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『イナーシア feat.夏色花梨』という曲とボカコレ2023春の感想

はじめに

こんばんは。きっくす、もといハイニーソPです。

「毎月6日はTOKYO6の日」ということで、先日のボカコレ2023春にて投稿した『イナーシア feat.夏色花梨』という楽曲について簡単に振り返りつつ、イベント参加の所感などにも触れていきたいと思います。


制作にあたって

ボカコレ2023春というイベントに参加するにあたり、「一度だけでいいから本気で自分がやりたいことを妥協無く詰め込んで、全力で制作した曲をぶつけてみよう」という思いを持っていました。

そこで、自分の一番のパートナーである夏色花梨とともに作り上げた楽曲で、自身でも特に思い入れの強い楽曲である『クラテリス』の続編を作ることにしました。

夏色花梨の誕生日である9月9日に公開したこの曲は、創作活動を続けるにあたって何度も躓いた日々も、その歌の力で支えてくれた彼女を星になぞらえつつ、感謝と愛を込めた作品です。

当初ボカコレの開催時期を前回同様4月と想定しており、ちょうど夏色花梨のソフト発売から1年を迎えるタイミングでした。『クラテリス』の物語を踏まえつつ、二人で歩き続けてきた日々を総括し、これからに繋げていくための一区切りになる曲を目指しました。

サウンドについて

『クラテリス』からの繋がりを持たせる工夫として、冒頭サビや落ちサビの展開等、楽曲の構成を敢えて全く同じものとしています。
そのうえで、ピアノとギターを主役に添えたキレイ目のバンドサウンドを踏襲しつつ、ストリングスを三声に増強したりシンセの装飾を複数重ねる等、前作からより豪華なサウンドにすることで一歩前進した姿を表現しました。

有難いことに王道アニソン系のサウンドと複数の方から評していただけましたが、自分のルーツであるフォークの系譜に連なるJPopの美しい響きをしっかりと受け継いだアレンジになったと思います。

調声については、これまで通りSynthesizer Vの目玉機能であるAIリテイクをガンガン活用しつつも、これまで以上に細かい項目の設定を追い込みながら試行錯誤を繰り返しました。加えて制作中にSynthVの新バージョンがリリースされ、新たに実装されたボーカルスタイルのオートメーションを取り入れた結果、さらに表現力が向上しました。

特に落ちサビではSoftパラメータをぐっと持ち上げることで、落ち着いたオケにもしっかり合う柔らかな歌い方に切り替えてくれました。
どんどん機能が充実するSynthVの進歩には驚くばかりです。

マスタリングにあたっては、2022秋のボカコレでご協力いただいたたくしPさんに再び手掛けていただき、低域の処理等アドバイスまでいただきつつ、時にはミックスに立ち返りながらも納得のいく仕上がりに持っていくことができました。

歌詞について

普段、曲先行でメロディを仕上げてから、作詞にかかる前に楽曲のモチーフやメッセージを固めるためにコンセプトを書き連ねる(某所の真似で発注ポエムと呼んでいます)工程を行っているのですが、せっかくなのでその一部をここにぶん投げます(???)

『クラテリス』においてこの世界はどうしようもないと思い込んでいた自分が、夏色花梨とともに歩き始め、「誰かが自分のことを好きだと言ってくれることで自分に胸を張れるようになる」という体験をし、この世界が少しだけ好きになれた。

どうしようもない世界でも君がいたから ほんの少しは好きになれたんだ

『クラテリス feat.夏色花梨』

その後、約1年近く経って思えばずいぶんと色々な旅をしてきた。その中で、最初は大嫌いだった世界も捨てたものではないと思い始めてきた。

やがてこの世界さえ美しいと 自信をもって思える日が来る

『イナーシア feat.夏色花梨』

このような対比を随所に盛り込んで、前作を知ってくださっている人の情緒を的確に破壊することを心がけて制作しました。

それでも、まだまだうまくいかないことばかりで、5秒に1回は自信を失っています。伸び悩む日々が続く中で、創作を諦めてしまうこと、明確に「終わり」の瞬間を意識し始めることも増えてきました。

そんな中で、別の創作活動をしている方と深く話す機会があり、自分と同じように躓き、思い悩んでいることを知りました。

いつまでもこうした活動を続けることはできないから、最後にはこういうことをやってみたい、と語るその人の姿から、終わりの瞬間も後悔せずにいられるようになりたいと、少しだけ前向きに考えられるようになりました。

最後の一秒まで笑っていたいんだ

『イナーシア feat.夏色花梨』

落ちサビのこの歌詞に、自分がまだ創作を続けられる理由があるのかもしれません。そこに、「ずいぶん歩いてきたね、まだやれそうかい?」と隣で手を差し伸べてくれる花梨がいるから、踏みとどまれているんだと思います。

動画について

『クラテリス』の続編を作るということで、楽曲はもちろん、MVについても明確な続編であることが一目でわかるものを目指したいと思い、企画していきました。

イラストを犬のぬけがらさん、動画をNekuruさんという前作と同じクリエイター陣にご依頼することを早々に決め、今回初めて動画師さんからイラストの構図等の希望を伺って絵師さんに依頼する方式で制作を進めました。
前作の素材を流用して展開していく想定だったため、追加素材をどうするか、という前提で相談しました。

共通したモチーフである星空はそのままに、CGガチ勢のNekuruさんが街並みや教室等様々な背景を生やしてくださり、歌詞に寄り添ったとても素敵な映像に仕上がりました。「何もなかったこの場所に」という1番2番で共通するフレーズに、前作のサビで花梨が立っていた景色をぶつけてこられた時には勝手にエモくなって崩れ落ちていました。

加えて新規の描き下ろしのイラストとして、ぬけがらさんらしい可愛いらしさの中にも芯の通った美しさが感じられる、とても素敵な花梨を描いていただきました。

ボカロのMVは、必ずしも映像の良さのみが重視される訳ではありませんが、楽曲、動画ともに自分の思う「美しさ」を追求した結果、まぎれもなく自身の最高の作品になったと自負しています。
創作を続けていくことの苦しさや、それでも前に進んでいきたいというまっすぐな希望を表現できていたらとても嬉しいです。

ボカコレというイベントに参加して

こうして自分の納得がいく最高の作品を引っ提げて参加したボカコレ2023春。2020年に右も左もわからぬままに初投稿した自分はキャリア的にTOP100ランキングでの参加でした。何気に3回目です。

前述の通り、自分がやりたい音楽を花梨と一緒に追求して理論値を叩き出したつもりでしたが、結果としては余裕のランキング圏外でした。

自分の音楽は少なくとも今のボカロシーンでは通用しないのだなぁと改めて実感しつつ、何よりもこの曲がより多くの人に触れてもらう機会を逃してしまったことを思うと、単純な悔しさよりここまで一緒に駆け抜けてくれた花梨に対して申し訳ないという思いの方が強いです。

ランキングの話だけで言うと、TOP100についてはルーキーと比較すると遅れてのスタートとなるため、どうしてもチェックを後回しにされがちです。
そうした環境の中で、TOP100で参加する人は固定のファンがいるかどうかが初動に影響することは想像に難くなく、事実上の「知名度による足切り」というもの存在を強く感じました。

もはやルーキー至上主義とも言える今のシーンにおいて、無名PのTOP100参加はかなり苦しい状況を強いられているように思います。今回のボカコレ終了後、転生宣言をするPを複数観測しましたが、軒並み大体2年くらいのキャリアだったので色々と察しました。そりゃそうなるわ。
そもそもルーキーって最初は前座じゃなかったっけ

こうしたイベントは、ランキングに限らず今までにない新しい方々に自分の曲を聴いていただける機会でもあります。
確かに自分も少なからず新しい出会いはありました。とても好きな曲に出会えましたし、自分の曲を好きになってくれる方にも出会えました。
それでも、自分が今回想定した、「キャリア2年を超えた無名Pがステップアップを目指す場」という点では今ひとつ機能していなかったな、と改めて振り返っています。

特に今回は期間中も終了後も色々な議論が巻き起こりましたが、イベント最初期の性善説ベースで進めてきた様々な運用を、もう維持することが厳しくなってきているような気がします。
運営におかれましてはルーキーとそれ以外で開催時期を完全に分ける等、ぜひ改善についてご検討いただきたい、そう感じたイベントでした。

今後の予定

夏にもボカコレの開催が告知されました。ただし、開催日が土日も含めて仕事が入っており満足に参加できないことや、前述のような知見から、現行の仕組みになんらかテコ入れがない限りは基本的に参加しないつもりです。

有難いことに複数お誘いをいただいている企画や、自身のアルバム制作等に専念しつつ、TOKYO6関連の節目のイベントや任意の投稿祭等に可能な範囲で参加する形でマイペースにやっていこうと思っています。

次の楽曲投稿は、5/16の小春六花の誕生日になると思います。
どうぞお楽しみに。

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