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祝! 自分のモヤモヤと社会問題との共通点に気づいた学生が130%増! 2019年度の「社会創造演習」を振り返る⑤

2019年度の「社会創造演習」をアンケートで振り返る。第4回〈リソース〉編につづいて今回は〈ほしい未来〉編を分析していきます。

※メイン写真は、大学キャンパス内でできること、できないことのギリギリを探るプロジェクト「FREEDOMCAMP」より


〈目次〉

第1回
そもそも「社会創造演習」って?/例えばこんなマイプロジェクト7選!

第2回
〈ソーシャルデザインに必要な力〉を測る32の指標/アンケート結果(全体編)/2020年度の32の指標

第3回
「〈本来の自分〉として一念発起する力」とは/〈本来の自分〉編のネタ元/〈本来の自分〉編のアンケート結果

第4回
「秘められた〈リソース〉に光を当てる力」とは/〈リソース〉編のネタ元/〈リソース〉編のアンケート結果

第5回
「日々の煩悩を〈ほしい未来〉に転じる力」とは/〈ほしい未来〉編のネタ元/〈ほしい未来〉編のアンケート結果

第6回
「必要な〈デザイン〉を自在に実現する力」とは/〈デザイン〉編のネタ元/〈デザイン〉編のアンケート結果

第7回(※近日公開!)
総まとめ


「日々の煩悩を〈ほしい未来〉に転じる力」とは

〈ソーシャルデザインに必要な力〉の3つめが、日々の煩悩を〈ほしい未来〉に転じる力です。欲望や嫉妬といったモヤモヤ(煩悩)を受け入れ、それらをさらに深めて〈ほしい未来〉というビジョンを描く力ともいえます。

ソーシャルデザインは多くの場合、「どうしてこうなっちゃったんだろう?」「もっとこうだったらいいのに!」といったちょっとした違和感から始まります。そうしたモヤモヤに囚われてしまったり、無理に蓋をしたりするのではなく、社会をつくるためのエネルギーとして大きく育てることが大切になるのです。


〈ほしい未来〉編、8つの指標

詳しい分析に入るために、結果の全体像と、〈ほしい未来〉についてのマインドセット、スキルセットを測るための指標をご紹介しておきます。


マインドセット編


スキルセット編


まず「どこに向かって、ソーシャルデザインするのか?」という大きな問いを、「何にモヤモヤしている?」「何を手放す?」「何を目指す?」「何を願う?」という4つの切り口に分解します。(どうしてこの4つなのか気になった方は、関連記事「菩薩薩たちからの〈16の問い〉」へ!)

そして、それぞれの問いについてマインドセットとスキルセット、2種類の指標を考えます。


【問い⑨】何にモヤモヤしている?

M9. イライラや違和感、焦りといったモヤモヤにこそ、次に進むためのヒントがある
S9.何にモヤモヤしているかを整理し、分析することができる

これらの指標は「システム思考」という考え方からヒントを得ました。ひとつひとつのモヤモヤに振り回されるのではなく、いったん落ち着いて要因をリストアップしたり、図解で整理したりすることで、根本的な問題がみえてくるのです。ちなみに2020verでは、この指標をM10およびS10としました。


【問い⑩】何を手放す?

M10. 自分と同じモヤモヤを持っている人は、多かれ少なかれいる
S10. 自分のモヤモヤとさまざまな社会問題との共通点に気づくことができる

これらの指標は「コンパッション」という考え方からヒントを得ました。ひとりひとり異なるようにみえるモヤモヤも、実は大きな社会システムの一部であり、同じようなモヤモヤを持っている人はたくさんいます。つまり、自分自身のための行動は、そのまま"もうひとりのわたし"のための行動かもしれないのです。ちなみに2020verでは、この指標をM11およびS11としました。


【問い⑪】何を目指す?

M11. 時間が経つのも忘れてしまうくらい、情熱を持って取り組みたいテーマがある
S11. 自分のモヤモヤを起点に、行動を始めることができる

こちらの指標は2020verでは〈本来の自分〉編に統合することにしました。その代わりに、「アクティブ・ホープ」という考え方をヒントに、「M10. 怒り、不安、悲しみといった感情を持つことは健全なことである」および「S10. 何に怒り、不安、悲しみといった感情をしっかり受け止めることができる」という指標を用意し、まずは今モヤモヤしていることに気づき、受け止める力にフォーカスしたいと思っています。


【問い⑫】何を願う?

M12. きちんとまとまっていなくても、自分の考えを誰かと共有したほうがいい
S12. 自分の考えを人前で発表することができる

こちらの指標は「ティール思考」の「存在目的(evolutionary purpose)」という考え方をヒントとしました。〈ほしい未来〉や「やってみたいこと」を言葉にする力にするステップです。2020verでは「自分の考え」とざっくりしていたところを敢えて狭めて、「自分が実現したいこと」にフォーカスしようと思っています。


〈ほしい未来〉編のアンケート結果は?

それでは改めて、アンケート結果をみていきましょう。


【問い⑨】何にモヤモヤしている?

こちらはマインドセットとスキルセットの差がもっとも小さい指標となりました。マインドセットのスコアが予想以上に高く、このあたりも2019年度ならではの前向きな雰囲気といえるかもしれません。


【問い⑩】何を手放す?

こちらもマインドセットのスコアの高さに驚きつつ、マインドセットとスキルセットに大きなギャップが見られた指標でもありました。最終的に「S10. 自分のモヤモヤとさまざまな社会問題との共通点に気づくことができる」に「思う」「どちらかというと思う」に回答した学生が130%増、8割超えとなり、マイプロジェクトが社会に視点を向けるきっかけになるという確信を得ることができました。


【問い⑪】何を目指す?

「M11. 時間が経つのも忘れてしまうくらい、情熱を持って取り組みたいテーマがある」は、先程も書いたとおり〈本来の自分〉編の指標でしたが、半数が明確に「思う」と答えてくれたのは予想外の手応えでした。また、「S11. 自分のモヤモヤを起点に、行動を始めることができる」も7割を超えたのもマイプロジェクトのひとつの成果といえるでしょう。


【問い⑫】何を願う?

こちらは例年スキルセットが低く出やすい指標でしたが、最終的に「S12. 自分の考えを人前で発表することができる」が7割を超え、ひとまず発表してみることで苦手意識を払拭するきっかけにはなったと思います。また「M12. きちんとまとまっていなくても、自分の考えを誰かと共有したほうがいい」も明確に「思う」が5割を超えたのは、相談しやすい安心できる雰囲気があったことを象徴しているかもしれません。


ということで、〈ほしい未来〉編をまとめると、

・マイプロジェクトを実行したり、サポートすることで、他者のモヤモヤとの共通点に気づく

・発表を経験することで、自分の考えを共有するハードルは下がる

・〈本来の自分〉との線引が不明瞭だったので指標の調整が必要

といったところでしょうか。

来年に向けた改善点としては、〈ほしい未来〉を言語化するワークを洗練させていきたいと思います。

以上、〈ほしい未来〉編のアンケート分析でした。次回は〈デザイン〉編を振り返ります。

第6回につづく〉

はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎