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常識外で成功した「獺祭」


「職人は、弟子に自分の技を教えず、技を見せて盗ませる」
この手法は職人の世界では、今でも生き続けているのかもしれません。

しかしそのような世界観とは真逆の方法を貫いている酒蔵があります。
山口県岩国市にある旭酒造です。あの「獺祭」をつくっている酒造会社といえば、酒好きの方にはお馴染みかもしれません。

獺祭は、これまでの伝統的な酒造りの手法を覆したお酒として知られています。なにがこれまでと違うのか? 一言でいうと、「杜氏がいない」ことです。

杜氏とは、酒造りを行う職人の最高責任者です。酒造りに最も適した冬になると蔵元には、杜氏を中心にした職人が集まり酒を仕込むのです。蔵元は杜氏と契約をして酒造りを営んでいるわけです。そして、酒造りは杜氏の経験と勘にすべてがかかっているのです。

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ところが、旭酒造では、杜氏の代わりに、酒造りの経験の乏しい数名の若手社員により獺祭が造り出されました。何故、素人の彼らが獺祭を造ることができたのでしょうか?

それは、酒造りの各プロセスで、さまざまな情報をデータ化したからです。

例えば、温度管理が重要な酒造りは、冬場に作業を行うのが伝統とされています。一方、獺祭の仕込みを行う発酵室は、365日24時間、5℃が保たれています。ですから1年中酒造りができるのです。

このやり方は「冬の季節に仕込みをするのが美味しい酒」という常識から逸脱しています。けれども、旭酒造では、このやり方こそ美味しい酒が届けられると考えているのです。

酒の品質は、気象条件によって微妙に変化します。暖冬のときもあれば、厳しい寒さのときもあります。冬にしか仕込むチャンスがなければ、それらの環境で酒の味も変わってしまいます。

一方、365日酒造りをしていたらどうでしょう。たとえ前の仕込みでうまくいかなくても、それを反省材料に次の仕込みに活かすことができます。つまりPDCAを1年に何回も繰り返すことができるのです。

何度も繰り返しているうちにデータ量はたまります。安定して美味しいお酒を造るための情報が蓄積されるわけです。これによって、職人の経験と勘を凌駕するほどの美味しいお酒造りに成功したのです。

伝統や常識に縛られてしまうと、新しい発想が出づらくなります。ときには常識外の発想や行動がイノベーションを起こすのです。

あなたの会社では、古い慣習や常識に縛られていませんか? 一度その常識を捨ててみたら新しい世界が生まれるかもしれません。

参考書籍 ↓ ↓ ↓




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