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中国の怪しいレジェンド日本人()を振り返る——①メイソウ・三宅順也編

中国において、広告などで日本的な要素の演出のために怪しい日本人(本当に日本人かどうかは場合による)が用いられることがあります。皆様をそんなディープな怪しいレジェンド日本人()の世界にお連れしたく、「中国の怪しいレジェンド日本人()たちを振り返るシリーズ」を開始することにいたしました。

記念すべき第一回目は、中国の怪しいレジェンド日本人()として真っ先にその名が挙げられる、三宅順也氏と雑貨店チェーン・メイソウについてご紹介いたします。

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「メイソウ」とは中国で展開している雑貨店チェーンで、大きめのモールなどには必ずと言っていいほど店舗が入っている、巨大チェーンと言っていい規模のものです。ロゴは明らかにユニクロをパク……強く意識したものとなっており、商品のラインナップおよびデザインはダイソー・無印良品のような感じ。日用雑貨や化粧品などがメインに取り扱われています。高品質な雑貨がお手頃な値段で手に入る店として、広く認知されています。

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このメイソウですが、かつては「日本品質」「日本製造」を強くアピールしていました。実際にはその製造はほとんど中国国内で行われており、商品パッケージや説明書にはいわゆる怪レい日本語が踊っていたことから、一部の好事家たちの大きな注目を集めていました。

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そんなメイソウが「日本品質」のアピールに用いていた人物こそ、我らが三宅順也氏なのです。

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(miniso.cnよりスクリーンショット。左側が三宅氏とされる)

メイソウの運営会社である名創優品の共同創業者の一人とされる三宅順也氏は、グッドライフグッズトレンドのトップランナー(?)としてのチーフプロダクトデザイナーを務めているとされる人物です。日本の有名デザイナーがチーフなのであれば、そりゃあ日本品質も真実です。そうに決まっています。

かつてメイソウの店内には三宅氏の写真が必ず飾られており、そのニヒルな微笑みをお客様に投げかけていました。

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minso.cnより。「順」の字がなぜかカギカッコで括られている)

日本でのデザイナーとしての情報や実績をいくら調べても出てこず、実像がおぼろげな三宅順也氏ですが、どうやら実在はしているようで、たびたび表舞台でもその姿が確認されています。

公式サイトから追える最新の情報としては、2019年1月9日に広州で開かれた名創優品とエルサルバドルとの戦略的パートナーシップ協定の調印式に姿を見せていたことが確認できました。さすがグローバルに活躍するグッドライフグッズトレンドのトップランナーです。提携に大きな期待を寄せているとのことです。

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(miniso.cnより。大舞台でもニヒルな笑みを崩さない三宅氏)

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さて、先ほどから「かつては日本品質をアピールしていた」「かつては店内に三宅氏の写真があった」などと過去形を多用していますが、これには理由があります。

実はこれらの「日本アピール」は近年、メイソウがその規模を大きくしていくにつれて、どんどん見られなくなってきているのです。会社が成長することに伴い、そのパクリ商法的な悪辣さを表に出すわけにはいかなくなってきた、ということなのでしょうか。もしくは、もう日本ブランドに意味はない、という判断が働いているのかもしれません。

パッケージの日本語はどんどん整ったマトモなものになり、店内に必ずあった三宅順也氏の写真もいつしか見られなくなってしまいました。今ではマーベルやサンリオ、ポケモンなどのキャラクターグッズ(正規にライセンスを付与されたもの)が置かれるようになっています。正直言って、一部の好事家(変態)からすれば全くつまらない普通の店に成り下がってしまいました(ひどい言いがかり)。

さらに去年、多くの好事家(変態)たちに衝撃を与えたのが、名創優品が時価総額約6,300億円で米ニューヨーク証券取引所に上場したというニュースです。「日本で上場するんじゃないのかよ」というツッコミをよそに、破竹の勢いで成長しているといえます。

実際、先にあげたエルサルバドルとの戦略的パートナーシップ協定などからもわかるように、メイソウは中国に限らず今や全世界的に店舗を展開をしています。すでに80の国と地域に約4,300店舗が存在しているとのことです。虚栄のブランディングから始まった「日本品質の雑貨店」は、すでにその日本的な要素を切り捨て、世界に大きく羽ばたいています。

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(フォロワーさんから寄せられた、グローバル展開するメイソウの数々。
上はウイグル・トルファン、下はウラジオストクの店舗)

味のある日本(日本とは言ってない)ブランドの灯が小さくなっていくのを見るのは好事家(変態)として寂しい限りです。そのうち、表舞台に立つ三宅順也氏も見られなくなってしまうのでしょうか。そうならないためにも、我々日本人はこれからも日本が持つブランド力が落ちていかないように、努めていきたいものです。

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怪しい日本製品のレジェンド日本人()を振り返るシリーズ、初回はいかがでしたでしょうか。皆様に怪しい日本製品のレジェンド日本人()の魅力が少しでも伝わったなら幸いです。

次回は「便器勢の衝撃——津上スマート便器をめぐる日本の職人達()編」を予定しています。お楽しみに。

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