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祝!「自分の可能性を最大限に発揮できている」と思う学生が220%増! 2019年度の「社会創造演習」を振り返る③

2019年度の「社会創造演習」をアンケートで振り返る。第1回第2回につづいて今回は〈本来の自分〉編の分析です。

※メイン写真は、ぬいぐるみなど好きなモチーフを選んで撮影会+"好評"会を開くプロジェクト「撮影女子会」より


〈目次〉

第1回
そもそも「社会創造演習」って?/例えばこんなマイプロジェクト7選!

第2回
〈ソーシャルデザインに必要な力〉を測る32の指標/アンケート結果(全体編)/2020年度の32の指標

第3回
「〈本来の自分〉として一念発起する力」とは/〈本来の自分〉編のネタ元/〈本来の自分〉編のアンケート結果

第4回
「秘められた〈リソース〉に光を当てる力」とは/〈リソース〉編のネタ元/〈リソース〉編のアンケート結果

第5回
「日々の煩悩を〈ほしい未来〉に転じる力」とは/〈ほしい未来〉編のネタ元/〈ほしい未来〉編のアンケート結果

第6回
「必要な〈デザイン〉を自在に実現する力」とは/〈デザイン〉編のネタ元/〈デザイン〉編のアンケート結果

第7回(※近日公開!)
総まとめ


「〈本来の自分〉として一念発起する力」とは

〈ソーシャルデザインに必要な力〉のひとつめが、〈本来の自分〉として一念発起する力です。心を落ち着かせて〈本来の自分〉とつながり、内に秘めた「自分らしさ」を外に向けて発揮していく力ともいえます。

〈本来の自分〉という言葉は、僕が大好きな空海の教えである真言密教など、仏教の文脈でよく使われています。その反対に、さまざまな雑念に囚われてたり、小さなことに執着してしまう〈偽りの自分〉がいて、何かを決断するときに〈本来の自分〉か〈偽りの自分〉か、どっちの自分なのか大きな影響を与えてしまうのです。

そこで瞑想したり、リラックスしたり、あるいはこれまでの原体験を振り返ることで、「自分自身とつながっている」「自分の可能性を最大限に発揮できている」といった感覚を取り戻すことが大切になります。


〈本来の自分〉編、8つの指標

詳しい分析に入るために、結果の全体像と、〈本来の自分〉についてのマインドセット、スキルセットを測るための指標をご紹介しておきます。


マインドセット編


スキルセット編

棒グラフの右にある折れ線グラフは、「思う」=3pt、「どちらかというと思う」=2pt、「どちらかというと思わない」=1pt 、「思わない」=0ptとしたときの平均値の動きです。

マインドセットでは濃い緑が「思う」、薄い緑が「どちらかというと思う」、薄いグレーが「どちらかというと思わない」、濃いグレーが「思わない」、スキルセットでは濃いオレンジが「思う」、薄いオレンジが「どちらかというと思う」、薄いグレーが「どちらかというと思わない」、濃いグレーが「思わない」になります。

まず緑系とグレー系、オレンジ系とグレー系の比率を比べることでクラス全体の傾向を掴むことができます。また、同じ緑やオレンジでも、濃い色がどれくらい伸びたかを見ることで、より手応えのあるものになっているかを測ることができます。


続いて、〈本来の自分〉についてのマインドセット、スキルセットを測るための指標ですが、まず「どんな存在として、ソーシャルデザインするのか?」という大きな問いを、「本来はどんな人?」「何を思い出す?」「何を深める?」「何を褒める?」という4つの切り口に分解します。(どうしてこの4つなのか気になった方は、関連記事「菩薩薩たちからの〈16の問い〉」へ!)

そして、それぞれの問いについてマインドセットとスキルセット、2種類の指標を考えます。


問い①】本来はどんな人?

M1. ここ最近、自分の可能性を最大限に発揮できている実感がある
S1. 周りに同調するだけでなく、自分の意見をしっかり伝えることができる

これらの指標は、ポジティブ心理学のひとつのキーワードである「ユーダイモニア」からヒントを得ました。ユーダイモニアとは「自分の可能性が最大限に発揮できている幸せ」のことで、快楽的な幸せである「ヘドニア」とは一線を画するものです。また、小さなことではありますが、2020verでは「S1. 周りに流されずに、自分の意見や思いを素直に伝えたり、表現することができる」とし、"素直さ"を強調してみました。


問い②】何を思い出す?

M2. これまでのさまざまな原体験が今の自分につながっている
S2. 今の自分につながる原体験を、ストーリーとして語ることができる

これらの指標は「オーセンティック・リーダーシップ」という考え方からヒントを得ました。それぞれの原体験を思い出すことで、目的や価値といった"自分らしさ"に気づくことができます。これからの時代に必要なのは一握りのカリスマではなく、それぞれのオーセンティシティとつながった私たちひとりひとりなのです。


【問い③】何を深める?

M3. 自分が本当に好きなこと、自分にとって幸せなことを理解している
S3. 自分が本当に好きなことを起点に、アイデアを考えることができる

これらの指標も「ユーダイモニア」といったポジティブ心理学のキーワードからヒントを得ました。ただ、質問の意図としてはM1とかぶってしまっていたので、2020verでは「フロー」の概念に注目し、「M1. 時間が経つのも忘れてしまうくらい、情熱を持って取り組んでいることがある」「S1. 「何のためにそれをするのか」という明確な目標を設定することができる」に変更する予定です。


【問い④】何を褒める?

M4. 前よりもちょっと成長した自分のことを、たまに褒めてあげることは大切である
S4. 強さだけでなく弱さも含めて、ありのままの自分を受け入れることができる

これらの指標は、創造性教育の基盤となる「自尊感情」や「セルフケア」という考え方をヒントにしました。2020verでは「M4. たまには自分自身とデートをするような時間を持つことは大切である」「S4. 自分のよいところを自分で認めたり、褒めたりすることができる」といった文言に変更する予定です。


〈本来の自分〉編のアンケート結果は?

それでは改めて、アンケート結果をみていきましょう。


【問い①】本来はどんな人?

全アンケートの中でも顕著な伸びを見せたのが、「M1. ここ最近、自分の可能性を最大限に発揮できている実感がある」でした。「思う」「どちらかというと思う」の数はなんと3倍に(しかも8割超え)! これこそひとりひとつ、マイプロジェクトを実現したという達成感の現れかもしれません。「S1. 周りに同調するだけでなく、自分の意見をしっかり伝えることができる」でも、「思う」「どちらかというと思う」の回答数が堅実に伸び、グループワークを重ねてきた成果が出ています。


問い②】何を思い出す?

こちらはスキルセットの方、「S2. 今の自分につながる原体験を、ストーリーとして語ることができる」で顕著な伸びを見せていました。その結果、M2-S2が0.9ptから0.3ptと、その差が一気に縮まりました。初回では原体験は大事だとわかっていても、ストーリーとして語ることはできていませんでしたが、自分のこれまでを振り返り、グループメンバーにストーリーテリングするワークを取り入れた成果かなと思っています。


【問い③】何を深める?

こちらでそもそもマインドセットのスコアが高かったのですが、「S3. 自分が本当に好きなことを起点に、アイデアを考えることができる」で堅実な伸びを見せていました。その結果、こちらもM3-S3が0.6から0.1ptとその差が一気に縮まることとなりました。マイプロジェクトでは基本的に本当に好きなこと=ユーダイモニアを絡めてプロジェクトを実行するので、その醍醐味が伝わったと言えそうです。


【問い④】何を褒める?

こちらもマインドセットのスコアがかなり高かった指標です。M4、S4いずれも堅実な伸びを見せていました。マイプロジェクトが終わった後にメッセージカードをわたし合うのですが、そうした小さな成功体験を味わう機会を挟んでいくことが大切だと思っています。


ということで、〈本来の自分〉編をまとめると、

・「M1. ここ最近、自分の可能性を最大限に発揮できている実感がある」の顕著な伸びこそ、いちばんのマイプロジェクトの成果といえそう

・〈本来の自分〉編はマインドセットのスコアが高めに出る傾向がある。その後、授業を経てスキルセットが身につくことで、M-Sのギャップが縮まっていく

といったところでしょうか。


来年に向けた改善点としては、「本来はどんな人?」や「何を思い出す?」といったところは、beの肩書きを通じてかなり手応えを感じているので、洗練されてきているので、「何を深める?」や「何を褒める」に注目して、さらにワークを洗練させていきたいと思います。

以上、〈本来の自分〉編のアンケート分析でした。次回は〈リソース編〉を振り返ります。

第4回につづく〉

はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎