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語学が上達する人の特徴 【日本語を勉強中のイタリア人の場合】

私がやっている日本語レッスンは、個人レッスンが8割で、グループも少人数なので、一人一人がどのくらい上達したか把握しやすいです。

どういうタイプの人が上達しやすいかを考えてみたとき、

この人はこういう部分が上達を妨げているのでは?

と、逆から分析してみたほうが頭に事例がたくさん浮かびました。

上達する人は、こちらの力添えが大してなくてもどんどん上達していくので「この人は何故こんなに上達が早いのか」と考えることは少ないです。

一方、なかなか上達しない人に対しては、レッスンを受講してもらっている以上は少しでも成果が出てほしいと知恵を絞るので、こういう部分をもっとこうしたらいいのでは? と考えます。

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なかなか上達しない人に見られる良くない点は、

❶ ハナから「難しい」と決めつけそこにとどまる

漢字に対する反応がわかりやすいです。

こちらとしてはいろいろ工夫して「へぇ〜」と面白がってもらえそうな漢字にまつわるエピソードや成り立ちなどを交えて説明します。

が、見た目の複雑さから「こんなものは覚えられるわけがない」という先入観で固まってしまっており、何を言ってもハナから諦めて覚える気がない人もいます。

「漢字は難しい、覚えるのは不可能」という自分の固定観念を、より補強するための材料を探し出してきては「やっぱり無理だ」を繰り返すだけ。

「難しい〜」という最初の反応は同じでも、そこから「時間はかかりそうだけど、覚えていったら面白そう」という風に面白がれる人もいます。

この「面白がる」というスタンス、語学に限らず大事だよなぁと、自戒も込めてよく思います。

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❷ 「おしゃべり」じゃない

趣味や仕事のことでも、時事についてでも、何かを語りたくてしょうががない人というのは強いです。

極端に言えば、語りたい、喋りたいという欲求が満たせるなら、ことばは何語だろうと構わないからです。

ある程度の語彙が身に付いたら、その人が語りたくてしょうがない話題を振ってあげれば、まだ少ない手持ちの語彙を総動員して話そうとします。

反対に、おしゃべりじゃない人の場合、何かを振ってもそれに対して一言二言返すだけです。

おしゃべりな人の場合は、思いついたことを多少関係なくてもどんどん口に出そうとしますから、それがいい練習になっていくようです。

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❸ 「細かいこと」にこだわり過ぎる

私は日本語を教えていますが、「細かいこと」のイメージとしては、例えば、日本人が英語を勉強するときの定冠詞(the)と不定冠詞(a/an)の違いなどです。

これについては、
「定冠詞(the)は話し手と聞き手にに共通して認識されているもの、既に話題にのぼっている特定のものにつける」
といった定番の説明があるかと思います。

ところが、これを細かく考えていくと深みにはまっていきます。

じゃあこの場合はどうなるの? とか、この場合は定冠詞の条件に当てはまるのになぜ不定冠詞なの? とか、先の説明におさまりきらない事例が出てきます。

その言語の勉強を始めたばかりで、まだ全体像も掴めていない段階では、分かりにくい1つのトピックを掘り下げ過ぎても、あまり意味がないのかなと感じています。

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完全に理解できなくても、だいたいこういうことだろう程度に分かれば次に進んでしまって構わないと思います。

学習を続けていくうちに「あぁ、あのときよく分からなかったあれは、こういうことかな」と理解できることが多いからです。

おそらく性格的な問題なのでしょうが、細かいことがどうしても気になってしまう人がいます。

例えば、日本語で(服やパンツなどを)着用すると言う場合、まず原則として、上半身は「着る」、下半身は「履く」と、動詞を使い分けます。

加えて、帽子、ネクタイ、眼鏡などは特定の動詞が必要です。

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イタリア語には日本語の「下着」に相当する言葉があり、総称としての「下着」にはどの動詞を使うのか? と聞いてきた人がいました。

下着は、下半身に身につけるものですが、下着を「履く」ではなく下着を「つける」。つまり先の原則があてはまりません。

細かいことを気にする人は、これに「う〜ん」と頭を抱え込みます。では、どういうロジックで理解すればいいのだろうか、、と悩んでしまうのです。

しかし私は思うのですが、こういった細かい例外を気にするより、まずは「着る」「履く」という基本の2つを覚えて使えることのほうがずっと大切です。

やや乱暴な言い方をすれば、細かい例外的なケースに頭を悩ませる時間があるなら、基本のワードとその使い方を暗記するほうがずっと実用的です。

初級の段階では特に、細かく突き詰めるよりは、ある程度の大雑把さがあったほうがいいようです。

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❹ 単語が覚えられない。覚えようと努力しない

年齢が若いほうが暗記力が高いという傾向はもちろんあります。

ですが単語を覚えることに関しては、単なる個人差がけっこう大きいように感じます。

1年経っても曜日が覚えられない(そして覚えようとしない)人もいれば、レッスン中に初めて見た単語を次回までにほとんど覚えてしまう人もいます。

この能力は、学校の勉強ができる/できないに全くと言っていいほど関係していないようです。

専門職などに就き教育レベルも高いのだろうなと思われる人が、日本語の単語を覚える能力に関しては平均を下回るようなケースもけっこう見てきました。

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何でもこの一言で片付けたら終わってしまうのですが、単語を覚える力にはセンスがかなり介在しているように思えてなりません。

しかし、センスがなくても勉強量でカバーできる部分が多いのが外国語学習です。

たとえ単語を覚えるセンスが多少欠けていてすぐに頭に入ってこなくても、繰り返し覚えようと努力すればいつかは覚えられます。

実際、こちらの頭が下がるほどの愚直な努力で日本語をマスターした人も見ました。


まとめるとするなら、どんなことも面白がれる感性があり、細かいことを気にせずある程度大雑把で、おしゃべり又はいくらでも語れるような趣味などがあると語学は上達しやすいのではないか、というのが私の思うところです。

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