み出せる者を望みます」
応じたのは、遠くの星々で植物の経験がある精霊たちでした。
さくらの精霊が言います。
「わたしは春に、笑いましょう。生きものたちの過酷な冬がようやく終わる、そのときに」
あじさいの精霊が言います。
「わたしは梅雨に、笑いましょう。悲しみの雨の多い、そのときに」
ひまわりの精霊が言います。
「わたしは夏に、笑いましょう。炎天の太陽に、辛い思いをする生きものたちが多い、そのときに」
コスモスの精霊が言います。
「わたしは秋に、笑いましょう。ふとした風に寂しさを、生きものたちが感じてしまう、そのときに」
サザンカの精霊が言います。
「わたしは冬に、笑いましょう。雪の厳しい寒さのなかで、震える生きものたちに、あたたかなハートを花びらとして残しましょう」
そうして一年の季節が花々によって決められ、地球にはどこかで花が咲くことになりました。昔から今に至るまでずっとずっと、生きものたちに、ひとびとに、花たちはいつも笑顔を見せて元気づけてくれているのです。
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