演技って難しそうな言葉だなあ


演技のクラスや具体的に何をやるんだろうと思う方が多いと思うので、ここにまとめてみます。

そもそも演技とは!!! なんていう大きな話はしません。

できません(笑)僕もまだまだ修行中だし、一生かけてもはっきり見つかるか分からないし、人によってそれぞれだと思うので。

僕の主宰するスタジオパフォは実験の場です。だからレッスンではなく「ラボ」と呼んでいるのです。
机に座って演劇史や演技論などを学術的に学ぶのではなく、みんなの前で演技を披露する事が全てです。

そんな事言ってもわかんないよ。だと思うので、

具体的なエクササイズを紹介します!

このラボで行うエクササイズは、自分の生活を2分間、再現するところから始まります。

「何かしに部屋に入ってきて、何かして、何かする為に部屋から出て行く」

っていうだけです。

こう聞くと、地味だなー。退屈だなー。と思えるかもしれませんが、僕は、このエクササイズが大好きです。

NYにあるHBstudioで受講していたこのレッスンは、毎回とても盛り上がります。練習を重ね、とても自然に再現している人の発表を見ると、その人の部屋を覗き見しているような錯覚を起こしてしまうほどです。

お茶を飲んでむせたり、メールしながら無意識に顔のリンパマッサージをしたり、冷蔵庫を開けて何故かにやにやしたり、片足で靴下を穿こうとして奮闘したり、鏡で腹筋をチェックしたり…
そんな「人間の真実」を見せられると、クラスは大笑いで拍手喝采。

このエクササイズの目的は、普段、自分は何を見て、どう感じ、何を期待して、どう行動しているのかという、これら無意識にやっている事を、意識上に掘り起こし、普段の自分の自然な行動を、何回も同じように、かつ毎回新鮮に再現できるように練習することです。

他人を演じる前に、まず、自分についてのプロフェッショナルであれ、ということでしょうか。


いくつかの自己再現エクササイズを終えると、今度は、いよいよ「自分以外の誰か」を再現します。この頃には、自分がいかにたくさんの要素からできているかが分かっているので、他の人を演じる事の大変さ、楽しさも分かっていると思います。

自分の恥ずかしい部屋の中での行動をみんなに見せる事にも慣れて(笑)

例えば、僕がクラスで演じたのは1970年代、ロサンゼルスの40マイル東に住んでいるマイク。もちろん架空の人物です。彼が朝起きて、コーヒーを入れて飲む、というだけの3分間を再現するエクササイズだったのですが、最初は体がうまく動きませんでした。

3分間という短い時間でさえ、体を持て余してしまうのです。頭の中は、「次何をしたら自然かなあ」「やることないからアクビでもしようかな」などという、雑念で一杯。もちろん、行動も不自然。何となく立ち止まってアクビしてみたり、目的も無くうろうろしたり、、、
そうなると、目線さえも不自然に思えて、何を見てるのか見てないのか、凝視しても変だし、横目でちらっと見るのもわざとらしいし、と

半ばパニック(笑)

そういえば、学生時代のミュージカルのときも、何していいか分からないまま、通行人とか村人とかやってたなあと反省。だけど、数の暴力と言ったら悪いけど(笑)みんなでワイワイしてたら、それほどダメな感じがしないんですよね。ここは、舞台上に一人っていうのが、大きな差。やはりごまかせませんね。恥ずかしかったー。

発表のあと「まず、場所を特定しなさい。そのあと、『目的』『障害』を」とのアドバイス。

そこでまず、グーグルマップでその辺りの街を散歩し、生えている木や、気温と湿度、家の造り、その頃の家具や小物を調べ、特定していきました。地理学などの方向に行かないように、あくまで主観的に。。

そして、彼の学校での悩み、家族に対する考え、食べ物の好みを決めていきます。すると、体が自然に動きだしました。

いや、嘘です(笑)すいません。

本当は、体が自然に動いてるように見えるよう、何回も練習しました。けど、何をしていいか分からない、という状態からは脱却できたんです。

「起きて、コーヒーを飲む」というだけのはずなのに、やる事が100倍にも増えたように感じました。空気が乾燥しているからのどを潤したい、今日は好きな子と同じクラスがあるからいい服を着たい、いつもより豆を多く入れてカフェインをたっぷり取りたい、寝癖が収まらない髪質をどうにかしたい、週末のパーティのために母親から小遣いをせしめたい、などなど。あとはもう、マイクと僕は友達です。季節を変えたり、シチュエーションを変えたりしながら、彼の(僕の)人物像を深めていきます。

エクササイズもここまで進めば、実際に台本を使って演技をしていきます。実際にミュージカルや芝居の中で、キャラクターを演じていく段階に入っていきます。感受性を高め、新たな目でもって、作品の世界の中で生活するのです。


最終的な目的は、カッコつけず、気負わず、自然に演じる事。そして演じる事を通して、人間の真実を探求する事。人間って、やっぱりなんか憎めないね。と演じる側も観客も感じられるような舞台を目指していきます。
この勉強は一生終わらないので、僕も、皆さんと一緒に学べる事を楽しみにしています!

また詳しいエクササイズやこのメソッドのコンセプトについては書いていきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?