浅草ロック座 10月公演「夢幻 第三期」

まずは0景で真白希実さんが登場、明るい色のウィッグでなんか海外のバレエ演目っぽさもあるような。夢幻で海外っぽい演目、ずっと不思議には思っていたのです。浅草ともあろう劇場が意図もなく0景を挟む訳がないのですよね……第一期が乃木はるかさんで新人起用だったから、顔見せ的な意味合いがあったのかもしれない。

続いて1景は花井しずくさん。5月に「DayDream」⑤景でストリップデビュー後、2回目の浅草来演。前回はしなやかに身体を使う踊り子さんというイメージがありましたが、今回は太鼓を叩く姿に力強さもあって、サマになっていてカッコいい印象。とは言っても、第二期の白鳥すわんさんに続いて身体柔らかムーヴの見せ場も継いでいて、しなやかさもアピール。
続いてベッドショー。花井さんって、切ない表情にエロみがあるじゃないですか。ベッドはそんな表情のオンパレードで思わずこっちも「正面切って見ちゃっていいのかしら……」と面映い感じになるんですよね。胸の、手の届かない奥のほうをくすぐられているような感じ。

2景は浅草連投の椿りんねさん。今回はイレギュラーもあったみたいで、4景の橋下まこさんと2人が連投という珍しい香盤になりました。前半は若紫=りんねさんのひたむきさがよく伝わってきます。桜が舞っているのを見て、自主練の達成感も高まって……という心の動きがしっかりと見える。
ベッドショーに移っていく途中、本舞台から前盆に歩いていくまでが個人的な見どころ。花道の左右の席のお客さんを見る目が、怖さやドキドキから嬉しさ、喜びに変わっていくのが本当によくわかる! お盆の上では終始ニコニコを見せてくれているりんねさんですが、フッと真顔に戻る瞬間がまた素敵なんですよね。

3景は初乗り……ではないらしい、月島花さん。ご自身がSNSで”6年ぶり名前を変えての出演”と書かれていて、おそらく6年ぶり2回目?(なんか甲子園みたい)
とはいえ、難しい景を任されたんじゃないだろうかと思ってました。2景の若紫の幼さに場数の少なさを重ねたりするのかな、などとも予想していたので。3景はゆったりとした曲に乗せた非常に難しい景に見えましたが、群舞の真白さんとのコンビワークもいい感じで、杞憂だったと気づかされました。

4景、ここも連投の橋下まこさん。ツイートしてたとおり、スポットライトで照らされるたびにまこさんの持っている鏡の面が変わってる! 美は細部に宿るというのか、まったく隙がないぜ浅草……。
第二期の白鳥すわんさんに続き、今回は花井しずくさんとのコンビダンス。まこさん花井さんふたりとも似たような振り付けのなかで、なんでこんなにもお互い別モノに見えるんだろう。まこさんはギザギザっとした感じがするけど、花井さんは苦しむ役どころながらしなやかな雰囲気が出ている。劇画で描かれたまこさんと少女マンガで描かれた花井さんみたいな、画風の全く違う作品のコラボ漫画を読んでるような気持ち。
最後までみる人はフィナーレしっかり見て!! ここでも4景のふたりが前のほうで踊るんだけど、ここではふたりの踊りは調和してるんですよ。4景とどう違うのかじっくり確かめてみて!
そして暗転幕が閉じてからのまこさんの”ひとりぼっち感”がすごい。痛々しくて本当に見ていられないくらいの迫真さ。ベッドショーではまこさんのベッド着に目が行きました。ベースは透ける黒い衣装ですが、赤いヒガンバナ(たぶん)の柄なんですよね。キレイだと思う一方で、群舞から血しぶきを連想させていて手が込んでる。まこさんは曲の緩急と振り付けの対応のさせかたも合ってる。頭を抱えて、突き上げた手の爪の先まで一瞬たりとも見逃せない。本舞台に戻っていくときも、ミラーボールを”何か”だと思って追いかけていく後ろ姿、しびれる。

ちなみに、中休憩の使用曲、ちらほら「……ムゲン♪」って言ってるように聞こえません? 「boogie」って歌詞の部分がなぜか「夢幻」に聞こえる、空耳を狙っていれたおもしろい選曲だと思っているのですが、意図合ってますよね?

5景! やはりこのメンバーだとののかさんが光源氏になるのですね! 第一期(宇野莉緒さん)、第二期(武藤つぐみさん)と完璧にやってきての第三期。プレッシャーもあったのでしょうが……ののか源氏もいい! これまででいちばんナチュラルにイケメンが出てる感じはする。見ていると、こう、エロじゃない回路からドーパミンがどっばどっば出てくる感じ、わかる? わかりますよね?(って思わず前のめりに共感を得たくなるオタク)。あと、間奏で女性陣からこんなにイジられてる光源氏もいままでいなかった。まさかの愛されキャラ系光源氏
さらに群舞終わりの着替えタイム。今回はどんな演出が……と思ったら、ののかさんでこの演出なんですか!?
過去に他の踊り子さんのバースデー企画とかでやったのかな? そういう伏線があるならまだしも、(川上奈々美さんがするならわかるが)まさかののかさんが、ねえ。
ベッドショーも観客を見つめる距離感がとても近いというか、拍手を求めたり、目でアオったりする感じも、第一期や第二期よりわれわれ下賤の身(!?)にも身近な光源氏って感じがした。
全体として見せかた自体は意外だったけど、決してカッコよさを阻害するような演出じゃなく、愛嬌を見せながらもやっぱりキレッキレのダンスなんかは有無を言わさぬイケメンしぐさだった。

6景は藤咲茉莉花さんのソロ景。5景のわちゃわちゃのあと、緩急のアクセントをしっかりつけられる茉莉花さんの静かな存在感。『源氏物語』の本文中では、田舎育ちの劣等感と、それを隠すためとも言えるやや高めなプライドとの間に揺れ動く女性という描写がされている明石の君。茉莉花さんのおだやかな笑みは、そんなに高飛車な感じはしなくとも、気品は十分に感じる。源氏たちのいる本舞台の後方に目もくれずに踊り続ける姿には、源氏との育ちの違いを自覚しての遠慮がこもっているのか、はたまたそんなひたむきさを源氏が理解してくれるのではという密かな期待も入っているのだろうか。ベッドショーで観客を見る目のイノセンスが刺さる。そんな純粋さとか計算高さとか自分の気位とか、自意識の狭間でずっと踊っているようにも見える。
あとはベッドショーの光の使いかたがいい。お盆じたいを水いろに光らせて、上のスポットライトはまだらっぽく照らして、上下で形づくる波の表現。浅草の設備があってこそという気がした。

7景はふたたび真白希実さん。演出は第二期を踏襲したものと言っていいはず。全体とおして紫色の衣装を着ていて、ただでさえミステリアスな真白さんの印象がさらに際立つ。真白さんは他の景でもすました表情でいることが多いような気がするのだけど、今回はさらに紫の衣装を着ているのがよくて、なにかこちらの真意を見透かしてきそうな目にドキッとする
ベッドショーでは、ベッド着をまとっているときの焦らしかたと、全部はだけて大胆にポーズを切るときとのギャップがいい。これもまた予測不可能なミステリアスさにつながっているのでは。

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