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コロナ感染ルートは様々。SARS-CoV2 EタンパクとヒトBRD4の結合からってどんなルート?

新型コロナウイルスSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)は、大きな脅威をもたらし続けている。
この病原体は重度の呼吸困難と肺炎を発症し、2022年1月時点で罹患率が3億500万人のパンデミックを引き起こしている。

コロナウイルスは、宿主に侵入後、ウイルスおよび宿主の細胞膜とが融合し、そして複製を含むウイルス蛋白とRNAが集合、アンセンブリしてウイルス粒子を形成する。 
一本鎖RNAゲノムでもあり、4つの構造タンパク質、スパイク(S)、エンベロープ(E)、ヌクレオカプシド(N)、および膜(M)をコードしている。
その中のEタンパク質は、75アミノ酸を含む最小タンパク質で、特徴は完全に解明されてないが、SARS-CoV2以外のEタンパク質では、ウイルスの生産、成熟、新進に重要な役割を果たすことが示されている。
さらにEタンパク質はウイルス毒性であると証明されており、Eタンパク質を欠いている組換えSARS-CoVを持つマウスは致命的な病気から保護されたと実証されている。

Sタンパク質が宿主に侵入する際は、ヒトACE2(アンジオテンシン変換酵素2)とSARS-CoV2 RBD(受容体結合ドメイン)が必要となると同様に、Eタンパク質もヒトタンパクと実際に結合しうるのかアフィニティ精製質量分析にて300以上のタンパクを探索し、相互作用実験を行った。
その結果、ブロモドメイン(BRD)および末端外ドメイン(ET)を含むBETファミリータンパク質BRD2とBRD4がヒットした。
特にBRD4は幅広く疾患と関わりがあり、薬理学的標的として、かなりの注目を集めている。
なぜならウイルス感染に対する免疫および炎症反応を仲介することが知られており、最近、COVID-19を介したサイトカインストームと心臓損傷を規制することが報告されている。

SARS-CoV-2はRNAウイルスにより、常に新しい変異体を形成しており、薬剤耐性は、潜在的で未曾有のパンデミックを引き起こす感染症と戦うためには継続的な検索を求められている。
ここでは、SARS-CoV-2のEタンパク質がヒト転写調節因子BRD4をハイジャックするメカニズムについて説明とともに、どういった阻害剤が存在するかを紹介する。

ウイルスに感染すると宿主酵素によって、リン酸化、ユビキチン化、メチル化、アセチル化などのウイルスタンパク質の翻訳後修飾(PTM)される。
ウイルス複製、宿主膜との融合、宿主防御における局在化に不可欠な役割を果たすことが示されている。
ヒト免疫不全ウイルスHIV-1タンパク質 に関するTat、インフルエンザAタンパク質NP、およびヒトサイトメガロウイルスのpUL26タンパク質などのアセチル化は、毒性の特性を保有し、ウイルスタンパク質の産生、およびウイルスの複製や組み立てに影響を与える。
SARS-CoV-2 Eも生体内でK53およびK63がヒトアセチルトランスフェラーゼp300によってアセチル化される。そしてヒトBRD4 のブロモドメイン(BD)1および2に結合する。さらにヒトETドメインにはEタンパク質の未変モチーフ(SFYVYSRVKNLNモチーフSARS-CoV-2 E55-66)に結合するのをNMRから観測された。

BDドメインとの結合を阻害する化合物は開発されており、JQ1やOTX015などで様々な発症の予防へと繋がっている。
先ほど述べたアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)遺伝子発現はBETタンパク質によって駆動される可能性があり、JQ1やOTX015などの阻害剤はSARS-CoV2感染を低下させると報告されている。
BETタンパクとEタンパクの結合をブロックにも有効なのか、ヒト肺気管支上皮細胞株Calu-3を用いて試験管内でSARS-CoV2感染させると、ACE2と同様に、低下を示した。

今回の論文結果により、SARS-CoV-2病因に寄与する分子メカニズムについての洞察を提供し、SARS-CoV-2感染を阻止するための新しい戦略に光を当てることだろう。

参考文献

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