風を見つめて
憂鬱の種はそこかしこに散らばっている。
踏まないように踏み出した一歩のはずが、そこにもまた別の種があって、足に憂鬱が絡まりつく。
今日はそんな日だった。
詳しくは記述しないが、病院のお役所仕事に振り回されて、一度取り下げた有給の日に、結局1時間だけ仕事をして早退することになった。
年に一度の癌の検診だから無下にする訳にもいかない。
時間も迫っているから急いで神戸に向かう。
ただ、今日はとことんついてない日だった。
明石海峡大橋の高速道路を走っていると、パトランプをつけた車がふと前に来た。
パトカーに追走するようにという表示。
ああ、やってしまった。
と思った。
気をつけてはいたつもりだったが、覆面パトカーにしてやられた。
脇に停車。
「急いでたの?」と、おそらくお決まりのセリフを言われる。
119キロで速度違反。
3点の減点と、3万5千円の罰金とのこと。
もううんざりだった。
でも真正面から受け止めて、感情を動かすと、鬱が顔を出すのがなんとなくわかる。
本能的に、感情に蓋をして事務処理を済ませた。
累積が5点になって免停すれすれ。
本当は速度ももっと出してたから、これで済んだのは不幸中の幸いだったと言えるかもしれない。
遅れて到着した病院にも、憂鬱の種は撒かれていた。
CTの検査をするはずが、造影剤を入れる関係で採血の結果が出ないとできないらしい。
結果が出るまで、1時間待ってくださいと事務的に言われる。
人の時間を何だと思っているのか。
本を読んだりして有意義に過ごす気にもならないから、ただスマホを眺めて時間が過ぎるのを待った。
いつの間にか慣れてしまったCTの検査を受けて帰路に着く。
結果は1週間後に先生が電話で知らせてくれる。
再発していないことを祈る。
帰り道はただ寂しかった。
こういう日に、傍にいてくれる人がいてくれたらと思う。
憂鬱が足に絡みつく時に、手を貸してくれる人がいてくれたらと思う。
でも現実は、日々の出来事を送り合う相手すらいない。
不意に聴いたコブクロの歌が優しくて、少しだけ救われた。
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