見出し画像

石畳マガジン 春の訪れ

 早いもので寳泉氏と再会してから2年が過ぎようとしている。去年の今頃は、石畳の皆さんの頑張っている「完熟石畳栗」の商品展開に向けて関連撮影をさせていただいていた。
 四国・愛媛県、松山市の南側に位置する肱川流域大洲盆地の北側の端に横たわる「牛の峯」の麓付近に石畳地区はある。ここへ私が初めて訪れたのは約20年前。当時は「えひめ町並み博2004」と翌年採択を受けた「経済産業省平成17年度電源地域活性化先導モデル事業」において、愛媛県を始め大洲市、内子町、宇和町、伊方町などと連携をしてコンソーシアムを立ち上げ、「地域資源マネジメント事業」を展開していた時期だった。現在の石畳地区における地域づくりの大黒柱でもあり担い手集団でもある株式会社石畳つなぐプロジェクト代表取締役の寳泉武徳氏とはその頃に出会っていた。内子町の若き行政マンとして我々の展開していた事業の窓口を担っていただきお世話になっていたのだ。

大しだれ桜(樹齢約360年)

 再会は意外なところからだった。2020年の春にこの大しだれ桜の撮影をした後、石畳地域を撮影していくために案内していただけるような方がおられないかどうかを知り合いの方を通して打診していただいた。そこで紹介されたのが寳泉氏だったのだ。「覚えていますか?以前、事業でご一緒させていただいた寳泉です」と自己紹介をされたとき、かつての記憶が甦った。既に役場は早期退職し、現在の人口270人というこの石畳地域の未来を造っていくことを目的として「石畳栗」を主力商品とした生業を起ていくために「地域づくり法人」を起ち上げて7人で頑張っていると聞かされた。

背山臨水 石畳

 私は世に言うできた人間ではない。性格的にも丸くて人望がある組織のリーダー向き的な側面すらない。このことは、年とともに自己分析ができるようになってきた近年、理解できるようになってきた。自らの周辺において起こりうる色々な出来事や人間関係のトラブルなどにおいて、客観的な視点で物事に対処することができそうな気配を感じ始めている。ただ単に歳をとっただけという方が適切だとは思うが。
 それは写真においても共通していると思う。私は自然や風景に立ち向かい厳寒の中に身を置いて根気強く撮影して行くような凄腕の自然風景写真家ではない。確かに肱川あらしについては長年向き合ってきたし自らの写真家ライフの中心的位置づけではあるが、これは「地域情報発信素材」として活用していくための撮影でもあるのだ。

石畳の象徴的な「水車小屋}

  撮影させていただいた写真をご活用いただくことで地域の皆様方のお役に立ちたい。これが私が撮影活動を続けていくための軸である。そのためには「撮影した写真を画として表現する」ための試行錯誤を怠ってはならない。求められ、使っていただき、観た方々が行動を起こすきっかけとなるような撮影をすることができなければ意味がないことは言うまでもない。
 ご縁があって石畳地域の撮影をさせていただいている。寳泉氏を始めとして素晴らしい地域の皆さんや仲間の皆さんとの出会いは何物にも代えがたく財産となっている。それが写真にも生きていると思うのだ。

翁桜春のお手入れ①
翁桜春のお手入れ②
翁桜春のお手入れ③

 まもなく本格的な春を迎える。2月末に実施された地域を挙げての大しだれ桜の春のお手入れには、地元の「樹木医」も加わりたくさんの花を咲かせてくれるよう専門的な処方を施した。樹齢約360年、最近では500年くらい生きているのではないかと言われ始めているこの翁桜は、地域の人々のエネルギーでもあり地域がエネルギーでもある。このシンボルを中心に石畳の人々が繰り広げていく色々な取組や生活も、そしてこの地域の風景を後世に残していけるよう今年も撮影を続けていきたい。

2022年3月21日
街づくり写真家 河野達郎
※今年は石畳地域の2023年版カレンダー制作のための撮影をしています。時期が来ましたら詳細が発表できると思いますのでお楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?