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石垣島で食べたジャージャー麵

「ぬって焼いたらカレーパン」がなくなってしまったのでカルディへと向かった。今は入り口で配られるコーヒーの試飲が無いのが少し寂しいが仕方ない。

店内の奥に進む。品数が多く、商品の位置も頻繁に変わるのでいつも同じ場所にあるとは限らない。しかし、店員さんに場所は訊かない。自分で見つけ出すという謎の達成感を味わうために。

数分探してようやく見つけた、ぬるカレーパンの場所を。しかし売り切れだった。まぁなんとなく分かっていたのですぐあきらめた。いや、もしかしたらという思いがあったので、店員さんに在庫を訊くと食い気味に「無いです」と言われてしまった。

ぬるカレーパンはなかったが、その隣においてあった「コーヒーホイップクリーム」が美味しそうな気配がしたので手に取った。あと、お惣菜系として「たべるラー油 明太子」というのも買ってみた。これは楽しみだ。

「たべるラー油」この文字をみて思い出したことがある。およそ20年前に、石垣島で出会ったご夫婦のこと。

1999年後半に石垣に渡り、ガソリンスタンドで働き始めた。しばらく経ってからのこと。あるとき四駆に乗ったご夫婦が来店した。接客していて、話し方から、島の人ではないような感じがしたので。移住してきた人なのかなと思った。

ご夫婦ともやさしく気さくな方で、たまに雑談などをしたりした。

あるときご主人が、今度お店開くからよかったらおいでよ。と言ってくれたので、休みの日に伺うことにした。自転車ですーっと向かい、お店に入ると香辛料の香りがした。エスニック風とでもいうのだろうか。当時はまだ19か20ぐらいだったので、お店の種類というかジャンルのようなものが全くわかっていなかった。(今でもわからない)

ご主人が歓迎してくれ、今はジャージャー麵しかないけどいいかと訊いてきたので。ジャージャー麵を食べたことはなかったが、それで大丈夫ですと伝えた。

カウンター席に座る。出てきたジャージャー麵が、なかなかに辛かった。けど美味しかった。もうずいぶん前なので詳細は覚えていないが、自分の中でジャージャー麵は「辛いけど美味いもの」という位置づけになった。

食後、ご主人との会話で衝撃の事実を聞いた。

ご主人「お兄さんはどこから来たんですか?」
俺「自分は三重県から来ました」
ご主人「へぇー、そうなんですか。ぼくモンゴル」
俺「えっ!?モンゴル?」
ご主人「そう、モンゴルなの」
俺「え、す、すごいですね」

一体なにがすごいのか自分でも分からないが、どう返答していいのか分からかったのでそう言ってしまった。

その帰り道、じんわりと自分を責めていたことを覚えている。なぜもっとイイ感じに言葉を返せなかったのか。ぼくモンゴル。まるで、ぼくドラえもん的な感じで来たので、不意打ちをくらってうろたえてしまった。次はもっとイイ感じでやり取りして見せる。と、なぞの決意をしながら自転車を押してアパートに帰った。

そもそも、なぜそんなに驚いたのかというと。ご主人のしゃべり方が完璧な日本語だったので、てっきり日本人だとばかり思っていたからなのだ。

そういえば、ガソリンスタンドで会員カードを見たとき、変わった苗字だなとは思っていたが、そのときはあまり気にも留めなかった。


その後も何度か自分の働くガソリンスタンドに来てくれて。こちらも、お店のチラシが出来たらください。スタンドの見える場所に置きますので。などと言ったりした。


およそ3年ほど石垣で暮らし、地元の三重に帰って数年後。本屋でブラブラしていると、「ペンギン食堂」という文字が見えて。気になったので手に取り、ページを開いて驚いた。そこに写真で載っていたのが、あのときのご夫婦だった。ジャージャー麵のあのご夫婦が、本を出していたのだ。

それも、「たべるラー油」を作った人。として有名になっていた。俺は驚いた。それと同時に、あのときの謎の悔しさも思い出した。

そんないきさつもあり、今日「たべるラー油」という文字を見て懐かしくなった次第です。

検索してみると「ペンギン食堂オンラインショップ」なるものがあったので今度お取り寄せしてみようと思う。



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