ネットで見つけた可愛い子を探した話
以前、とあるサイトで、可愛い女の子の画像を貼ってく、みたいな企画があり、そこにとある漫画の一ページだけがアップされていて、漫画のタイトルも作者の名前も、情報が何も書いていなく、それを見つけた俺はマジかよ、と大層困ってしまった。
と、いうのも、その女の子がどストライクに好みだったからだ。
俺はその画像を即座に保存したは良いが、そこからどうしていいかとんとわからない。
なにしろ日本には漫画は星の数ほどあるのだ。
その中からこの漫画を見付け出すことなど不可能に近いのではないか?
そもそも外国の漫画だったらどうする。
外国のどなたか描いた漫画に、誰かが日本語の台詞に翻訳して、差し替えたものかもしれないではないか。
そもそも本当にこれは漫画であるのか?
何処かの誰かが、一ページだけ漫画みたいにしてみた、イラスト作品である可能性も大いにある。
果たしてそれはどんな画像かと言いますと、本当は現物の画像を掲載してしまえば手っ取り早いのだけれど、しません。
夜の公園のベンチに黒髪のおかっぱ頭、目つきが悪い細身の女の子が飴をくわえて座っている。
画面の外には男性がいるようで、彼と話をしている。
男性「なんにせよこんなかわいい子と遊べるのは嬉しいね」
女の子「そりゃどーも」
と、まあ、こんな一枚なわけです。
すごいドキドキする。
この後どうなってしまうのか?
エロい展開になるのか怖い展開になるのか、それともギャグ漫画なのか?
俺は黒髪おかっぱ細身で目つきの悪い女の子が大好きで、自分の書いた『キルぐみ』というラノベにも登場させたことがある。
竜胆凛(りんどうりん)という名前で、メインヒロインよりも注ぐ愛情が深すぎて、竜胆の描写をやけに増やしてしまい担当さんに首を傾げられたこともある程だ。
そしてもう一つ重要なのが、この漫画の女の子も、竜胆凛も、制服に黒のハイソックスを履いているということ。
黒髪おかっぱ頭目つき悪細身制服黒ハイソックス。
これらが揃ったら俺の中では役満の完成なのです。
皆さんにもそういうことあるでしょう?
餃子ラーメン半チャーハン生ビール、みたいな。あれですよ。一緒。
で、果たしてこの漫画の詳細はどうすればわかるのか?
どうしてもこの漫画を手に入れたい俺は、即座に画像検索にかけた。
ヒットは一件のみ。
言うまでもなく、俺がこの画像を見つけたサイトが表示されたのみ。
もっと情報くれよ!
俺の知らない情報を教えてくれないと検索かけた意味ないよ!
探索二秒でどん詰まりになってしまった俺は、ツイッターに画像を載せて、「誰かこの漫画の正体知らないですか?」と呼びかけてみようかとも考えたが、思いとどまった。
誰からの反応もないことが容易に予想出来たからである。
危ないところだった。
日頃から、俺の呟きなんて誰も見てない、と自分に言い聞かせているくせに、こんな時だけ、でも本当は誰か見てくれているはず! と思うなんてあさましいことだ。
俺の呟きなんて誰も見てない、という思いの奥にある、でも本当は沢山の人が見てくれているはず、という本心というか願望が、なんとか今日まで呟き続けていられる精神的支柱になっているのに、フォロワーの皆さんに呼びかけたが最後、誰からの反応もなかったら、本当に呟きを誰も見ていなかったことが立証されてしまうではないか。
そうなったらいよいよ立ち直れんぞ。
毒ガスの出る機械と一緒に箱に閉じ込められた猫と同じで、実際に確認しない限りは、皆さんは俺の呟きをキチンと見ていてくれているのだ。
そうして俺は、どん詰まりの壁の前で立ち尽くすように、その漫画の詳細を知ることを諦めたのだ。
知らない限り、この漫画は無限の可能性を持っているではないか。
エロい展開にも怖い展開にもアクションにもコメディーにもナンセンスにもなり得るのだ。
そういうことで良いではないか。
と、思って一年半が過ぎて、本日。
そういえばあの漫画、本当になんだったんだろう?
と、思い出した。
エロい漫画だったら良いな、エロい漫画であるべきだ、と考えながら、即座にiPhone用の画像検索アプリをダウンロードし、ドキドキしながら検索してみたのであった。
一年半前と違い、今度は結果が増えていた。
そして、探していた画像の正体がわかった。
結論から言うと、日本の漫画でした。
なんと、漫画の作者さんが自らのホームページで漫画の画像を掲載していたのだ。
それは同人誌であり、通販もしているよ、というお知らせでもあった。
更に、その女の子は、女装した少年であった。
その上、バキバキに18禁の同人誌でござった。
男の娘でガチガチのエロ本だったか……。
勿論一向に構わないですとも!
あと、やはり何でも正体を知ろうとせずにおいておくのも、浪漫があって良いと思うよ。
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