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祝!「自分のちょっとした一言で、誰かの背中を押す」と思う学生が88%増! 2019年度の「社会創造演習」を振り返る④

2019年度の「社会創造演習」をアンケートで振り返る。第3回〈本来の自分〉編につづいて今回は〈リソース〉編を分析していきます。

※メイン写真は、言葉の写真集をつくるプロジェクト「It's a small word」より


〈目次〉

第1回
そもそも「社会創造演習」って?/例えばこんなマイプロジェクト7選!

第2回
〈ソーシャルデザインに必要な力〉を測る32の指標/アンケート結果(全体編)/2020年度の32の指標

第3回
「〈本来の自分〉として一念発起する力」とは/〈本来の自分〉編のネタ元/〈本来の自分〉編のアンケート結果

第4回
「秘められた〈リソース〉に光を当てる力」とは/〈リソース〉編のネタ元/〈リソース〉編のアンケート結果

第5回
「日々の煩悩を〈ほしい未来〉に転じる力」とは/〈ほしい未来〉編のネタ元/〈ほしい未来〉編のアンケート結果

第6回
「必要な〈デザイン〉を自在に実現する力」とは/〈デザイン〉編のネタ元/〈デザイン〉編のアンケート結果

第7回(※近日公開!)
総まとめ


「秘められた〈リソース〉に光を当てる力」とは

〈ソーシャルデザインに必要な力〉のふたつめが、秘められた〈リソース〉に光を当てる力です。「何もない」と思われる状況にあっても「必要な〈リソース〉は既にある」という視点でその場のポテンシャルを最大限に活かしていく力ともいえます。

ソーシャルデザインを始める最初の段階から、お金や人手といったリソースが潤沢にあるとは限りません。そこで「既に必要なものはそろっている」あるいは「誰でも知恵やスキルを秘めていて、それを引き出すことができる」といった視点を持つことが大切になるのです。


〈リソース〉編、8つの指標

詳しい分析に入るために、結果の全体像と、〈リソース〉についてのマインドセット、スキルセットを測るための指標をご紹介しておきます。


マインドセット編


スキルセット編


まず「どれをいかして、ソーシャルデザインするのか?」という大きな問いを、「何が手元にある?」「何を見出す?」「何を叶える?」「何を祝う?」という4つの切り口に分解します。(どうしてこの4つなのか気になった方は、関連記事「菩薩薩たちからの〈16の問い〉」へ!)

そして、それぞれの問いについてマインドセットとスキルセット、2種類の指標を考えます。


【問い⑤】何が手元にある?

M5. 小さな一歩を踏み出すために必要なものは、身近なところに揃っている
S5. 考え方の違う相手の話でも、耳を傾けることができる

これらの指標は「リソースフルネス」という考え方などからヒントを得ました。その入門書にあたる『ストレッチ』という本には、「いつも足りない」とリソースを追い求める人を「チェイサー」、その逆にすでにあるリソースをうまく使う人を「ストレッチャー」という2種類に分け、少ないリソースでも成果を出すためのアプローチを解説してくれています。M5とS5にやや飛躍が会ったので、2020verでは「S5. ないものねだりをせずに、既にあるものをいかして行動を始めることができる」に変更する予定です。


【問い⑥】何を見出す?

M6. 本人は気づいていないよいところを誰でも持っている
S6. 本人は気づいていないよいところを、明確にフィードバックすることができる

これらの指標は強みにフォーカスする「アプリシエイティブ・インクワイアリー」という考え方からヒントを得ました。うまくいかないところを改善するのではなく、すでにできていることに注目して質問することで、これまで見えていなかった可能性が引き出すことができます。2020verでは「S6.  本人は気づいていないよいところを見つけ出し、伝えることができる」に変更予定です。


【問い⑦】何を叶える?

M7. 自分のちょっとした一言で、誰かの背中を押すことがある
S7. 仲間が困っているときに、率先してサポートすることができる

これらの指標は「ギフト・エコノミー」という考え方をヒントにしました。逆説的ではありますが、先に「こういうのに困っているんだけど...」というニーズが明らかになることによって、「それならこういうことができるよ」というギフトが引き出されていくのです。


【問い⑧】何を祝う?

M8. 自分のちょっとした一言で、誰かの背中を押すことがある
S8. 仲間が何かを達成したときに、心から祝福することができる

これらの指標は「Management 3.0」という考え方をヒントにしました。前向きなフィードバックをしたり、お互いの達成したことを祝福することで、コミュニティとしての学びが深まり、結果的にコミュニティのリソースも増えていくのです。ただ、ここではM8<S8という逆転現象が起こってしまったので、2020verでは、「自分のちょっとした一言で、誰かの背中を押すことがある」を「M7」とし、「M8. 仲間が何かを達成したときに、祝福することは大切である」、「S8. 仲間が何かを達成したときに、よかったところをフィードバックすることができる」と変更する予定です。


〈リソース〉編のアンケート結果は?

それでは改めて、アンケート結果をみていきましょう。


【問い⑤】何が手元にある?

こちらは最初からスキルセットのスコアが高くて驚きました。2018年度ではそこまでではなかったので、これは2019年度ならではの前向きな雰囲気といえるかもしれません。さらに「M5. 小さな一歩を踏み出すために必要なものは、身近なところに揃っている」で明確に「思う」と回答した学生が、期末で5割以上となったのは手応え十分といえそうです。


【問い⑥】何を見出す?

こちらは特にマインドセットとスキルセットのギャップが大きい指標でした。それはマインドセットがもともと高かったことも要因ですが、ギャップは大きいままですが、「M6. 本人は気づいていないよいところを誰でも持っている」と「思う」「どちらかというと思う」が10割!となったのはとても嬉しかったです。また、「S6. 本人は気づいていないよいところを、明確にフィードバックすることができる」の「思う」「どちらかというと思う」が期末で7割を超えたので、他者へのフィードバックについて苦手意識はなくなってきたといえそうです。


【問い⑦】何を叶える?

こちらは「S7. 仲間が困っているときに、率先してサポートすることができる」で顕著な伸びを見せていました。自分のプロジェクトを実現するには、仲間のサポートが必要で、その経験から仲間のプロジェクトの実現にもしっかりと協力する、という好循環が生まれてきたように思います。「M7. 仲間のプロジェクトを応援することに喜びを感じる」で7割の学生が明確に「思う」と回答してくれたのもその証左といえそうです。


【問い⑧】何を祝う?

こちらは唯一、マインドセットとスキルセットが逆転してしまった指標となりました。そこで先程書いたとおり、2020verでは質問を入れ替えたり、微調整したいと思っています。とはいえ「M8. 自分のちょっとした一言で、誰かの背中を押すことがある」に半信半疑だった学生たちでしたが、自分も背中を押してもらった経験も踏まえて、最終的に8割以上が「思う」の方向に傾いたのは大きな成果といえそうです。


ということで、〈リソース〉編をまとめると、

・後半の自分のプロジェクトを実行する際のサポートされた経験が、他者への信頼につながっている

・〈本来の自分〉編、〈ほしい未来〉編、〈デザイン〉編と比べて、スキルセットのスコアが顕著に高かったので、指標の調整が必要

といったところでしょうか。

来年に向けた改善点としては、「何を見出す?」「何を叶える?」「何を祝う?」はそれなりに手応えがあったので、導入となる「何が手元にある?」のワークを洗練させていきたいと思います。

以上、〈リソース〉編のアンケート分析でした。次回は〈ほしい未来〉編を振り返ります。

第5回につづく〉

はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎