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第三十話 米国債券への投資

私のような資産形成途上の人は、しばらくは預金+株式で良いかと思いますが、ある程度資産を築いた人や富裕層は必ず「国債」をポートフォリオに入れています。今回は”憧れ”の意味も込めて米国債への投資についてお話ししたいと思います。

米国債券とは

「債券」というのは、投資家からお金を借りる目的で発行する証券のことです。いわゆる「借用書」のこと。投資家は、債券を償還日(満期)まで持っていれば、お金が戻り、利息も得られます。国が発行する債券を「国債」、地方が発行する債券を「地方債」、企業が発行する債券を「社債」と言います。

国が発行するのですから、どこの国の国債でも良さそうですが、なぜ米国債券の話をするのか。米国債券の魅力についてお話しします。

アメリカ合衆国国債(トレジャリー ボンド)
魅力①金利
今(2024年3月)の時点での米国金利(FF金利)は5.25%~5.50%、高金利です。細かい説明は割愛しますが、普通は長くお金を借りた方が利息を多く支払います。通常短期金利より長期金利の方が高金利のはずですが、今のアメリカは長期の方が低金利の「逆イールド」という状態です。

金利は緩やかに低下しているものの、10年国債4.248%は、日本国債10年の0.736%と比較しても差が歴然です。ハイリスク=ハイリターン、ローリスク=ローリターンという言葉がありますが、高金利=ハイリターンだとしたらハイリスクなのではないか?と思われる方もいるかもしれません。しかし国債の考え方は少し違いますので、次で説明します。

魅力②信用
国債は基本、ローリスク=ローリターンの資産だと言われています。発行する国の経済が破綻して、デフォルト(債務不履行)にならなければ安全です。こういったリスクを「信用リスク」と言います。もちろん、”この国は絶対に安全”などという保証はありませんが、アメリカの場合はどうでしょう。

アメリカは、日本やヨーロッパが抱える人口減少問題に対して、今後も人口が増える傾向にあります。それは潜在成長力(残念ながら軍事力も含みます)の高さを意味します。企業のイノベーションも活発に起きます。

その他、自給率の高さ、金融に関する法制度が整っている、など、いろいろな面で世界トップレヴェルの信用度なのです。2023年8月に米国債の格付けが最高位の「AAA」から「AA+」に引き下げられましたが、それでもなお信用力は高いと言えます。

魅力③強さ
世界では定期的に暴落が起きます。リーマンショック、コロナショック。「〜ショック」が必ずやってきます。こういったときに世界の投資家は米国債をこぞって買いました。どんな時でもアメリカなら必ず財政を立て直して、元本も利息も支払ってくれるだろうと考えているのです。暴落相場に対する強さも魅力の一つです。

米国債にはどのように投資するのか

債券は基本的には「相対取引」(あいたいとりひき)と言って、証券取引所などの市場を介さずに、売り手と買い手が直接価格や数量などを決めて取引を行います。とは言っても証券会社で買うことができます。

一般的には長期(償還までの残存が10年や15年)にわたって償還日まで持ち、毎年利息を受け取る(インカムゲイン)方法で買うことが多いと思います。その場合はネット証券にもいろいろな種類の債券があるので気軽に買うことができます。

ただ、債券は短期売買も可能ではあります。債券も日々マーケットで価格がついているので、価格が低いときに買って上がったときに売る(キャピタルゲイン)方法の取引をすることもあるのです。主に機関投資家などです。

利息がつく債券を「クーポン債(利付債)」といい、利息のつかない債券を「ゼロクーポン債」と言います。キャピタルゲインを取る取引をする際にはゼロクーポン債を買った方が有利になります。利息がつかない分安く買えるのです。

ただし、ネット証券で買える債券は、長期保有を前提としているので途中売却などには高い手数料がかかります。このような取引をしたい人は対面の証券会社か富裕層向けプライベートバンクの方が売買手数料が安く、トータル有利です。

債券投資の注意点

①リスク
債券投資はローリスクだとは言っても、リスクがないわけではありません。先ほどキャピタルゲインを狙う取引もあると言いました。債券価格も上がったり下がったりしているので、「価格変動リスク」はあります。

金利が下がると債券価格は上がる、金利が上がると債券価格は下がると言われています。

たとえば、金利4%の債券があったとして、金利5%の再建が登場すると、5%の方が魅力的で皆そちらが欲しくなり、4%の債券は人気が下がってしまうので、価格も下がります。需給の考え方ですね。

ただ、償還日(満期)まで持っていれば良いことですので、頻繁に売買しなければ大丈夫です。

また、前半でも述べた「信用リスク」、債券の発行体が潰れるリスクがあります。くれぐれも利回りだけで判断して買うことのないように気をつけましょう。

もう一つ、「為替リスク」というものがあります。米国の場合はドル円レートも考えなくてはいけません。米国債の償還日が来たときに、買った時よりも超円高になっていたら?

たとえば1ドル=200円の時に1ドル分、200円で買ったものが、売るときに1ドル=100円になっていたら、100円でしか売れません。

利回り、為替レート、デフォルトの可能性などを加味する必要があります。

②コスト
先ほども述べた通り、ネット証券は途中売却時には高い手数料(5%など)がかかります。かといって、対面証券会社は買う時のコストが高くかかります。まして、富裕層向けプライベートバンクは簡単に口座が作れるわけではありません。

そして、相対取引なのでコストや流動性がわかりにくく、自分だけで気軽に取引するにはハードルが高いかもしれません。生債券(債券そのもの)の取引はやはり富裕層向けとも言えるでしょう。

ただし、ネット証券でも取り扱いがあり、コストが価格にすでに乗っているものや、国債の投資信託などでしたらコストも把握しやすいので、可能性はあります。ただし、投資信託にはクーポン(利息)はつきません。

③その他
ネット証券で購入できるのは、既発債(きはつさい)と言ってすでに発行された中古品です。新発債(しんはつさい)を買った場合は100で買えば100で戻りますが、既発債の場合は単価が上がって売られていることもあります。その場合は償還日まで保有しても元本丸ごとが戻るわけではないのです。

また、ネット証券で買った銘柄は、他社に移管できないことも多いので気をつけましょう。


いかがでしたでしょうか。米国債投資を考える時の参考になればと思います。






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