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ベイシー楽曲分析-This Could Be The Start of Something Big

リスニング(聴くこと)が、ビッグバンドをスウィングさせるために必要不可欠な要素だ、と気付いたことから、指導するバンドにカウント・ベイシー楽団の曲を毎週1曲ずつ聴かせようと、リスニングの助けになる楽曲分析を始めました。それを、こちらに掲載していきたいと思います。

今回はこの曲「This Could Be The Start of Something Big」 (作曲 Steve Allen/編曲 Quincy Jones)」

1. リスニングのポイント

日本語では「これは何か大きな事の始まりかもしれない」といった意味でしょうか。クインシー・ジョーンズのハイセンスな仕掛け満載の曲です。

ぜひ聴いてほしいポイントは、イントロとエンディングに同じ素材を使ったアレンジの一体感や、テナーサックス・ソロのバックに繰り広げられるブラスのスリリングなバックリフ、そして、エンディングのわずか2小節のハーフ・タイム(半分のテンポに落ちること)のピアノ・ソロからの意外なコード F7 9 #11 13 でしょうか。詳しくは後述します。

2.形式

1コーラスはABAB’の64小節。キーはGメジャーです。テンポは250BPMですが、それよりも速く演奏されることも多いようです。

3. 楽曲分析

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高速テンポのハイハットから、ピアノ、ベースとドミナント・ペダルのD音が加わり(イントロA)、すぐに全合奏となりサックスとブラスの特徴的な掛け合いを経て(イントロB)、4小節のハイハットのフィルインとなります。

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テーマはサックスとトロンボーンのユニゾンで元気に奏されます。演奏者目線ではジャズターンの入れ方に注目です。途中、トランペットの1拍半フレーズの合いの手が短く入ります(スネアとの一体感にも注目!)。2回目のAはサックスのみになりますが、途中のラインのディミニッシュ展開を経てのハモリはなかなかハイセンスです(後述)

Bのブリッジはピアノ・ソロで、リズムセクションのみとなります。3回目のAでは、やはりサックスとトロンボーンのユニゾンでテーマが奏され、イントロと同じトゥッティで締めたのち、4小節のブレイクでのテナーサックス・ソロのピックアップとなります。王道のパターンです。

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1コーラス64小節のテナーサックス・ソロの途中、Bセクションのバックのトランペットとトロンボーンの掛け合いのバックリフが秀逸!(後述) ソロの終わりはスネアのロールで盛り上がり、アレンジャー・コーラス兼エンディングに突入します。

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シャウトコーラスの始まりは、なんと裏拍から始まるトゥッティ、なんてスリリングなんでしょう! ベイシーによる粋な合いの手を経て、2小節で1音ずつ上昇するブラスとサックスの掛け合いで、ジワジワとエンディングに向かいます(途中からサックスのみハモります)。掛け合いの到達点はイントロBと同じフレーズへ。示し合わせたような自然さは、クインシーの憎いところです。ここから考えたイントロなのでしょう、きっと。

ついにはテンポが半分に落ちて、一瞬ブルージーなピアノ・ソロが顔を出し、すぐに2つの強烈なコードで幕を閉じます。この最後のコード F7 9 #11 13 は一度聴いたら忘れられない驚きのサブドミナント・マイナー系コードですが、中には IIb7→I 、つまりGコードで素直に終わるバージョンもあり、そこら辺の事情はよく分かりません。

4. サックス・テーマのディミニッシュ展開とブラスのバックリフについて

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譜例の上の段は、リスニングのポイントでも触れた2回目のAセクションでのサックスのテーマのディミニッシュ展開です。コンビネーション・オブ・ディミニッシュ・スケール(いわゆるコンディミ)に沿ったメロディ展開なので、とてもモダンに聴こえます。

下段は、テナー・ソロのBセクションのバックの激しいバックリフです。プランジャーを使ったトランペットの裏拍の鋭いアクセントが、2小節ごとにソリストを煽っているようで、素晴らしい緊張感を醸し出しています。クインシー・ジョーンズさすが!!!

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