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白血病の薬がALSにも効くかもしれない/お薬説明書001

ボスチニブは慢性骨髄性白血病を治すための分子標的薬として、ワイスが創薬、のちにファイザーによって開発されました。
慢性骨髄性白血病とは、緩やかに進行する血液と骨髄の疾患です。

発症する原因はBcr-Abl遺伝子とされています。
23対46本のヒト染色体から9番のABL遺伝子と、22番目のBCR遺伝子が途中で切断され、断片が相互転座という互いが結合して、Bcl-Abl遺伝子が形成されます。別名、フィラデルフィア染色体とも言われています。
その遺伝子から合成されたチロシンキナーゼ(Bcr-Ablタンパク質)が、エネルギーとなるATPとチロシンが結合すると、造血幹細胞から感染や病気と闘う顆粒球型の白血球を増やすシグナルを発して、異常することでがん化し、成熟された白血球や赤血球、血小板が著しく減少することで発症します。

このボスチニブは、Bcr-Ablタンパク質のATP部に結合し、白血球を形成するシグナル伝達を阻害します。

最近、ニュースになった京都大学のiPS細胞研究所などの共同研究により、筋萎縮性側索硬化症ALSにも有効と判明し、iPS細胞研究から実際に人へ投薬する第2相治験が開始されます。

研究段階では、まず、SOD1遺伝子が変異した家族性筋萎縮性側索硬化症 ALSの患者さんから作製されたiPS細胞に、3種の転写因子を加えて運動ニューロンに分化させ、同様に作製した健康な人の運動ニューロンを比較すると、異常に折りたたまれたタンパク質が蓄積し、細胞死に至りやすいことが判明しました。

そこで、既存薬を含む約1400個を薬剤スクリーニングを行うと、ボスチニブには細胞内に存在する古くなったタンパク質を分解するオートファゴゾームという細胞小器官の動きを促し、異常に折りたたまれたタンパク質の量が軽減されました。

さらに、TDP43 遺伝子変異やC9orf72リピート伸長変異による別種の家族性ALSや一部の孤発性ALSにも効果を示しています。


多くのALS患者さんの元にも届くとええな。

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