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「中国では50歳で引退」は本当か?

小保下グミさんのマガジンを購読しています。

小保下さんのマガジンには、自分でビジネスをやって生きてきた貴重な経験から得られた示唆がこれでもかと詰め込まれています。僕、仮に日本に戻った場合には再就職は厳しいと思っているので、自分で何か始める時にはこのマガジンを大いに参考にしようと思っています。

それはさておき、上の記事にはお知り合いの自営業者が事業を引退した例として、50代でみずから飲食店をたたんでしまったという中国人のご夫婦が登場します。その旦那さんは、「中国では50歳になったら仕事を引退するんだ」と言っていたそうです。

小保下さんはそれを「本当かどうかわからない」と評していました。これは僕が書くしかないでしょう、という勝手な責任感を発揮して、中国における定年のことや「引退」ということに対する人々の考え方について、知りうる限り書いてみたいと思います。

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「中国では50歳で引退」というのは、結構な部分で本当です。

まず、法的な部分から見てみましょう。いろいろな例外規定はあるようですが、中国の法律で定められた定年年齢は基本的に男性が60歳、女性は役職者で55歳、一般社員で50歳となっています。

男女や職位によって違うのもちょっとびっくりしますが、いずれにせよ日本に比べればかなり若いです。

で、もちろん人にもよりますが、こうした法定の定年年齢ともあまり関係なく、中国の人々は歳をとってからも長く働くことをあまりよしとせず、早く引退したいと考えている人が多いように見えます。

中国では、「額に汗水して働く」ことの価値があまり高くありません。いかに自分で手を動かして働くことから離れ、悠々自適の生活に入るかを重視しています。だからみんな「老板lao ban」(社長、経営者)になりたがるし、投資(あるいは投機)を一生懸命勉強します。

その中で、少し極端な言い方かもしれませんが、「歳をとってもずっと(特に人に使われる労働者として)働いているのは恥ずかしいこと」というような観念があり、結果として人々が「生涯現役」のような道を選びたがりません。実際に、上で書いた定年年齢を迎える前に引退してしまう人も少なくありません。

また、「年寄りは孫の面倒を見るもの」という考えの人も多いのではないかと思います。

これまでの中国では、現役世代が夫婦ともに外に出て働き、子どもの面倒は年寄りが見るというのが一般的なロールモデルでした。これも一種の投資として、自分で大した給料にならない仕事をするぐらいなら、孫世代の面倒を見つつ、子世代にバリバリ働いてもらってその収入をブーストする役目をしたほうが合理的だ、という考えがそこにはあるように思います。

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身近な例でいうと、僕の嫁(中国人)の両親、つまり僕から見た義両親も定年年齢を待たず、早期リタイアしました。

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