見出し画像

KREVA Class 「新しいラップの教室」

KREVA Class

KREVAと小林賢太郎のコラボレーション、期待しないわけにはいかない
その組み合わせだけで興奮が止まらない
なぜなら、KREVAはKICK THE CAN CREWとしてもソロアーティストとして一貫して日本語ラップに専念してきた才能あふれるアーティストである
一方の小林賢太郎は片桐仁とのコントユニット「ラーメンズ」のコントの中で日本語の可能性を巧みに追求してきたクリエイター(芸人という括りもできるが、もはやクリエイターと呼ばれるべきだ)だからだ
この2人が一緒に何かを作り出すという事実だけで、その結果が面白くならないはずがない
実際に本当に面白かった
「興奮冷めやらぬ」という言い方があるが、今でもそうだ
5/31に恵比寿ガーデンプレイスでKREVA Class「新しいラップの教室」を観てきたのでレポートする

このコラボレーションの注目すべき点は単なるライブパフォーマンスではなく、「授業型エンターテイメント」という新しい試みである点だ
このアイデアは、単に観客を楽しませるだけでなく、何か新しく学ぶ機会を提供するという点で魅力的だ
そして、その授業をKREVAが演じてプロデュースするのが小林賢太郎である
その授業が面白くならないはずがない
KREVAと小林賢太郎は一般的なLIVEとは一線を画すエンターテイメントを生み出した

「新しいラップの教室」は4章から構成される音楽劇だ
KREVAとKICK THE KAN CREW時代からの交流となる熊井吾郎がサウンドエフェクトを担当、そして吉本興業所属のGABEZがパフォーマーとして加わる

0章 お届けもの

オープニングとなる0章「お届けもの」(正式なタイトルはアナウンスされていないので、便宜上こう呼びます)では、KREVAの登場シーンから物語は始まる
舞台上には、視覚的な要素として、小さな本棚が2つと鮮やかなオレンジのドア
壁には「新人クレバ」「LOOP END / LOOP START」「心臓」などKREVAの過去の作品が展示されている
舞台の上手にはDJとターンテーブルが設置
そして物語は、サンプラーを注文したはずなのに、間違ってタンブラーとナンプラーとガンプラが届くというユーモラスな芝居から始まる
同封された手紙には「invisible school 見えない学校」からの招待状が同封されていた
この「invisible school 見えない学校」は今後、舞台を読み解くキーワードとなる
さらに、窓を開ける仕草には、小林賢太郎の得意とするパントマイム技法が見られる
これは小林賢太郎作品を長年観てきた観客に深い印象を与えるワンシーンとなる

1時限目 ラップについてざっくり

KREVAが実際の授業に入る
GABEZが操作するキャラクター「バークレー」がKREVAの聞き役となる
ラップがかっこよく聞こえるのは「韻を踏んでいるから」という解説を皮切りに歌詞の分解が始まる
ここでもKREVAの得意とするラップが光る
KREVA「ストロングスタイル」には「内面 外見 両方成長するのは大変」という歌詞がある
これを母音に注目すると全て「a i e n」となり全部母音で韻を踏んでいる
KREVAの凄さは単に韻を踏んでいるだけでは無いということが分かる
「目的はあくまで楽しませることであり楽しむこと」
「韻を踏むことで言葉を楽しく感じる、これによって言葉は音楽になる」
音楽を聴いて心地よいと感じる理由が言語化された瞬間だった

コント① 日本ラップサービス

劇中劇のコントの最初の部分は「日本ラップサービス」というテーマで展開される(正式なアナウンスが出ていないので、便宜上このように呼びます)
このシーンでは、電気保安協会のような役割を演じるKREVAが、ある家庭を訪れ、その家庭の「ラップ指数」を調査する
KREVAは即興ラップを披露し、家庭のラップ指数を飛躍的に上げる
その中で息子の部屋に入る際に、「16 17 18 19行けるなら絶対行っといたほうがいいですよ」というフレーズを口ずさむ
このフレーズは、「アグレッシ部」の一部で、それを聴いた観客からは拍手が上がった
このシーンは、コントの中でも特に印象的な部分で、観客のラップへの興味と楽しみを高める効果があったといえる

2限目 ターンテーブル

サウンドエフェクト担当の熊井吾郎がDJとしてステージでの実演を行い、その実演がどのように進行するかをKREVAが詳細に解説
特に見逃せないのはGABEZのパントマイムパフォーマンス
音楽と一体化したGABEZの動きはパントマイムとして小林賢太郎の思想を反映するものだった
「通常の音楽を再生するだけでなくゆっくりにしていったり、逆にもっと速くしていったり」というKREVAの解説に合わせて、GABEZはランニングマンの動きを見せた
この動きは音楽のリズムと速度に合わせて変化し、観客に一体感を与えた

コント② 雨

劇中劇のコント2つ目は雨(ここも正式なアナウンスが無いので便宜的にこう呼びます)
記憶を喪った男(KREVA)が過去を取り戻そうとするコント
このコントでは、記憶を喪った男性(KREVA)が過去を取り戻そうと奮闘する
彼の行動と反応は、観客に深い感情的な共感を引き出す
このシーンでも、小林賢太郎の演出が光っている
独特な視点と演出手法は、物語をさらに引き立てる
映像とKREVAとGABEZしか登場人物はいないというシンプルな設定だが、その中で繰り広げられるドラマはKREVAの内省的な一面を垣間見られる

3限目 サンプラー

サンプラーとは、16個のボタンが配置された音を出力するマシンのことである
これらのボタンはそれぞれ異なる種類の音を生成し、ユーザーが自由に組み合わせることができる
KREVAがサンプラーに録音した声を直接聴いて、その声を再現する「ヒューマンサンプラー」の実演を行う
これは、録音した声を耳で確認し、その声を可能な限り正確に模倣するコントだ
16個のボタンには言葉が録音されている

1私
2の
3名前
4は
5クレバ
6です
7柿
8食え
9ば
10鐘
11が
12鳴る
13なり
14法隆寺
15by
16正岡子規

ボタンを押す順番を変え、「柿の名前はクレバです」という面白い状況が生まれる
これは、言葉の順序や構造がどのように意味を生むかを示す良い例になっている
これ、子供の頃に見たかったと思った
言葉遊びの楽しさと、新しい視点から物事を見る能力を養う機会になっていたはずだ
もし、子供の頃に見ていたら、確実に音楽に目覚めていたと思う
音楽は言葉と同様に、その構造とパターンが意味を生み出す芸術形式だ
そして、クリエイティビティとは何かという原体験になっていたはずだ
新しい視点から物事を見る能力、そしてそれを言葉や音楽などの形で表現する能力について考える機会になっていたはずだ

コント③ 夕焼け

劇中劇のコント3つ目は夕焼け(ここも正式なアナウンスが無いので便宜的にこう呼びます)
いまのKREVAが過去の自分に語りかけるというコント
このコントの中では、学生時代のKREVAが自分自身に向けて書いた、強い意志を感じさせるメッセージ『DJ兼ラッパーとしてHIP-HOP界に君臨してみせます、感謝』が映像に映し出される
その夢が現実になった現在、KREVAがどれほどの夢を叶えてきたかを感じさせる
学生時代から持っていた明確なビジョンを今もなお持ち続けている大人は、実際にどれほど存在するだろうか
KREVAが目指すべき道を見失わずに、自分自身の信じる道を突き進む勇気を持つことを示している

4限目 実践

「最後の課題、KREVAのLIVEを全力で楽しみなさい」というKREVAのMCから始まるLIVE
これはもうアガるしかない
5/31のセットリストは以下
M1 イッサイガッサイ
M2 アグレッシ部
M3 Expert

KREVAのメッセージは、Expertの"どこに向かうなんてのはあとで分かるから進め"という言葉に集約されている
これは自分自身がどんなエキスパートなるかは、その道を進んでみなければ分からないという意味を持っている

KREVAはさらにこうも言った
俺は小学校中学校高校大学と通ってきたけど音楽の学校にもラップの学校にも通ったことありません
それでも先人たちが生み出してきた文化を教科書に自分だけの目には見えない学校に通うことで俺はKREVAという科目のExpertになることが出来ました
KREVAの言葉を今でも思い返すと涙が出る
KREVAが自分自身の視点で自分のスキルを磨いてきたことを示している

終演後、KREVAは今回の舞台を総括した
「KOUJOUSHIN(KREVAの新しい事務所)一発目の仕事がこの舞台」
「(事務所を独立したのも)もっともっと可能性を拡げたいから」
「100%でキャッチしてくれる人がいなきゃ完成しない」

いつかKREVAのLIVEを見る時に全力で受け止められる自分でいたいと思っている

※ぴあLIVEストリーミングでは6/16まで配信中
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2421550

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?