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エダラボン 脳の壊死を守る日本製の薬がスイスで承認/お薬説明書 002

化学名: 5-methyl-2-phenyl-2,4-dihydro-3H-pyrazol-3-one

エダラボン(5-methyl-2-phenyl-2,4-dihydro-3H-pyrazol-3-one)は脳梗塞などで脳細胞が壊死してしまうのを阻止、そして元の状態へと脳を保護するために開発された溶剤です。
田辺三菱製薬株式会社が、脳梗塞を発症してすぐの状態(急性期)に治療を目的として開発されました。

脳梗塞とは、脳の血管が何らかの原因で詰まってしまい、血流が途絶え、脳細胞が壊死してしまう疾患です。
原因は3種類あり、細い動脈に詰まる比較的軽症なラクナ梗塞、こぶのような動脈硬化で血管が細くなり、その箇所がつまってしまうことで発症するアテローム血栓性脳梗塞、血のかたまりの血栓が脳につまるのが心原性脳塞栓症です。
共通する症状は、血管が詰まった後、その先の脳細胞の血流が滞り、脳虚血となり、長時間続くと壊死してしまいます。
脳虚血になると、細胞外のグルタミン酸が増加し、膜タンパク質の受容体が感知すると、細胞内のカルシウムも増加し、その変化に応じて、細胞内酵素や物質も増減します。
酸素も通常よりも様々な物質と反応する、活性が高く、電子が不足している不安定な状態(フリーラジカル)となります。
点滴から血液へエラダボンを投薬すると、体内ではマイナスの電荷を持つアニオンとして存在し、酸素に電子を供与することで、加水分解ののちにOPB(2-oxo-3-( phenylhydrazono) -butanoic acid)という無害な化合物が生成されます。

このエラダボンは別の疾患 筋萎縮性側索硬化症(ALS)にも治療薬として承認されています。
2022年4月25日付けのニュースではスイスでも承認申請し、受理されました。
ALSは日本内で難病指定されている疾患で、手足・のどなど、主に抹消神経の運動神経(筋肉を動かす部位)に影響が出ます。
原因は完全に解明されておらず、根本的な治療法はありません。
親から子へ受け継がれる遺伝型と、突発的に発症する孤発型とで分けられます。
エラダボンには先ほど述べた遺伝型の、有害な活性酸素 スーパーオキシドを分解する酵素を設計するSOD1(Cu/Zn superoxide dismutase 1)遺伝子が変異してALSを発症する患者さんに効果を示しています。

日本では製品名はラジカット®として、2001年4月に厚生労働省から承認され、スイスではラジカヴァとして販売されています。


参考文献:

https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/124/3/124_3_99/_pdf


ニュース元はこちら。
https://m.jpubb.com/press/3096994/

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