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Trados 2024で取り込めるidmlのバージョン


Tradosのバージョンに関係なくidmlを取り込むには

Trados Studio(以降Trados)で、InDesignのファイルを翻訳するときは、一旦idmlに変換してから取り込みます。
ところがTradosのデフォルトの設定では、取り込めるidmlのバージョンに制限があります。
この制限が結構厄介だったのですが……Tradosのサポートによるとバージョンに関係なく取り込める方法がありました。

[サポートされていないファイルバージョンを処理する]にチェック
  1. [ファイル]-[オプション]を選択。

  2. [オプション]ダイアログ内の[ファイルの種類]ツリーから[Adobe InDesign CS4-CC IDML]を選択。

  3. [全般設定]を選択して、[サポートされていないファイルバージョンを処理する]にチェックを付ける

これでTRADOSとInDesignのバージョンに関係なく、idmlを取り込めます。
ただし、「サポートされていないファイルバージョン」という但し書きがつくことは念頭に置いてください。この処理結果がいかようになろうとも私は責任を負えません

プロジェクト単位で設定も可能

[プロジェクト設定]内の[ファイルの種類]にも同様の設定があります。
すでに作成済みのプロジェクトでidmlを取り込む時は、[プロジェクト設定]から設定してください。
([オプション]の設定は、既存のプロジェクトには反映されません)

InDesign 2024形式のidml

この設定でTrados 2022と2024で、InDesign 2024から出力されたidmlを取り込んでみたところ、無事に取り込みできました。
(デフォルトの状態だと、エラーになって取り込めません)

サポートされていないファイルバージョンを処理するとは?

ヘルプを読んでも、ここのチェックの有無がどのような影響を与えているかが明記されていません。
また、idmlのメタ情報を編集して、無理矢理バージョンダウンして運用する方法も書かれています。

こういった運用がInDesignにとって正しいのかどうか不明なので、私としてはあまりオススメしたくありません。なので、処理結果にも責任は負えません。
個人的には、Tradosでサポートされているバージョンで運用するのが大前提。

どうしてもInDesignのバージョンが制限されていて翻訳できないときは、プロジェクト単位で「サポートされていないファイルバージョンを処理する」で対応するのが望ましいような気はします。
くれぐれもご利用は計画的に。

同人誌訂正します

『トリセツ制作現場のアレやコレやをなンとかするDTP』では、今回の方法を採用しておらず、TradosとInDesignのバージョン管理が面倒と書いています。
しかし、今回の方法でバージョンの問題が解決できることが分かりましたので、内容を訂正いたします。

バージョンに関係なくidmlを開く方法があったので訂正します

Tradosとidmlの関係

以下は蛇足です。Tradosとidmlのデフォルトの設定について、ちょこっと書いています。
2024年6月時点で、デフォルトの設定ではTrados2024ではInDesign 2024から出力されたidmlは取り込めません。
(先述したように「サポートされていないファイルバージョンを処理する」で対応可能です)

デフォルトの設定では取り込めません

idmlとは

TradosでInDesignのデータを取り込むには、ネイティブデータのinddではなく、互換データのidmlを使います。

IDMLは、オープンな XML ベースのファイル形式で、これを使用すると、サードパーティ開発者やシステムインテグレーターは、InDesign を使わずに InDesign ドキュメントの作成、修正、解析をプログラムによって処理できます。 

Adobe公式サイトより

InDesignでは上位バージョンのデータを開けないので(2023で2024のデータを開くとか)、idmlに変換してから開きます。
同様に、Tradosで扱う場合もidmlに変換してから取り込みます。

ここで重要なのは、Tradosのバージョンによって、サポートされているidmlのバージョンが決まっていること。そして、Trados 2024ではInDesign 2024から変換されたidmlは扱えません。
DTPでは、idmlさえあればとりあえずなんとかなるというカンジなのですが、Tradosではそういうわけにはいかないので要注意です。

Tradosで対応するidmlのバージョン

2024年6月現在の状況は以下のようになっています。

  • 2022年5月 Trados Studio 2022リリース

    • →InDesign 2022形式のidmlに対応

  • 2022年10月 InDesign 2023リリース

  • 2023年6月 Trados Studio 2022 SR1リリース

    • →InDesign 2023形式のidmlに対応

  • 2023年10月 InDesign 2024リリース

  • 2023年12月 Trados Studio 2022 SR2リリース

  • 2024年6月 Trados Studio 2024リリース

Tradosとidmlのデフォルトの設定での対応

2023年6月にリリースされたTrados Studio 2022 SR1でInDesign 2023形式のidmlに対応しました。
2023年12月にリリースされたTrados Studio 2022 SR2では、InDesign 2024形式のidmlに対応していません。
そして2024年6月にリリースされたTrados Studio 2024でも、InDesign 2024形式のidmlには対応しませんでした(2024年6月時点)。

InDesign側で対応するには

では、InDesign 2024で作成されたデータをTrados 2024で取り込むには、どうすれば良いでしょうか? 手順は以下のようになります。

  1. InDesign 2024形式のidmlをInDesign 2023で開く

  2. InDesign 2023形式のidmlとして保存し直す

  3. 保存し直したidmlをTradosで取り込む

InDesign 2023形式のidmlとして扱えばTrados 2024で取り込めます。
……ここまで読んでイヤな予感がした方は……ご明察です。

2024年6月現在、Adobe CCのソフトは直近2バージョンまでしかインストールできません。新たにインストールできるInDesignは2024と2023だけです。
つまり、Trados 2021以前のバージョンしか持っていない翻訳者に、InDesign 2023形式のidmlを渡しても翻訳する術がないのです。
(今からAdobe CCに加入してもInDesign 2022以前のバージョンはインストールできません)

解決するには、

  • 発注側がInDesign 2021形式のidmlにダウングレード

  • 翻訳側がTrados Studio 2022以降のバージョン(現在購入できるのは2024)を購入

  • 「サポートされていないファイルバージョンを処理する」で対応する

しなければなりません。

おそらく「サポートされていないファイルバージョンを処理する」で問題ないと思います。しかし、「サポートされていない」という但し書きが恐いですよね。
そして、これはAdobe CCのバージョンが上がり続ける限り、常に付きまとう問題です。

InDesignの翻訳が必須の業務だとしたら、

  • Tradosのバージョンに合わせてInDesignをアップデートしていく

  • TradosとInDesignのバージョンを固定(たとえばTrados 2024とInDesign 2023)して、常に同じ環境で運用

  • 「サポートされていないファイルバージョンを処理する」でやるしかない

バージョンを管理して運用するのが正しいような気はするのですが。

翻訳の品質とは関係ないInDesignのバージョンに縛られるのはツライので、実質的には「サポートされていないファイルバージョンを処理する」でやるしかないような気がします。
メタ情報を直接編集してもOKとさえRWSのドキュメントに書かれているので、きっと、たぶん翻訳には影響ないだろうとお祈りするしかありません。

バージョンの縛りは深刻

あくまでも現状だけのお話しとなりますが……。
おそらく、2024年10月頃にIndesign 2025がリリースされ、InDesignは2025と2024だけがインストールできる状態になります。

このままTradosがバージョンアップしなければ、はじめてInDesignを使うという環境(2025か2024しかインストールできない)で作られたidmlはTradosで取り込めないという事態になりかねません。

請負側は環境を選べない

DTPを専業にしていれば、これまでの制作環境は残していると思うのですが。翻訳を専業にしている会社に、それを望むのは酷です。

しかし、翻訳するデータの状態は請負側では選びようがありません。
クライアントから「InDesignのデータを翻訳」と言われて、受け取ったデータがInDesign 2024のネイティブデータ。
バージョンを2023に落としてもらいたくても、クライアントがDTPとは無縁の販売会社や営業マンということは十分にあり得ます。

たぶん、こうなってしまったら「サポートされていないファイルバージョンを処理する」をするしかないです。
こういうバージョンにまつわる複雑な状況や、「サポートされていない」という怪しい文言がついていることについて、できればクライアントと深く認識を共有したいところです。できるのかなあ……。

InDesignから、PDFやRTFに変換してTradosに取り込むとか思い付きますが、翻訳したテキストを誰が、どうやって、いくらでDTPするのか……あんまり考えたくないかも。

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