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ECの巨人Amazonはなぜ中国で負けたのか。

スタイラーと日本美食によるトークイベント第三弾「China Conference -検索しても出てこない、中国ユニコーン企業解説 EC編-」は、淘宝(タオバオ)やJD.com(ジンドン)、そして昨年上場した拼多多(ピンデュオデュオ)などのECプラットフォームがテーマ。2019年9月24日(火)にEDGEof 渋谷にて開催します。

当日はAmazonの中国撤退を例に、なぜ中国のEC市場で失敗したのか、そして世界で注目されるのか。さらに中国を筆頭にこれからのアジアのEC市場がどう移り変わるのかといった内容を語る予定です。本記事ではよりイベントを楽しんでいただくための事前対談をお届け。この先や詳細が気になる方はぜひイベントへお越しください!

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アマゾンはなぜ中国で負けたのか

小関:アマゾンが中国市場から撤退したのが今年7月。日本人からするとアンフェアな市場ゆえのレギュレーション上での撤退に見えるけど、実は中国のECはとても進化していてアマゾンにできないことをやっているから撤退に追い込まれたのが事実ですね。

董:アマゾンが中国に進出したのは2004年です。アマゾンは当時中国でNo1だったECの会社卓越网(Joyo.com)を買収して上陸。当時は圧倒的なシェアを誇っていて、アリババはB2Bのサービスで伸びてはいたけど、C向けの淘宝網は2003年にスタートした直後です。つまりアマゾンは強者のポジションから、撤退に追い込まれるまで中国発のECとの競争に勝てなかったんですね。

小関:その後はご存知のとおり、アマゾンのシェアが伸びず、アリババの淘宝網と天猫が伸びて市場の6割を取っています。JDが15%くらいなので、この2社で複占された市場になりました。一方、アマゾンが撤退した年のシェアは1%以下。

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小関:まず、アマゾンと中国のECの違いについてUXから話をしましょう。アマゾンは今から25年前の1994年に設立されて、10年後の2004年に中国へ進出しています。彼らは地球上で最もユーザー中心の会社と自己表現をしていて、その理由は1.プライスと2.セレクションと3.コンビニエンスを大切にしているから。これは今の人間も1万年後の人間も、いかに安い価格で、多くの品揃えから、便利に買いたいという本質的な欲求を抱えているという仮説に基づいていて、普遍的な発想を有しています。つまり、普遍的な人間の欲求に根ざしているので、地理的な拡張も必然なんですね。

しかし、中国では大苦戦します。実はUXを比べても、アマゾンと淘宝網は大きく異なるんですね。

董:そうですよね。先の話のとおり、淘宝網は強者であるアマゾンに勝つために徹底的に違いを生まないといけなかったので、いくつか大きな違いがあります。まず、最初がメッセージ機能です。つまり淘宝網上でユーザーがセラーに商品のことや発送、価格について相談ができるんですね。普通のECは問い合わせ数を減らしたい傾向がありますが、淘宝網はセラー間の競争が激しいので、コミュニケーションが増えることを良いとします。問い合わせが増えるのは良いことなので、返信スピードや質がとても高いんですね。

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小関:商慣習的にも中国で買い物するときは、会話が不可欠です。先進国と異なり、取引される物や相手に信用が最初からないので、コミュニケーションを通して情報の非対称性を埋めているんですね。実は東南アジアなども全く同じ機能が必須になっていますし、日本でもユーザーが中古品を売買するメルカリで同じ現象が観測されますね。

董:第二に重要な差別化要素も信用に関わります。つまり決済です。今ではモバイルペイメントとして日本でも有名になった支付宝(アリペイ)ですが、当初はEC上でのエスクローサービスでした。つまりバイヤーとセラーの間で取引をする際の、「お金が先なのか物が先なのか」という不安を無くしました。

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小関:1.コミュニケーションと2.ペイメント、そして最後は3.データの要素が強いかと思います。アマゾンも購入履歴や閲覧履歴から推計し、ユーザーの関連アイテムやお勧めアイテムを表示していますが、淘宝網はもっと広く深く趣味嗜好を提案してくれますよね。これは上記のデータだけではなく、コミュニケーションログや、オフラインで支付宝を使い何を買ったのか、アプリのロケーション情報から趣味嗜好を割り出しています。


信用で成り立つ経済

董:次に京東(JD)ですが一躍有名になったのは、やはり2002年から2004年にかけてSARSが大流行したことが背景にあります。人々が外出を躊躇するようになった頃に、コンピューターのパーツをネットで売り始めたことが始まりなんですね。総合モールではなく、秋葉原のパーツ屋さんがネットで売り始めたみたいな感じです。

なので、今でも中国の人にとってはJDは日用品やファッションというより家電を売っている所という印象があります。

董:対抗馬の天猫は実はその後2009年に誕生しました。アリババは6年間一般消費者も販売アカウントを作れる淘宝網をやっていて、自分が経営していたECブランドも淘宝網に出店していました。一般消費者も出店できるということは、メルカリみたいにごちゃごちゃでわかりにくく、出品アイテムのクオリティもバラバラです。なので、自分たちのようなメジャーな出店者のためにモールを立ててマーケットを整えた方が良いという理由で天猫ができました。つまり、消費者の嗜好が高度化したのが背景にあるんですね。ちなみに天猫は、アリババが初めてコマース事業でマネタイズできたサービスです。淘宝網はコマースではなく広告収入なので。

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小関:実際は全国的に使われているんでしょうが、都市に住んでいる人って、JDで買っている印象ありますね。コミュニケーションを取る時間がなかったり、そもそもJDで売っているなら本物だろうという信頼もあるからでしょうか。

董:天猫、京東といったとモールと、淘宝網の違いは信用力です。同じ機種の冷蔵庫でも、淘宝網はセラーによってかなりピンキリです。楽天のように、どこから買うのか選ぶのが大変です。でも、JDはアマゾンのようにアイテムごとにページが整理されているので、一つしか出てこない。時間のない消費者にとっては簡単に選べます。しかも中国はオフラインの量販店のサービスが悪く、価格もオンラインより高いんです。つまり、日本と逆なんです。日本だとオフラインの量販店が成熟してからオンラインのモールがでてきたので逆転しているんですね。


低所得層を狙う新興勢力「拼多多」

小関:拼多多は創業が2015年、上場が2018年のスピード成長企業です。時価総額は4兆円近くあり、JDに迫っています。ソーシャルコマースと言われるとともに、上場後は品質が悪いという評判もありますが、リアルなユーザー像はどう思いますか?

董:中国は大都市から地方まで都市ランク付けされているのですが、いわるゆ地方都市の3級、4級都市の、40〜50代などがユーザーと言われています。要は他のECとは違い最初から下の市場を狙っています。今までの流れは、淘宝網があり、京東、天猫とむしろ所得の拡大にあわせて発展してきました。ただ、中国は広大なので、ちょうど他のプラットフォームが上に進むにつれ、下に空白が出てきたんです。

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最初の主力商品は野菜でした。なぜかというと、これも同じ信用の話で、3級、4級都市には淘宝網も使いこなしていない層が多くいて、周りの個人商店で野菜を買っています。さらに買うのは主婦層で、Wechatで「あそこの野菜が良かった」とか話してるんです。拼多多はみんなで信用できる商品を団体で買うというのが始まりでした。そこで一度信頼を獲得すると長く買ってくれるので、顧客獲得コストが安いんです。京東だと顧客獲得コストとして1700元とかだけど、拼多多は3〜7元で済むんです。

小関:北京と上海の経済圏と他都市だと全く生活水準が違うのも影響していますよね。むしろそちらの方が人口が大きいので、拼多多はとりこぼされた下の層を拾っている。淘宝網でさえ届いていない人がまだまだいるので、拼多多のような企業がさらに出てくる可能性ってありますよね。淘宝、天猫、京東、拼多多の次は?というところをトークセッションでは語っていきたいと思います。


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トークイベントでは淘宝、JD.com、拼多多といった中国EC企業の例から、日本が進むべきEC、小売の未来についても語る予定。先着40名なのでお申し込みはお早めに!

===イベント概要===

China Conference
-検索しても出てこない、中国ユニコーン企業解説 EC編-
日時:2019年9月24日(火) 18:30〜21:00
定員:先着40名様
場所:EDGEof 渋谷
〒150-0041 東京都渋谷区神南1-11-3
https://edgeof.co/

▼イベント申込フォーム
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▼メディア関係者の方はこちら
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===タイムテーブル===

・18:30〜:受付開始(当日は名刺を2枚ご持参ください)
・19:00〜20:00:トークセッション
・20:00〜20:15:質疑応答
・20:15〜21:00:懇親会(軽食あり)

===登壇者プロフィール===

董 路 (日本美食株式会社 CEO)
1972年生まれ、中国・北京出身。20歳で日本に留学し、1994年に埼玉大学経済学部に入学。同大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。その後、スタンフォード大学にてMBAを取得し、2004年に中国に帰国。
外資系コンサル、ベンチャーキャピタルを経て、2社のベンチャーを立ち上げる。2014年に事業を売却し、日本に拠点を移す。2015年12月、日本美食株式会社を設立し、スマホ決済サービス及びインバウンド集客サービスを展開中。
日本美食 https://www.japanfoodie.jp/

小関 翼(スタイラー株式会社 代表取締役)
Amazonにて事業開発を担当。ライフスタイル分野にマーケットデザインの問題が大きいこと に着目し、2015年3月にスタイラー株式会社を設立する。 未来の購買体験をアジアから作っていくことを目指す。Fintech、FashionTechを国内外に紹介。東京大学大学院修了。日英のメガバンクに勤務経験あり。
スタイラー株式会社 https://styler.link/
FACY https://facy.jp/

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