見出し画像

ハリウッドザコシショウの話

今年のR-1グランプリで、ハリウッドザコシショウが優勝した。

ハリウッドザコシショウすごかった。
みんながマラソンで競ってるところにジェットエンジン積んだトラクターでアスファルト削りながら突っ込んでそのまま過ぎ去っていった感じ。

小島よしおもすごく頑張ってたんだけど、ホンモノの強心臓の前では霞んで見えてしまった……

観終わった後、ジェットコースター降りた後くらい全身虚脱してた。

俺がハリウッドザコシショウに初めて出会ったのは、大学の頃、大阪のネタ番組で、G★MENSというコンビを見たときだった。

そのときG★MENSがテレビでやってたネタは、武田鉄矢髪かきあげすぎて爆発コント、というものだった。

内容は、武田鉄矢が髪をかきあげすぎて爆発する、というものだった。

驚愕した。

だって人は、髪をいくらかきあげすぎたところで、爆発はしない。
でも、彼らのコントでは、髪をかきあげすぎると、人は爆発するのだった。

これは新たな発見であり、世界の視野が広がる瞬間であった。

過剰なことに過剰な結果を重ねると、大抵は、やりすぎだ、と、引いてしまう。

だけれどG★MENSのそのネタを見た俺は、引くどころか、感動しながら爆笑していたのだ。

過剰なものに過剰なものを掛け合わせると、スーパー過剰なものができる!

そしてそれは、誰も見たことがないものになる。

例えるならば、客がほとんど来なくなってしまった地方の秘宝館の様相。

当時、話題になっていたタランティーノの『パルプフィクション』、高橋源一郎、の過剰さと、ごっこ遊び、をやりきることで小学生時に誰もが味わっていた普遍性の笑いを独自に突き詰めていたバッファロー吾郎の尊敬すべきくだらなさ、という、その価値観はバッチリ俺の中で融合し、デス電所という劇団で表現するイメージに多大な影響を与えた。

そう。当時、俺に与えた芸術的影響ははっきり言って、タランティーノ、高橋源一郎、バッファロー吾郎、そしてG★MENSに寄って自信となり、他人の評価なんか知るか、というふてぶてしさを伴い確立されたのだ。

もちろんそれだけでなく、当時のお笑い界は特に、他人の評価なんか知るか、という勢力が強く、多大に影響を受けております。
リットン調査団はもとより、象さんのポット、モストデンジャラスコンビ、スミス夫人、げんしじん、フォークダンスDE成子坂、などなど。

他人がつまんねえ、と評価しても、「これを面白いと思わねえお前がつまんねえ」、というような姿勢だ。

そしてそれは表現者として全く正しい。

というか、その姿勢を崩すなら、その時点でその人は表現者ではなくなり、他者に寄り添う、大多数の中の一人、となってしまうからだ。

たとえそれが仕事だとしても、他者に寄り添うことがお金になることだとしても、どこか一つでもいいから、ここだけは譲れない、というものを持っていなければ、自分がわざわざ辛い世界で戦っている意味がなくなる。

どこも譲りますよー、って姿勢に変えた時点で、もうそれは表現者ではなく、ただの金拾いだ。

「自分は金拾いだけど、他者の表現に我慢できないことは言います」なんて姿勢、俺にはとてもじゃないけど出来ない。

金拾いは金拾いである内は、視線を地面から上げてはならない、と、戒めている。

そういう生き方をしなければ、他者の表現に文句も言えないのだ。

文句言うからには、
「文句言われても腹立たない。何故なら自分は、誰にいくら文句悪口言われたって、自分だけは最高と信じている、譲れない大事なことは、持ってるからね」
と、そういう姿勢をとることが大事。

それが、ザコシショウのネタには全て正しく表現されていた。

フリップめくる度に、いちいちテンガロンハットを被り直すとか、客に媚びてるようで一切媚びていない、「でさあね」というセリフ、「コス! コス! コス! 」という、「(ぶっ)殺す! 」を勢いよく叫ぶブリッジなどが、それらをきちんと表している。

一切媚びずに、結果を出した。

でも、誰にも相手にされない媚びず、ではない。

キチンと時事ネタや観客にツッコミを委ねる高度テクニック(裸で登場して「肌寒い」、一回目の登場では「酔ってない」、と言い、二回目では「酔ってる」、と宣言するなど)をしっかりと織り交ぜているのだ。

これは、しっかりと場数を踏んでいるが故の面白である。

テレビに出るばかりが経験ではない。

自分が全責任を負えるような舞台をキチンと出てこその、強みだ。

ザコシショウが圧倒的大差で優勝するのは、当たり前だったのだ。

キングオブコントで、バッファロー吾郎が優勝した時ととてもよく似ている。

だって、あんなネタ、他の誰もできないし、他の誰かがもしやったとしても、あんなに説得力はないだろう。

だからこそ、誰も見たことないネタ(あらびき団でやっていたが、当時はまだ完成されていなかったので)を最高のタイミングでぶちかませたのだ。

改めてザコシショウ、おめでとうございます!

今後はこのTシャツ着てても、なんですかそれ、って言われないようになるのでしょう。

#雑記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?