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“やる気が下がる” 人事評価制度をたくさん見てきたのでまとめてみる

◆人事評価制度に正解はない


これを前職のコンサル会社で学びました。
会社によって正解が違います。
先日、目標管理制度のみで人事評価をやっているという会社に
出会いました。
地方で製造業、スポーツ業界のアイテムを作っています。
世界でもナンバーワンのシェアを持っていると聞きました。

この会社の経営者は社員の自発性をかなり重視していました。

「自己選択によって自発性を促すことが社風でもあるので、
それを重視した人事評価制度になっている」
と言われました。

どんな目標設定なのか?気になり聞いてみました。

役割や職種ごとに細かく目標がありました。
意地悪く、よくある問題を質問してみました。

「目標レベルの高い・低いの違いによっての
 不満は出てないんですか?」

「出てるけど、特にそんなに問題はない。
 ある程度納得感はあるとおもう。」

経営者が上手くいっているというのであれば
それ以上突っ込む必要は無いと感じました。

ただ、同様のやり方でうまくいかないと相談があり
人事評価制度改定を支援した経験もあります。

つくづく、会社によって正解が違うと感じました。

◆人事評価制度の満足度が低い理由は何なのか?

人事評価制度についてのいろんな会社が出している調査データを
見てみました。

Q:人事評価制度について満足をしていますか?


図1

図2

その他も何社のアンケートを見てみましたが、
満足度は2~3割程度になります。統計データではほとんど
同じ結果が出ています。
これなんかあるんじゃないか?と思い考えてみました。

いろんな会社を見てきて感じる仮説があります。

①2:6:2説
②モチベーション理論説(ハーズバーグ衛生理論)

2:6:2はご存知の方も多いですが、組織内の人の分類です。
これを見るとできる社員は評価が高いので満足になるが、普通の社員、
できない社員は不満をつける確率は高い。

この比率を見ると満足度は2~3割が限界ではないかと思ってしまいます。
結局、いい評価がされれば満足するし、悪い評価されれば、満足度は低いのではないかと思います。もちろん細かく見ると、様々な要因があるため、
一概にはそうとも言えないのは理解しています。

しかし、2割しか満足してないので、人事評価制度変えたいというのは、
統計データを見ると適切な判断なのか?迷うところです。

こちらはもっとそもそも論になります。
モチベーション理論説は、ハーズバーグの衛生理論を見ると人事評価制度の結果が全て衛生要因だとわかります。
給与や処遇などはハーズバーグは衛生要因であり、仕事に対してやる気をなくす要因だと言っています。

図1

ちなみに、この理論は臨床心理学の権威でもあるアメリカの学者フレデリック・ハーズバーグ氏が提唱した理論です。この理論では人間は
“仕事に満足感を感じる要因と不満足を感じる要因”があり、
全く別物であるとする考え方を提唱しています。(二要因性)
動機づけ要因はやる気を増大させる。
衛生要因はやる気をなくす要因としている。

この理論はよくできてます。 私はこれを知るまで不満を解消すると満足を
生むと思っていました。しかし、ハーズバーグ氏はこれを否定しています。
衛生要因は不満を解消しても満足を生まないと言っています。

よく考えると確かにその通りです。
給与はどこまで上がっても満足はしない。
ただし、不満はある程度解消できます。
 
そして、衛生要因は全てを解消しても満足ではなく、不満が減るだけです。
不満の代表格はどこまで行っても満足を生み出せないのです。

これらを踏まえて、現段階での人事評価制度ついて、満足度が低い理由は
その1:そもそも、満足する比率は決まっている
その2:そもそも、不満因子なので減らすことはできるがやる気アップ因子ではないので満足度は限定的である。
これが私の人事評価制度に対する考え方です。

 ◆やる気が下がる人事評価制度

色々と会社をまわって、現場の社員さんから話を聞き、やる気が下がる理由を聞いて整理したのが、以下の図になります。左側が不満、真ん中が問題点、右が原因になります。これから代表的なものを解説していきます。

図2

まずは、一番多かったのが、


「どうやって評価されているのかわからない」

でした。地方企業は創業系の会社が多く、まだまだこんな悩みがあります。
そして、問題点としては
「制度はあるが、運用されてない」会社が多くありました。
運用されてないのは
・評価項目が多い・評価項目の内容がわかりにくい・評価方法がない
 が多いです。

この中で「評価方法がない」について解説します。

これは「誰がどのように評価するか?を決める」ということです。
例えば、評価項目が「コミュニケーション」で評価内容が

「上司や関係者に対して、簡潔明瞭な表現で報告・連絡・相談することができる」と記載があります。

そして基準は「できている・どちらでもない・できてない」の3択。
このままだと評価誤差が起きやすくなります。

なぜならば、報告・連絡・相談を行うことができるか否かは
誰がいつどうやって評価するの?が曖昧だからです。

上司が評価するんだろうと思いますが、基準が曖昧であるので苦慮します。
「部下はできている」と言い張り、上司は「できてない」となります。
これではお互いの解釈に違いが出ます。
例えば、「100回中100回できている」という上司と「100回中50回」できればいいという部下が出てきます。
そして、部下から「どこを見てダメと言ってるんですか?」となります。
上司もうまく説明ができず、不満が出ます。

こうならないために、基準を明確にすることが重要ですが
全てを網羅することはできません。どうすべきでしょうか?

参考までに他社でやっていたのは「判定方法」を明確するという
ことでした。

完璧な判定方法は難しいですが、「誰がどのように判定するか?」
明文化してやることを記載することで被評価者に
「どのように判断したか?」を説明できます。

図3

次に、

「頑張っているのに評価されない」

という不満ですが、原因はいくつかあります。非常に特徴的だったのが、
経営者が最後に評価結果を”ひっくり返している”という事象が
発生しています。

このような場合において多くは、経営者が悪いわけではなく、制度の問題であると思っています。
具体的には経営者が評価する要素・項目が無いことが原因です。
よって、項目追加すれば、解決します。

それ以外だと戦略と人事評価項目が一致してないので、人事評価結果は高いが、戦略についての行動が疎かになっていて経営者から見ると
「何でこんなに評価が高いの?」と疑問を持ってしまうケースがあります。

以前、人材系の会社で人事評価制度の話を聞いた時に人事評価制度は
「個人売上・粗利」を中心とした評価項目となっていました。

一方で戦略はチーム営業と新規開拓となっていました。

この会社の社長は売上が低くても、新規開拓を頑張っている人を評価高くして、評価結果をひっくり返してました。
ただ、周りから見ると社長の好き嫌い人事だと言ってました。
こんなケースを目にします。この会社には戦略と人事評価制度の項目を
合わせるようにお伝えして解決しました。


最後に

「自己評価より低く評価され、その理由がわからない」

という不満があります。評価結果はこの4つに分かれます。
(部下評価は部下の自己評価)

図4

分類的に、一番下の「上司評価が低く、部下評価が高い」時に
一番苦戦します。

自己評価との差異を埋めるためのフィードバックをしなくてはいけません。ただ、お会いしてきた会社の上司は自分がそんな経験が少ないので適当に
終わらせてしまいます。ここを改善すると不満はかなり減ります。

今までフィードバックは5分で終わっていたが、1時間にしたら、関係が良好になったケースも聞きました。どれだけ時間をかけられるか?も
大事なようです。

さて、ここまで、色々と制度の話をさせてもらいました。
やる気を下げる要素は無数に存在します。
これを言ってはおしまいかもしれないが、
結局、評価者の人望が一番大事だとおもいます。

いくらいい制度にしても、
人望が無ければ上手くいきません。
やる気が下がる人事評価制度の本質は
“人望の無い評価者に評価されること”かもしれません。

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