浅草ロック座 2023年9-10月公演「まつろわぬもの」第二期

1景はゆきなさん。舞台装置、第二期では直接的に蜘蛛の巣が出てきました。結構わかりやすくしちゃうのね、とも思いましたが、ダイナミックな装置でこれもまたいい。ゆきなさんは今回とてもキレのある群舞を披露されていてカッコいい。バックダンサー陣を引っ張る力があった。着替えのために舞台袖から姿を消す瞬間までスキがない。
ベッド着はラメで蜘蛛の巣を表現したのであろうホルターネックのドレス。手袋のあみあみ具合とか、下着(というのだろうか、アレは)でクモっぽさを表現しているのかな。髪にはクリスタルのタランチュラサイズ髪飾り。
ゆきなさんのベッドショーはとにかく流し目! 誰かを刺しているのかと思うほどに鋭い視線。全体的に切れ味鋭いベッドだった。これまでとはまた少し違う、新たなゆきなさんの魅力に触れた気がする。

2景は永澤ゆきのさん。群舞の衣装は第一期と同じようだ。最初はソロで登場、その後橋下まこさんが登場してコンビダンスに。まこさんの登場時の笑顔がとってもかわいい。まこさんの誘うような視線と、永澤さんの本当に嬉しそうな表情。この前半があるからこそ、後半がいっそう引き立つ。
永澤さんのベッドショーは、そんなまこさんを思い出しながら、思いを噛みしめながらの静かながらもあふれそうな思いがつたわってくるもの。
目をつぶりながら盆入りするのが印象的だった。ポーズ切りも丁寧でしっとり。

3景は藤川菜緒さん。第一期にもまして、女王様的なワガママ感が強まった演出。ここまで強調された結果、虫たちが出てきたときの喜びかたもそのぶん強まっていてかわいい。友坂さん、ゆきなさん、笠木さんの虫たち役もコミカル。友坂さんが虫網に捕まったときの慣れてなさそうな表情が何とも言えない。
ベッドショーでの藤川さんは小さなあおむしのぬいぐるみとともに登場。第一期のあおむしマラボーは相当うまい工夫だと思ったのですが、それを引き継がないのは潔いなあと思う。まあ群舞の小道具は共通でもベッドショーは結構公演ごとに変えてきたりするからなあ。ということであおむしが小さくなったことで色々な場所を這わせることが可能に……なるほど、それはえっちだ。ベッド着はたぶんピンクめだったと思う。髪色、口紅、ベッド着、足まわり、すべてがピンク系統でまとめられていたんじゃないかな。かわいい。
藤川さんのベッドショーは空気が変わるのが何よりもすごいと思う。3曲目の魔女っぽくもあるいじらしい感じからの、打って変わって立ち上がり曲の200%のかわいさにがっつり目を奪われる。表情だけでひとつの芸になっているのが、さすがだなあと思います。

4景は香盤表を見た時点で勝ち確の鈴木千里さんメイン景。ちなみに赤西さん→千里さんのリレーは今年2月の「FEMME FATALE」④景、マリリン・モンローモチーフ景以来のこと。前回もベッド着が2021年の「祭音」③を思い出させると書きましたが、千里さんメインなのでまさに祭音と同キャストだ。
千里さんはゆったりと踊るタイプに見えるけれど、HIP-HOPに合う躍動感をちゃんと感じるのがすごい。もつれあったり、振り払ったりする動きってこういう音楽に合うんですね。
ベッド着は、軍服のつくりは赤西さんと一緒のようでしたが、今回の千里さんは中にドレスを着用。檻の向こうの動物のように客のほうをギロリと見るワイルドさと、淡々としつつも耽美的なベッドショーが印象的でした。ここまでキザでもしっかり絵になるのは、どういうことなんだ……?

今回の公演は幕間に演目紹介がありますね。演目紹介ガチ勢としては、浅草だけ見ていてはなかなか聞くことのできないみなさんの声を聞くことができて嬉しいのです。たとえば1景のゆきなさんはアクセントの位置が正確だなー(東京弁)とか、3景の藤川菜緒さんは読みに注意を払いながらも勢いを感じるとか、4景の鈴木千里さんは声までこんな美しいのか……解釈一致すぎてむしろビビる、とか。そしてトリを務める橋下まこさんの読みはきれいな中にもしっかり者の一面が見えるような気が……どことなくする。

5景は笠木いちかさん。群舞は橋下まこさん、友坂麗さん、藤川菜緒さん、永澤ゆきのさんというすごいメンバー。曲の雰囲気を受けてか、椅子を積んで飛び降り(?)を匂わせたりする場面もあったり、少し死のにおいを感じさせる病み系群舞になってました。
笠木さんのベッド着は白×紫の振袖ドレスだったはず。出てきた瞬間思わず”顔ちいちぇー”と心の中で叫ぶ。メイクは涙袋が強調されていたような気がしたのですが、地雷系っぽさを意識したのかな。ベッドショーでは序盤は仕草ひとつひとつが愛らしく、その後4曲目でパッと活発な雰囲気に変わる。ポーズ切りはじっくりと、キレイに見せている。浅草来演は3回目ですが、”上手い”という感想がいちばんに出てきました。

6景はオトナなふたりのコンビダンス。友坂麗と鈴木千里さん。長い黒髪が特徴的な友坂さんと、金髪ショートが美しい千里さんで対をなしている。これも計算済みのキャスティングだろうか。踊りも友坂さんがキレ型、千里さんがしなやか型(と勝手に分類した)でそれぞれに違いはあるけど、演目としてはふたりが見事に調和する。
友坂さんの今回のソロシーンは般若の面を使ったものでした。身にまとった布は黒地に赤い彼岸花の柄。この柄、見たことがある……昨年10月の「夢幻 第三期」④で橋下まこさんがベッド着にしていたのとおそらく同じ布じゃないだろうか。こういう形で再び使うのにはどこまでの意味合いが込められているのだろう。
友坂さんはベッドショーの大部分で能面をつけながら、しきりに口、そして少し耳をふさぐような動きが印象的だった。なんだろう、五感と直結した悲しみを表現したりしているのだろうか。お面は当然表情が動かないから、振りだけで感情の起伏を表すのはすごく難しいのではないかと思うが、身を裂かれるような気持ちが伝わってくる。しかし、ラストシーンで面を外した友坂さんの表情は……あれはどういう気持ちだったのだろう。悲しみに沈んでいる表情ではないのがまた意味深長。余韻や観客への考える余地を与えさせる景だ。

7景、待ってました! 我らの(?)橋下まこさんです。

登場の瞬間から凛々しすぎてステージ写真の購入を即決した。感情を身体めいっぱい使って表現している。ミュージカルみたいに少し誇張しているようにも見えるけど、そんなことはどうでもよくなるくらい心を打つ群舞だ。
橋下さんのベッド着、第一期に続き今回も戦う女という感じでめっちゃカッコいい! バックダンサー含む7人から託された思いを胸に、満を持して前盆へ。移動盆の上では最後に千里さんが「がんばりましょうね!」みたいなポーズでまこさんを送り出すのがアツいぜ。
ベッドショーでは曲とのシンクロ度合いが抜群。苦難に耐える姿とか、震える拳とか、抱きしめる動作のあたたかさとか、確かに伝わってくる。何より表情にいっさいスキがない。さすが初トリ、渾身の名演で、見ているこっちも観客として全力で応えたくなる、そんな景でした。

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