「情報生産者になる」 上野千鶴子
「情報生産者になる」ためのノウハウがぎっちり。学びになったことをざっくりとメモします。「文献の要約は著者以上に内容を理解するわけではないため意味がない。文献を批判的に読み、検討せよ。」以下はこの著者の主張に逆らうかもしれないが、これは、「読んだ」、で終わらせないためのメモ書きにすぎないので(単なる情報消費なので)。
情報とは?ノイズから生まれるもの、違和感・差異・つっかかりから生まれるもの。自明な領域にも、疎遠な領域にも情報は生まれない。当然わかりきったことは情報ではないし、読み解けない理系の数式も私にとって情報ではない。情報が生みやすくするためには、これらの領域を縮小することが大事。例えば、当たり前のことが当たり前にならない環境に身をおくなど。
情報生産には何が重要か。著者がもっとも強調していたことは
「自分の、オリジナルな、問いをたてること」
問いは、(期間内に)解けるものでなければならない。大きすぎてはいけない。そして、自分の問いでなければならない。
また「先行研究を批判的に研究すること」も重要。
自分の問いが、先行研究によって解かれていたら意味がない。「知の共有財」に価値を加えることができないからである。だから先行研究をフォローする。ではなぜ批判的に研究する必要があるのか。それは、先行研究に説得されないようにするため。オリジナルな問いをたてる際のオリジナリティとは、すでにあるものとの距離、違和感、差異である。先行研究の中に少しでも違和感を抱ければ、それは問いになりうる。
そして、情報生産という目的のための「道しるべをつくること」
例えば、研究計画書、目次を作ることである。
[(例)研究計画書]
①研究テーマ 適切に言語化する。だめな例は「諸問題」
②研究内容
③理論仮説&作業仮説 仮説とはわかりやすく言うと「思い込み」作業仮説は検証可能な経験的命題に置き換えたもの。理論仮説をこう置き換えたら検証可能だろう、という仮説。
④研究対象 対象と方法はセット。仮説次第では対象は全く変わってくる。
⑤研究方法 別名調査方法 一次情報なのか二次情報なのか。誰?アクセス可能?手に負える?
⑥先行研究および関連資料
⑦研究用機材・研究費用
⑧研究日程
⑨本研究の意義
⑩本研究の限界 この研究で何を達成したことになるのか、何が残されているのか。研究業界における自分の研究の立ち位置。
「クレイム申し立ての宛先」も考えねばならない。問題は、それに満足できない誰かが問題だと言い立てるもの。
そして、「理論」について
理論は道具。理論とは互いに論理整合的な概念の集合。例はマルクス主義。概念は現実を解釈するための装置。「セクハラ」などは、この概念が存在する以前、「セクハラ」とは思われていなかった。新しい概念が誕生するのは、それまでの概念では説明できないから。
その研究ではどんな道具(理論や概念)を使うのか、まったく新しい道具を使うのか、その立場を表明するのが「方法論」であり「理論的枠組み」となる。
データには、言語情報からなる「質的情報」(インタビューも含まれる)と、統計やアンケートによる「量的情報」がある。量的情報は、その性質から仮説を超える蓋然性は低い。質的情報はKJ法、マトリックスで分析。ケース(主に人)とコード(調査項目)で分析。
コメントとは、相手の主張をより説得力あるものにするための手助け。内在的コメント、外在的コメント。外在的コメントは第三者の視点をもち、ないものねだり(指摘)するもの。
最後に大事なことは「その論文(情報生産)で何をしたいのか?」が明確であること。自分の、オリジナルな、問いをたて、それを解くことは何を意味するのか、なんのためかを考える。志は高く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?