小林賢太郎演劇作品「うるう」


YouTubeで期間限定公開だった小林賢太郎演劇作品「うるう」を見た

小林賢太郎が主催する「スタジオコンテナ」のXで告知がされていたことをきっかけに期間限定公開であることを知った
今年2024年は「うるう」の初演から4度目のうるう年だそうだ

私は先日、2006年と2007年に公演された「TAKE OFF〜ライト三兄弟〜」を見たことで他の作品も見たくなった
期間限定公開終了のギリギリのタイミングとなり駆け込みだった
上演された当時、私は見ていなかった
ソフト化もされているがこれまで見たことがなかった
私はラーメンズマニアでこれまでラーメンズの作品を何度も見ている
中学生の時にコント「高橋」を見て以降ラーメンズに取り憑かれてしまった
特に「現代片桐概論」と「日本語学校シリーズ」は何度も見ている

※YouTubeは期間終了、DVDは販売中

しかし小林賢太郎単独作品はほとんど見ていない
なぜ見てないんだろう
ふとそう思った
避けてきたのだろうか
意識してなかったのだろうか
もうどうでもいい
見たい
とにかく見たい
見たい、というより見なければならない衝動に駆られた

「うるう」を見たことで小林賢太郎の新たな一面を知られた
小林賢太郎がコントだけでなくラップにも通じる韻律の天才であることを思い知らされた
ラーメンズでは日常を切り取ったコントが中心だ
しかし「うるう」では童話のようなファンタジーに満ちた作品もあることを知った


うるうは小林賢太郎演じる「ヨイチ」とチェリスト徳澤青弦のチェロで構成された2時間弱の戯曲だ
必要最小限の舞台演出に小林賢太郎のパフォーマンスと徳澤青弦のチェロが重なる
森の奥に一人で住むヨイチは少年マジルと出会う
友達になりたいがために何度もヨイチを訪ねるマジル
マジルを拒否し一人になりたがるヨイチ
なぜここまでヨイチは一人でいることを選ぶのか

小林賢太郎のコントを見ると新たな視点が得られる
なぜか
それは小林賢太郎自身にも周辺の対しても関心が広がるからだ

ラーメンズ時代は小林賢太郎はサラリーマン、フリーターといった市井の役が多かった
大学教授、同窓会で出くわした旧友...様々なシチェーションを通して多くの役を演じてきた
しかし今回はヨイチという正体不明の人物だ
ラーメンズ時代にはなかった、顔にメイクまで施しいつもとは違う小林賢太郎である
一体どれほどの顔を持つ人なんだろうと思わされる
お笑い芸人の枠を超えてもはや役者である
少年マジルは舞台上には当時しない
小林賢太郎のパントマイムによりあたかもそこに存在するかのように見えている

そしてうるうというテーマ
うるう年という4年に1度の年
誰もがうるう年になれば話題にする
しかしなぜうるう年があるかは深くは知らない
「うるう」では舞台に天体を映し出しうるうが調整のためにあることを解説していた
なるほど、そうかと思わされる小ネタが幾つもある

本作で目を見張るのは畳み掛けるように繰り出せされる「足りない」の波だ
ヨイチはいつも孤独で「足りない」人生だった

いつも一つ足りない いつも一人余る 足りたり足りなかったりじゃない 足らない 足らないったらない 借りたいんじゃない 胃ももたれない 私のことも取るに足りない

韻を踏む
これだけのシンプルなことだがぐっと引き付けられる
足りないという言葉をこれでもかと形を変えて繰り返す

日本を代表するヒップホップグループKICK THE CAN CREWのMCであるKREVAと公私共に交流があることは小林賢太郎のファンなら誰もが知る話だ
日本語ラップにも造詣の深い小林賢太郎だが韻律一つでここまで奥深い世界を見せられるのかと驚嘆する

小林賢太郎はラーメンズ時代からラップを実験的に取り入れていた
※18:01からラップパート

そして2024年
小林賢太郎はKREVAと「新しいラップの教室」を手掛けている
小林賢太郎のラップの才能がここでも垣間見られる予定だ

小林賢太郎は一度キャンセルされてしまった人物だ
オリンピックのディレクター降板騒動は世間の人にマイナスな印象を与えてしまった
私はラーメンズファンとして非常に悲劇的な出来事として捉えている
もう小林賢太郎は見られない
小林賢太郎のファンであるとも言えない
しかし「うるう」で知らなかった新たな一面が見られ、非常に嬉しい
映像作品としていつまでも残り続ける
これまで楽しませてくれたように、これからの小林賢太郎も楽しみだ

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