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HARRYの作品リスト

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HARRYの作品を掲載しています。
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#ペルーシュブント

朱殷の狭間 ~鳴澤朱音~

作:ハリー 1 目の前が眩しいほど明るくなり、世界が暗転した。私はなにをしていたんだっけ……私という身体はあるのに感触がない。手を動かしているはずなのに動いていない。心と身体が別々になったような不思議な感覚だったけれど、徐々に手も、足も、腕も思い通りに動かせるようになっていった。身体が動くことに少しだけ安堵した後周囲を見渡す余裕ができた。物体が何もなく、私の周り、空間、すべてが赤色に染まっていた。 「……夢?」 私が知っている世界の中で一番可能性が高い予想を言葉に出してみる

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朱殷の狭間 ~仙寿朱莉~

作:ハリー 1 私は今、真っ赤な空間に閉じ込められている。可笑しくて夢かと疑う風景にも見飽きた。首謀者であろう、目の前で浮かんでいるチワワの見た目をした物体に食ってかかる。 「御託はいいから、さっさとここから出しなさいよ!」 見た目はどう見てもぬいぐるみのチワワ。ご丁寧にピンクの洋服まで着ているその物体は私を見下ろしたままため息をついた。 「はぁ、聞き分けの悪いご婦人ですわね。さっきから何度も説明していますでしょ?わたくしがここに閉じ込めたわけではなく、あなた自らここに来た

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朱殷の狭間 ~鶏冠新五 ~

作:ハリー 鶏冠新五  この街で最も空に近い場所に来てからどれくらいの時が経ったのだろうか。携帯も手帳も捨てた僕は身軽だ。必要ないものはすべて捨ててきた。しがらみから解放され少しだけ心が楽になったが、そんなのは一時しのぎに過ぎなかった。僕は最期まで持ってきた愛犬の写真を見つめる。この街は夜でもまぶしい。闇夜に浮かぶ月明りに照らされた愛犬がいる場所に僕も行くんだ。夜風が僕を後押ししてくれる。少しずつ、少しずつ。永遠に思えた屋上も、見下ろせば階下にネオンが見渡せる位置まで僕は

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琥珀に潜むif

作者:ハリー chapter1 なんか、想像してたより狭いですねここ。机と椅⼦し かないのは知ってましたけど。僕はどちらに座れ ば?……こっち側ですね。背もたれもないしひじ掛け もない。こんな椅⼦で⻑話するのは⾻が折れそうです ね。まぁ、お互い様か。で、なにから話せばいいんで すか。……ああ、名前からですか。屋坂部礼夢。お礼 の礼に夢と書いて“らむ”と読むんです。珍しい名前で しょ?今まで⼀度も同名の⼈に会ったことありません から。初対⾯の⼈でも⼀発で憶えてもらえるからこの

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SLG 竜胆のセグレート ~ルナリア~

作:ハリー  エピソード1郵便ポストを開け、封筒が入っているときに胸がざわつく感覚は、これで何度目だろうか。今の時代は書面ではなく、メールやSNSで企業とやり取りをする時代の中、私が面談をする会社は決まって古くからのしきたりであるかのような時代遅れの封筒で来ることが多い。誰もいないアパートの一室へカギを開けて入り、電気をつけ、カバンを置き、手洗いうがいをした後、手を拭き、ペーパーナイフで封を開け、中に入っている紙面を取り出し、文字を目で追う。 「またダメか……はぁ……」 た

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オレンジ空の向こう側

作:ハリー mission1 偵察  こんにちは、おはよう、それとも、こんばんはでしょうか……?ようこそ、ペルーシュブントの世界へ…… この世界には⼤きく分けて7つの物語があります。出てくるのは7体のぬいぐるみとその仲間たち。今⽇はそのなかのひとつ、⼈間が住む家を転々と移動しながら、ある任務をこなすペルーシュ達の物語をのぞいてみましょう… おや、あなたもこの物語に興味がおありで?ならばいっしょに⾏きましょうか。わたしの名前は地の⽂。ふふふ、地の⽂が意思を持って話しているのが

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