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紙芝居「このよのはて」

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ある日、お城の王様が、大臣にむかってたずねました。
「わが国のとなりにはとなりの国、となりの国のとなりにはそのまたとなりの国、となりの国のとなりのそのまたとなりの国のとなりには、となりのとなりのとなりのとなりの国、では、いったいそのまたずうっとむこうには何があるか、知っておるか大臣」
「はい。この世のはてがあるのだと思います」と大臣は答えました。
「ホホー。この世のはてか。では、その この世のはてとやらには何があるのじゃ」
「アー、それはその…この世のはてまでいった者がおりませんので、よくわかりませんが…」
「そうか。誰もいったことがないからわからないのじゃな」
「はい」
「それでは大臣。今からいってこの世のはてをみてまいれ」
「ハッ、ハハー」

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大臣は、お城をでて、自分のお屋敷にかえりました。それからすぐに家来たちを集めて、
「王様のいいつけで、この世のはてをみてくることになった。わしはもう年をとって遠くまでいくのは無理じゃ。誰かかわりにいってくれる者はおらんか」
と言いました。
大臣は、自分のかわりに家来にいってもらおうと思ったのです。けれども、この世のはてがどこにあって、そこには何があるのか、誰にもぜんぜんわかりません。ひょっとしたら途中で死んでしまうかもしれないでしょう。そう思うと怖くなって、家来たちはみんな下をむいてだまってしまいました。
「ウーン。誰もいってくれる者はおらんようじゃな…」

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しかたがないので、大臣は鳥かごのなかの九官鳥にむかってこう言いました。
「王様のいいつけじゃ。どんどん空を飛んでいって、いけるところまでいって、何があるのかみてきてほしい。もしうまくいったら、わしの家来にしてやろう」
「おまかせキュー」
九官鳥は家来になれるのがうれしくて大喜び。キューキュー言いながら空にむかって飛んでいきました。

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次に大臣は犬小屋の犬にむかってこう言いました。
「王様のいいつけじゃ。どんどん地面を走っていって、いけるところまでいって、何があるのかみてきてほしい。もしうまくいったら、わしの家来にしてやろう」
「おまかせワンワン」
犬は家来になれるのがうれしくて大喜び。ワンワンほえながら地面を走っていきました。

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その次に大臣は池からコイを出すと、川に連れていってこう言いました。
「王様のいいつけじゃ。どんどん川を泳いでいって、いけるところまでいって、何があるのかみてきてほしい。もしうまくいったら、わしの家来にしてやろう」
「おまかせコイコイ」
コイは家来になれるのがうれしくて大喜び。口をパクパクさせながら川を泳いでいきました。

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最後に大臣は庭からミミズを掘り出してこう言いました。
「王様のいいつけじゃ。どんどん土の中をもぐっていって、いけるところまでいって、何があるのかみてきてほしい。もしうまくいったら、わしの家来にしてやろう」
「おまかせニョロ」
ミミズは家来になれるのがうれしくて大喜び。体をニョロニョロ動かしながら土の中へもぐっていきました。

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九官鳥は「いけるところまでいくんだキュー。そしたら家来になれるんだキュー」といいながら、どんどん空を飛んでいきました。
けれどもどんどん飛び続けているうちにおなかがへってきて、とうとう飛べなくなりました。
「もうこれ以上は飛べないキュー」
九官鳥が降りたところはイチゴ畑でした。

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犬は「いけるところまでいくんだワン。そしたら家来になれるんだワン」といいながら、どんどん地面を走っていきました。
けれどもどんどん走り続けたその先にはイバラの森があって、とうとうその先へはいけなくなりました。
「もうこれ以上は走れないワン」
犬がイバラの間から遠くをのぞくと、そこにはたくさんの雪をかぶった山がみえました。

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コイは「いけるところまでいくんだコイコイ。そしたら家来になれるんだコイコイ」といいながら、どんどん川を泳いでいきました。
けれどもどんどん泳いでいるうちにだんだん塩からくなってきました。海が近くなってきたからです。コイは塩からい水が大嫌いだったので、その先へはいけなくなりました。
「もうこれ以上は泳げないコイコイ」
コイが水の中から顔をだして遠くを見ると、海にたくさんの船が浮かんでいるのがみえました。

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ミミズは「いけるところまでいくんだニョロ。そしたら家来になれるんだニョロ」といいながら、どんどん土の中を進んでいきました。
けれどもどんどん進んでいるうちにひょっこり土の中から顔をだしてしまいました。そこはお寺の庭先で、小坊主さんが熊手で掃除の真っ最中。ミミズに気づかずガリガリ土の上の枯れ葉を集めていました。
「ニョロニョロニョロ。怖いニョロ」
ミミズはあわてて顔をひっこめました。

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しばらくして、大臣のお屋敷に九官鳥と犬とミミズが帰ってきました。コイは川でウロウロしていたところを拾われて、なんとかお屋敷に戻ってきました。

大臣はさっそくみんなの話を聞きました。
「いけるところまでいったら何があったか教えてもらおう」
九官鳥がいいました。
「飛べるところまで飛んだらイチゴだらけだったキュー」
犬がいいました。
「走れるところまで走ったら行き止まりになって、その先には白くて三角のかたまりがたくさん並んでたワン」
コイがいいました。
「泳げるところまで泳いだらとうとう泳げなくなって、その向こうに大きなお皿がたくさん浮かんでいるのがみえたコイコイ」
最後にミミズがいいました。
「怖くて帰ってきたニョロ。大きなフォークで刺されそうになったニョロ」

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大臣は九官鳥と犬とコイとミミズの話を聞くと、大急ぎでお城に出かけていきました。
お城につくと、大臣は王様にむかって話をはじめました。
「王様、この世のはてがわかりました」
「ホー。この世のはてには何があったのじゃ」

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「はい、王様。まず一番上にはイチゴがたくさんありまして…」
「フムフム、それで?」

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「その下には三角のかたまりが並んでおります」
「ホホゥ、なるほど」

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「そのまた下には大きなお皿」
「ホー、ホー、ホー」

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「そして最後に大きなフォークがついております」
「なななんと! ひょっとして、それはもしかして、大きなイチゴのショートケーキじゃな! この世のはてには大きなイチゴのショートケーキが並んでおるのじゃな!」
「ハッ、ハイ…。たぶん、おっしゃるとおりでございます…」
「よし。では大臣。さっそくそのイチゴのショートケーキをとってまいれ」
「エッ、エエ~ッ」

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こうして、大臣は、王様の言いつけでこの世のはてにあるという大きなイチゴのショートケーキをとりにいくことになりました。
お供は家来にした九官鳥と犬とコイとミミズ。

大臣は大きなイチゴのショートケーキをみつけられるかな?
この冒険の続きはみんなで考えてくださいね。

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