システムアーキテクト ユーザビリティを重視したUI設計【論文の書き方】(令和1年秋問1)
2023/3/15 誤字の対応と表現を微修正しました
2023/7/19 メンバーシップ開設に伴う修正
本記事ではシステムアーキテクトの午後II(論文)対策として、令和1年問1で出題された過去問を分析します。
実際に論文を書く上での考え方を整理し論文骨子を設計するところまでやっていきます。
※本記事は、メインである論文の書き方については無料で読めます。論文本文のみ有料部分なので、読みたい方は記事の購入またはメンバーシップの加入をご検討ください。
問題(令和1年問1)
過去問は試験センターから引用しています。
表題:『ユーザビリティを重視したユーザインタフェースの設計ついて』
設問文は以下の通り。
何が問われているかを把握する
本問で問われているのは「ユーザビリティ」すなわち「使用性」です。「使用性」とはJIS X 25010で定められる8つの品質特性の一つです。
また、問題文の冒頭にはスマートフォンやタブレットなど多様なデバイスで情報システムが利用されていることが述べられているため、パソコンや汎用機などの情報端末だけではなく様々な利用者が存在することを念頭に論述しなければならないでしょう。
設問アでは対象業務、提供機能、想定利用者及び利用シーンが、設問イではUIの設計が、設問ウでは設計プロセスの工夫が問われています。
出題要旨と採点講評からの分析
試験センターから公表されている出題要旨と採点講評を確認して出題の意図と論述のNG例を把握します。
出題要旨
採点講評
出題要旨の2段落目に、
「どのような利用者が」
「どのようにUIを利用するか」
「ユーザビリティを高めるためにUI設計をするか」
という言葉が並んでいますが、設問イで問われている部分です。
また
「どのような工夫をしたか」
という言葉もありますが、設問ウで問われている部分となります。
採点講評では3文目にはNG例として
利用者の特性や利用シーンが不明瞭
ユーザビリティとの関係が薄い
機能の説明に終始している
が挙げられています。
「利用シーン」「ユーザビリティ」「UI設計」「機能」などこれらのキーワードを正確に使うことが重要で、混同してはいけないということがわかります。
特に利用シーンは設問アの後半で問われています。設問アで利用シーンを、設問イでユーザビリティとUI設計を正しく関連付けて論述しきる力が求められています。
論文を設計する
問われていることの概略を把握したら自身の経験や用意してきた論文パーツに当てはめてどのように論述を展開するかを設計します。
設問アの設計
設問アは対象業務、提供機能、利用者の特性及び利用シーンについて聞かれています。
対象業務、提供機能はオーソドックスではありますが、出題要旨にもある通り「UIの良しあしが競争力の源泉となる」とあるので、多様な利用者を想定しなければならない機能・業務を選んで論述しましょう。
利用者の特性及び利用シーンは設問イに続く重要な部分です。どんなUI設計を、どんなユーザビリティを重視して、そのためにどんな利用シーンを想定したかというように逆算して論文の骨組みを作りましょう。
1-1. 対象業務
出題の意図を考えると多様な使用性を考慮しなければならないので、特定の利用者しか想定しなくてもよいような基幹システムの一機能などでは論述しづらくなるでしょう。
私の場合は不動産賃貸業における拡張現実(AR)内覧システムを想定し、内覧の支援業務としました。
利用者は一般消費者とすると、問題の主旨に合いやすくなると思います。
1-2. 提供機能
問題文で主に問われているのは「使用性」に関する部分なので、1-2.ではそれ以外のシステム・機能全体について概要を触れるのが良いでしょう。
「使用性」について論述するためにも、何のシステムのどの機能なのかというところを書かないことには始まりません。
私の場合はAR物件内覧システムとし、利用者は専用アプリをインストールしてスマートフォンをかざすと自宅にいながらにして物件の内覧を体感できるという機能としました。
1-3. 想定した利用者の特性及び利用シーン
採点講評にも注意されていましたが、設問イに続く具体的な利用シーンを記載しなければならない箇所です。
ユーザビリティやUI設計とは異なることに注意が必要です。
具体的な利用者は、問題文には箇条書きで次のように書かれています。
操作に慣れていない利用者のために、~~
操作に精通した利用者のために、~~
また具体的な利用シーンはそれぞれ
操作の全体が分からなくなってしまった時
利用頻度の高い機能を素早く実行したい時
と考えられます。
私の場合は、
アプリに慣れていない利用者がアプリをインストールするシーン
ARに慣れていない利用者がスマートフォンをかざして物件を内覧するシーン
細かい文字が読みづらい利用者がアプリを操作するシーン
としました。設問イではユーザビリティとUI設計を述べることになるので、ネタ振りの意味が大きいです。
設問イの設計
設問イは重視するユーザビリティと設計したUIについて問われています。
設問アの1-3.で書いた想定利用者と利用シーンをもとに論述を進める必要があります。
ユーザビリティとは、問題文に次のように書かれています。
前半に重視するユーザビリティを定義し、その上で後半に設計内容を論述します。
なぜその設計を採用したかの根拠にユーザビリティを持ってくるように整理して論述しましょう。
2-1. 重視したユーザビリティ
問題文の箇条書きには2つの例が文章として書かれていますが、文章の最後にそれぞれ
~~有効性を高める
~~効率を高める
とあります。
問題文上の定義にはユーザビリティとは有効性、効率、及び満足度の度合いとあります。
2-2.ではUIの設計を述べることになるので、その設計となった理由としてどのユーザビリティを重視したのかが分かるようにしておきましょう。
私の場合は、
利用者に安心感を与え、有効性を高める
利用者の操作をサポートし、利用効率を高める
利用者に親和性のある画面構成とし、利用満足度を高める
としました。
設問アの1-3.でも3つ箇条書きであげていますが、2-2.のUI設計と同じように一気通貫で対応させて論文を設計していることに注目してください。
2-2. 設計したUI
問題文においては「利用者がストレスを感じないUI」が優れたUIだと説明しています。
また問題文の箇条書きの2点に対応しているUIは、
操作の全体が分かるナビゲーション機能
利用頻度の高い機能に用意したショートカット
ということになり、なぜその機能を実装したかと言えば、重視するユーザビリティとしてそれぞれ
有効性を高めるため
効率を高めるため
ということになります。
私の場合は
アプリのインストール手順をナビゲートする動画を利用者の導線に設置
アプリを起動した画面にAR物件内覧を音声ナビゲートする仕組みを導入
アプリ上の機能をアイコン化
としました。
なぜそうしたか、というとそれぞれ
心理的な障壁を下げ、アプリの有効性を高められると考えたため
スムーズにARを使いこなし、アプリの利用効率を高められると考えたため
親和性のある画面構成となり、利用満足度を高められると考えたため
を理由としており、重視するユーザビリティである「有効性」「効率」「満足度」を向上させるためです。
設問ウの設計
設問ウは設計プロセスの工夫が問われています。
問題文には、「ユーザビリティを高めるために想定した利用者に近い特性を持った協力者に操作を体感してもらい仮説検証を繰り返しながら」という文章があり、ユーザビリティ向上のためには想定利用者に近い協力者が重要であることが分かります。
設問ウの書き方としては比較的自由度が高いと思いますが、書きやすいのは、「課題ー対策」型で、3-1.で協力者が課題を発見し、3-2.でUI設計として対応策をとる、という展開だとまとまりやすいと思います。
3-1. 協力者からのコメント
問題文からは特に例示は無いですが、検証段階で協力者に機能を利用してもらい、フィードバックをもらうという構成が書きやすいでしょう。
私の場合は、協力者として自社の若手・新人を指名した、としました。
理由は、想定利用者はアプリやARに慣れていないので、経験の浅い若手・新人が想定にマッチするためです。
得られたコメントとして、
音声ナビゲータの発話を聞き漏らしてしまうと再確認ができない
AR物件内覧の画像が暗くて見えづらいものがある
としました。
次の節で対応策を説明します。
3-2. 対策
前節を受けて、以下の対策をしたと述べました。
音声と同時に文字によるナビゲートを表示する
AR物件内覧用の画像データの収集方法を標準化する
なぜその対策で解決できるとしたかは、ユーザビリティ(有効性・効率・満足度)を高められると考えた、という理由とすると問題のテーマにも沿うので加点されやすいと思います。
論文骨子
以上を踏まえ、論文骨子は次のようになりました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事ではシステムアーキテクトの午後II(論文)対策として、令和1年問1で出題された論文の書き方を紹介しました。
ユーザビリティ/UI設計が出題のメインなので、設問ア~設問イの論文の骨格作りが合否を左右する問題だったように思います。
また、他の区分・過去問の【論文の書き方】の記事については以下リンクを参照ください。
論文の書き方 カテゴリーの記事一覧 - スタディルーム by rolerole
今後も、【論文の書き方】記事を充実して参ります。ではそれまで。
論文全文
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■設問ア
1.対象業務、提供機能、想定利用者及び利用シーン
1-1.対象業務
対象の業務は不動産賃貸業における入居希望者に対す
る物件内覧の支援業務である。入居希望者は物件を選定
するにあたり、営業担当者が同行して物件の内覧を支援
するが、感染症の拡大により人同士の接触を減らして内
覧をオンラインで効率良く済ませるニーズが高まってい
た。そこで入居希望者のスマートフォンを利用した拡張
現実(AR)物件内覧システムを構築することとなった。
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