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『悲しみのイレーヌ』 ピエール・ルメートル

大ベストセラー『その女アレックス』の前日譚。

フランスの刑事、カミーユの元に、部下のルイから連絡が入る。

通報を受けて自分が駆けつけた事件現場の様子が、異常である、と言うのだ。
カミーユが現場に駆けつけると、そこは凄惨極まる殺人現場であった。

二人の娼婦の遺体が徹底的に痛めつけられ、さらに壁には血文字で『私は戻った』のサイン。

やがて事件を捜査していくと、それは、とある有名犯罪小説の殺害シーンの再現であることがわかり、更に、同じように別の犯罪小説の殺害シーンを再現した事件が、過去の未解決事件の中にあることも判明する……

文春文庫で読みました。

現在、フランス本国で四作発表されているカミーユ刑事シリーズの第一弾であり、作者の方ピエール・ルメートルの作家デビュー作でもあります。

『その女アレックス』の感想でも書いた通り、フランスではこれが第一作なのですが、日本で翻訳された時は、第二作である『その女アレックス』の方が先に輸入されました。

で、これはシリーズ作品であるので、『その女アレックス』の時に明かされている衝撃的な事実の殆どは、今作で初めて書かれることとなるわけです。

で、俺は『アレックス』を先に読み、その次に『イレーヌ』を、読んだ訳ですが、読む前に思った「これは恐らく執筆順に読んだ方が良いんだろうな」という思いは、覆されることはありませんでした。

まだ未読の皆さんに言っておきたいですが、はっきり言って、絶対に『イレーヌ』から読んだ方が良いです!

理由はネタバレに大きく関わるので書きませんが、主人公であるカミーユに対する、とある秘密を大きく左右する作者からの、とある仕掛けが『イレーヌ』には巧みに描かれているからであり、それは『アレックス』を先に読んでしまうと、あらかじめ読者にバレてしまい、驚きが半減してしまうから、とだけ言っておきます。

この作者は『アレックス』の時もそうでしたが、第一部、第二部、というような章立てを特徴としており、その境目で驚くようなどんでん返しを用意しているのですが、『イレーヌ』でのそれは、日本の某有名推理小説作家が得意とするとある手法を思い出しました。

その作家先生がどなたなのかは、ネタバレになるので書けません。
それくらい、その手法が代名詞になっているくらいの有名作家であることだけ、記しておきます。
読んだらなんのことかはわかると思います。

とにかく、読んでくださいとしか言えない傑作でした。

何書いてもネタバレになる!

書けるとしたら、残酷で凄惨極まりない殺人シーンの描写はこれでもか、言うくらい沢山ありますが、『アレックス』のように現在進行形で書かれることはなく、刑事たちが現場に踏み込んだり過去の捜査資料を見たりするような、もうすでに起こった後、の風景で描かれるため、今まさに殺害される人物の心情を想像して気分悪くなるようなことだけはないよ、という点が、グロいの苦手な人へのセールスポイントになれば良いなあ。

#雑記 #小説レビュー

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